登山家・栗城史多~10のメッセージ~「見えない山を登っている全ての人たちへ」

登山家・栗城史多さんは、自身の登山を生中継することで知られている。その根底にあるのは「冒険の共有」。栗城さんは自分がチャレンジするだけでなく、その姿を見た人すべてに、チャレンジして欲しいと考えているのだ。
講演や著作でも多くの共感を呼んでいる、栗城さんの言葉――ここでは、TABI LABOが行った栗城さんへのインタビューをもとに、そのいくつかを紹介していこう。

「見えない山を登っている全ての人たちへ」
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これは栗城さんの座右の銘とも言える言葉。彼のHPにも記載されている。その本意について、栗城さんはこうも語ってくれた。「人生において山はどこにでもある。もちろん、みんなが登頂に成功するわけじゃなくて、頂上近くで下山することも珍しくない。でも、そんな人たちにも、もう一回登ろうって思って欲しいんです」。

「ネットで叩かれているのは知っています。悔しいとも思う。
でも、なかには『ありがとう』って書いてくれる人もいる。
だから、続けられる」

テレビやネット配信の力で、栗城さんの活動は広く知られるようになった。しかし、一方で誹謗中傷の対象にも。そんなバッシングについてのコメント。力強い!

「自分をアピールするんじゃなくて、人との出会いを大切にしようとだけ考えています」

登山にはスポンサー探しが欠かせない。現地から映像配信をする栗城さんのスタイルなら、尚更だ。栗城さんにその秘訣を聞いたところ返ってきたのが、この答え。すべての仕事人に通じるメッセージかもしれない。

「成功だけじゃない。
僕は失敗や挫折も共有したい」

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なぜ、栗城さんが自身の登山をリアルタイムで配信するのか? その背景にはこんな思いがある。

「成功者の話よりも、今何かを目指している人の話を聞きたい」

成功体験じゃなくて、チャレンジする人の思いに興味があると言う。そして、自らも「ずっとチャレンジしていきたい」と言う。

 「肩書きじゃなくて、アイデンティティを共有する世の中が理想です」

現代社会において重視されるのは、○○会社や○○長といった肩書きだ。「こんなことを考えている!」「こうしたい!」といった思いで語られる社会を、栗城さんは思っている。

「 5年後とか、10年後とか。想像するのは難しい。
それよりも、目の前にある山を登って、
そこから見える景色を見て、次を考えるようにしている」

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大きな夢を持つことも大事だが、目の前の小さな目標を達成していくこともまた、大事だ。

「苦しみと戦っても勝てない。逃げても無駄。だから、友達になる。
だって、苦しみが大きかったら、喜びも大きい。
僕は登りながら、苦しみに『ありがとう』とつぶやくんです」

登頂できないことだってある。栗城さんは、2012年のエベレストへのアタックで凍傷にかかり、指9本を切断。多くの苦しみを知っているからこその言葉。

「『がんばってください』よりも、
『自分もがんばります』がうれしい」
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「僕の姿を見て、消費しないで欲しい。そこから何か動いてくれれば、それが一番いいと思う」とも。

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栗城 史多

1982年6月9日、北海道生まれ。大学3年生の時に単独で北米最高峰マッキンリー6,194mを登る。その後、6大陸の最高峰を登頂。2008年からエベレストの生中継登山「冒険の共有」に向けた配信プロジェクトをスタート。2009年にはダウラギリ(8,167m)の6,500m地点からのインターネット中継と登頂に成功。エベレストには気象条件の厳しい秋季に4度挑戦。酸素ボンベを使用せず、ベースキャンプから一人で登る単独・無酸素登山をスタイルとしている。2012年秋のエベレスト西稜で両手・両足・鼻が凍傷になり、手の指9本を失うも、2014年7月にはブロードピーク(8,047m)に単独・無酸素で登頂し、見事復帰を果たした。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。