ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介に聞く「星空のレシピ」

「写真はシンプルです。どれだけ簡単にセットして撮れるか、で99%が決まります。感情的に、うわーいいなと思ったときにすぐ撮れるようにしているのです。感情のタイミングに合わせるために」

ネイチャーフォトグラファーの柏倉陽介氏は、自身の講義でこう語る。デジタルが進化するなかで、それまでよりさらに複雑な操作が求められつつある写真の世界で、いかにシンプルなのか、を説くのだ。

「ずっとそういう観点で写真を撮っていたら、だんだんそれを人に伝えたくなってきて、2年前から写真教室を始めたんです。記録写真ではなく、もっと自分の目線を、感情的な写真を撮りましょうって」

写真撮影を
シンプルに因数分解

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被写界深度、ダイナミックレンジ、写真にまつわる数値は、多様すぎて感覚を身につけるまでにかなりの時間を要する。しかし柏倉氏の教える要素は2つしかない。

「明るさ」と「ぼけ」だ。

自分の表現するものを、この2軸を使うことだけで教えていく。

「たとえば苔を普通に撮ってしまうと、明るく写ってしまう。黒っぽい被写体なので、カメラは暗いと判断し、明るく撮ってしまう。だからこれは、撮影者が暗くていいんですよ、とマイナスに補整します。すると見た感じのまま撮れる。自分がきれいだなと思う湿感や色合いを、自分で明るい、暗いをしっかり操作して撮ります」

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柏倉氏の露出に関する手ほどきを受けて、参加者である寺田さん(29歳)が撮影した蝶の写真がこちら。

「的確に選ばれたシンプルな背景、ハイキーな露出が秀逸です」と、柏倉氏。

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こちらも参加者、佐藤さん(28歳)の作品。西表島の「板根」をしぼりこんで撮影し、複雑な形状・文様をすみずみまで写し取った。

モノクロームでの現像が、その奇怪な美しさと質感を伝えている。

「星空」を撮るときの
8つのレシピ

柏倉氏の鉄板ハウツーとして、屋久島や西表島の星空がある。

「星だけを撮っても、天体写真になってしまう。だから、大地に何があるのか? をいつも見ています。シーカヤックがあったり、焚火をしている人がいたり。広角は中心を遠くに置いて広く撮るのがコツです。魚眼は周囲がゆがむ代わりに、星空が迫ってきますね。天の川がガーンと迫ってくる。自分の目線で空気感が伝われば、成功ですよ」 

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講義のなかで、柏倉氏の撮った西表島の星空がコレだ。雲の形、うっすらと見えるマングローブが、美しい。

この写真を撮るための、簡単な8つのレシピがある。

1:カメラを三脚に固定する。

 

2:星空にオートフォーカスは不可能なので、マニュアルフォーカスでピントを合わせる。

 

3:レンズの焦点距離によって秒数が決まる。
16mm 30秒 → 星が点で写る
16mm 30秒以上 → 星が線になる
20mm 25秒
24mm 20秒
35mm 10秒

 

4:ホワイトバランスは、3,200K~3,800K
数値が変えられないカメラは「電球モード」で撮る。

 

5:タイマー2秒後(ブレ防止)に設定

 

6:手ぶれ補正を切る
自分が歩いた振動で始動してしまう可能性があり、星がぶれてしまう。

 

7:ピントを合わせる
遠くにある街灯や月を目標にして、ピントを厳密に合わせる。

 

8:ISO感度
ザラザラ感を許せる範囲。1,600~800くらいで撮影するけど、星が写らなければ感度を上げていく(※レンズのF値は1.4が理想。F2.8でも可)。

大切なのは
「受け止める」こと

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このレシピを元にして、参加者の宮下さん(25歳)がセルフポートレートで撮影した西表島の星空。

頭につけたヘッドライトが星空を照らすという幻想的な演出が、天の川のファンタジー感を増幅している。

この講座は、ドキュメンタリーTVの「ナショナル ジオグラフィック」が“ドキュメンタリーを体験する”をコンセプトに主催する「ナショジオ ツアー」の第1弾「ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介と行く『西表島写真の旅』with ソニーα」に同行し、撮影したもの。

細かいスキルだけではなく、根本からわかりやすく「とらえ方」を教えてくれる講師はなかなかいない。

「カメラは撃つものではなく、受け止めるもの。被写体が浴びた光を受け止め、そして魅力的な光を放ってくる。その光を見つけ、想像し、それをカメラの中に受け止めるものだと考えています。最も大切なことは、想像力なんです」

と柏倉氏は熱弁するのだった。

「ナショナル ジオグラフィック」は、空中都市マチュピチュ(1911年)や沈没したタイタニック号の発見(1985年)など、歴史に残る数多くの実績を有するナショナル ジオグラフィック協会を母体とし、あらゆる領域の“未知”へ挑み、次世代の“知”へと変えていく世界最高峰のドキュメンタリーTV。事実に基づき、エンターテイメント性を兼ね備えたコンテンツを創造し、より多くの人の知的好奇心を刺激し続ける。

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