何もなくて豊かな島。82歳の日本人オーナーに「本当の幸せ」を聞いてみた

「あれ、今、私って幸せなんだっけ?」

もし、都会のビルの狭間で自分自身を見失いそうになったら、ぜひとも訪れてほしい島がある。フィリピンのセブ島から小舟で約1時間のほどのところに浮かぶ「カオハガン島」だ。

何もなくて、豊かな島。

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食事は海の恵みからいただき、電気は17時から23時までのみ使える自家発電で、生活用水は雨水を使用。7〜8人家族の平均世帯月収が9,500円程度と世界最貧困レベルでありながら「何もなくて豊かな島」と呼ばれている。

島に生まれた子どもたちは、生きていく術のすべてをおよそ15歳までに体得するという。島の木々を使って自力で家を建てる方法、海に潜って魚を捕る方法、島で育てた豚や鶏の命をいただく方法…etc。

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そして驚くべきは、この島のオーナーは、82歳の日本人男性・崎山克彦さんであるということ。大手出版社を早期退職し、26年前に1,000万円で島を購入して以来「カオハガン・キルト」による島の収入源の創造や、医療・教育環境など、島のライフラインをいちから整えるべく尽力してきた。

何もないのに、なぜ、豊かな島と呼ばれるのか。その理由が知りたくて。英語留学のためセブ島を訪れていた私は、導かれるようにしてカオハガン島へと辿り着き、崎山さんにインタビューする機会を得ることができた。

26年前は
貨幣が存在しなかった。

島の母屋に行くと、カオハガン島のオーナー・崎山克彦さんが笑顔で出迎えてくださった。昭和10年生まれの、御年82歳!

さっそく、お話を伺うことに。

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ーー 崎山さんは、なぜ26年前にカオハガン島を購入されたのでしょう?

「26年前、島に住む友だちに会うため、初めてカオハガンを訪れた当時は、貨幣というものが存在せず、近隣の島と野菜や材木を物々交換していました。それなのにみんなが本当に幸せそうに暮らしていることに、深く惹かれたのがきっかけです」

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ーー 確かにこの島の人たちは笑顔が素敵ですよね。崎山さんは、当時は皆無だった島の教育や医療環境を整えるためにご尽力された、と。

「91年に移り住んでからは、とにかく最低限の環境を整えなくてはと奮起し、6年制の小学校や、高校や大学へ通うための奨学金制度を作ったりしましたね」

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「医療に関しても、病院のあるセブまでの旅費を島民たちは持っておらず、診断や処置を祈祷師の助言に頼っていたこともあり、約3分の1の子ども達が成人する前に亡くなっているような状況でした。

これはいかんと思いまして、病人が出ると我々がセブの病院まで一緒に行って費用をすべて負担する日々でしたね。今では貧しい地域向けの国民健康保健に入ることができ、奨学金で学んだ島民が運営するヘルスセンターも島にあります。重病の際にはセブの国立病院でほとんど無料で治療を受けられるようになっています」

ーー 島に新たな収入源も作られたそうですね?

「女房が日本でキルトの先生をしていましたので、『こういう物があるよ』と紹介したら、すごく気に入ってもらえて。今では100人以上の島民がカオハガン・キルトを縫い、そこで得た報酬が島の生活を大きく支えてくれています」

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ーー 移住されて4年目に崎山さんが島について書かれた書籍『何もなくて豊かな島』(新潮社)は、当時ベストセラーになりました。なぜ、カオハガン島は何もないのにみんな幸せそうなんでしょう?

「それについては、島民たちと色々話し合って達した結論があってね。島には太陽がサンサンと降り注ぎ、風はとても爽やか、生活用水は全部キレイな雨水を使っていますし、食べ物は手つかずの自然や海から、自分たちが食べるものだけいただき、みんなで分ける。だから島民たちはいつも自然へ深い感謝の念を抱いているのです。

日本人が何か欲しい物をお店で買っても、いちいち特に深い感謝はしないですよね? だって自分のお金で買ってるわけですから。でもカオハガン島では違う。これこそが、収入は少ないんだけど、島のみんながとっても幸せに暮らしてる秘密なんじゃないかな」

ーー 島民の自宅に訪問し、島の生活を体験できるスタディーツアーに参加できるそうですね?

「はい。日本の旅行会社の方に島での生活を話すと非常に面白がってくれて、7年前から大学生を対象としたスタディーツアーを開催するようになりました。もちろん大学生じゃなくても、希望する方は事前に予約を入れていただけば体験することができます」

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ーー どんな体験ができるのですか?

「島の子どもたちとアートで交流したり、家庭に入って家事や仕事を手伝ったり。夕方のパーティーではホストファミリーのみんなと豚の丸焼きを食べる。朝にはその豚の命をいただく瞬間を見る機会もあります。思わず目を反らす人も多いですが、日本では滅多に実感することのない“命のありがたさ”を、痛いほど感じることができる瞬間です。

日本とはまったく異なる環境に身を置くことで、「こうあらねばならない」と自分を縛っていた価値観から解放され、本当に人生を豊かにしてくれるものが何かなのかが見えくるでしょう」

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ーー スタディーツアーを受け入れる島民のみなさんの反応はいかがですか?

「ツアーに参加される方々は、島から本当にいろんなことを学んでくれるんですよ。日本人が学ぶ姿勢で島に入っていくと、島民たちも自分たちの暮らしに誇りを感じるんです。『あ、自分たちの生活は決して貧しくなんかないんだ』って。それがすごく良いんですよね。

一般的に発展途上国への援助というと、やっぱり西洋の暮らしが価値基準で、そこに近づけようとするものが多い印象ですが、果たしてそれで幸せになれるのか疑問もあります」

ーー なるほど。

「21世紀の現代には必要なモノはすべてあるんだけど、そこで経済活動をストップするわけにもいかないから、どんどん買わされてるっていうだけなので…。これからは経済最優先の社会って、もう続かないと個人的には思います」

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ーー これからはどんな社会になると思いますか?

「経済成長ばかりを追い求めるのではなく、何か新しい価値観の社会っていうのを作っていかなきゃならないと思うのですが、具体的に言えば、日本の田舎や故郷に戻ってそこの自然と一体になった生き方をしていくライフスタイル。日本でも着実に根付きつつあると思います。そんな中で、ひとつの理想となれるような小さなコミュニティをカオハガン島で作っていけたらな、と今は思っているところです」

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そうか、自分にも他人にも、目の前にいる動物にも、生温かい血が脈々とこの瞬間も流れている。ついつい忘れてしまいがちな、シンプルなこと。生きている実感。

幸せになるためのヒントが見つかるとっておきの旅が、待っているーー。

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小舟から、さらに小さな船に乗り換えて島へ上陸。手作りの小さな木製の家が軒を連ね、洗濯物がはためく様は生活感たっぷり。

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 崎山氏の著書『何もなくて豊かな島』を読んで訪れるゲストのための、素敵なゲストハウスや、カフェ、小さなバーもある。そういったゲストに島の自然と共にある暮らしを楽しんでもらうアクティビティも用意。また、島には毎日、セブ島から観光客たちを運ぶ定期船がやってくるため、魚介類や土産物の市場では観光客に懸命にアピールする島民の皆さんの姿があった。

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こちらの大きな壺は、生活用水となる雨水を貯めるためのもの。

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いたることろに、闘鶏用の鶏が繋がれている。

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崎山さんが島に広めたカオハガン・キルト。一昨年にはアメリカの国立キルト美術館で3ヶ月間大きな展示を開催し、成功を収めた。

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島では、こうして大勢で食卓を囲むのが日常。

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観光客は、近海で獲れた魚介類や季節野菜、新鮮な肉を使い、シェフが心を込めて作ってくれるランチを食べることができる。これが激ウマ。

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豚肉の照り焼き。みんなで食べるご飯って、やっぱり美味しい!

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滞在中には、世界中で最も数多くの生物が生息する一帯に数えられる「カオハガン島・熱帯サンゴ礁保護区」でシュノーケリングすることができる。美しい熱帯魚とサンゴ礁が織りなす世界に息を飲むだろう。

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旅人が宿泊できるゲストハウスは、海を一望できるとっておきの場所に建つ。高床式の部屋に吹き抜ける潮風が心地よく、気に入ってしまいそのまま1年くらい滞在する人もいるという。宿泊費は、1泊一人2,200ペソ(約5,500円)。

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「カオハガン島 オフィシャルHP」
http://caohagan.com/

「セブ社会人留学」
セブ島への英語留学と、アクティビティ&アイランドホッピングの旅をコーディネーションしてくれる留学エージェント
http://cble.jp/

「islandsblue」
カオハガン島への旅のお問い合わせ先(旅行代理店)
http://www.islands-blue.com/

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