地味で内向的だった私が、海外で「好きな仕事」を続けられるワケ-白木夏子-

エシカルジュエリーの日本での第一人者である白木夏子さん。中南米などの鉱山から素材を自ら調達するという行動力、そしてジュエリービジネスを通じて途上国鉱山での労働環境改善に取り組む姿勢。そのバイタリティーあふれる活動の原動力は一体どこにあるのか。TABI LABO共同代表の久志尚太郎が秘密に迫る。

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001.
バックパッカーとしての経験が地球の裏側まで足を運ぶ行動力に!

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久志 白木さんのことは前から存じ上げていますが、WEBに出てくる情報でしか、どんな方か知る事ができなくて…。本当はどんな方なのか、実際に会って話してみたかったんです。

白木 ありがとうございます。私も世界じゅう旅をしながらジュエリーを作っているので、TABILABOさんは立ち上げ当初からとても刺激を受けるメディアでした。私のジュエリーブランド「HASUNA」で制作しているジュエリーは、エシカルジュエリーという言葉で表現されることが多いです。リーマン・ショック以降エシカル消費が加速されたと言われていて、それに伴いエシカルを切り口にしたプロダクトをつくる企業がこの数年で増えました。WEBではエシカルな会社の代表として取り上げられることが多いので、そのイメージが強いかと思います。

久志 「エシカル」みたいなキャッチーな言葉って、それ自体がひとり歩きしてしまうというか。

白木 そうですね、それは大いにあります。私が起業した2009年にはまだこの言葉は全く日本で浸透していなくて、キャッチーで新しいキーワードということもあって、周囲の期待をとても大きく感じていました。

HASUNAはジュエリーブランドですが、デザインやつくりについて聞かれるのではなく、立ち上げ当初はエシカルというコンセプトについて聞かれる事が多かったです。おかげでメディアにはよく取り上げていただいたのでメリットがあった反面、私たちは「エシカル」というコンセプト、つまりビジネスの中に存在する倫理—人や自然環境に配慮すること、を空気のように当たり前のことだと考えているので、この言葉ばかりがバズワードのように表に出る事に疑問も覚えていました。

この事業を通じて何を行うのが結果的に一番関わる人にとって良い影響をもたらすのか。試行錯誤で今まで約6年やってきて、紆余曲折あったなかで、まずは身につけることが何よりも喜びだと感じられる素晴らしいジュエリーをつくり、ブランドを大きく成長させることが結果的により多くの人の幸せに繋がると改めて実感していて、日々健全な成長を遂げられるよう努力しています。

久志 ちなみにエシカルという概念に着目されたきっかけはあったんですか?

白木 学生時代にインドの鉱山で起きている児童労働や買い叩かれている人たちを目の当たりにして、既存のビジネスのありかたに疑問を覚えていました。

幼い頃から鉱物が大好きで、自分でもジュエリーを作っていたので衝撃も強かった。これを解決するには児童労働や搾取のない鉱山に関わるビジネスを、自分でまずは起こすのが良いのではないかと思ったんです。

鉱山からジュエリーの素材となる金や宝石を調達して、顔の見える関係を築きながらつくるジュエリーだったら、自分にも作れるかもしれない。その頃イギリスやアメリカのファッション業界では「エシカルファッション」というキーワードが既にありましたが、私の考えるジュエリーのありかたが、このエシカルという言葉でうまく表現されていました。

久志 起業したのは、ちょうどリーマンショックがあった頃だったとか。

白木 そうです。私はもともと投資ファンドに勤めていたんですが、外資系の金融会社に勤めていた人たちがどんどん首を切られ転職する姿を間近で見てきました。ある人は起業したり、ある人はNPOに就職したり。リーマンショックを経て、お金だけを追いかける生活に空虚感を抱くようになったのかも知れませんね。

そうした流れもあって、モノを買うときの価値観や、日常生活での思考が少しずつ変化して、その結果エシカル消費が進んだと言われています。

久志 僕も25歳のときに勤めていた外資系の会社を辞めて宮崎へ移ったんです。田舎で暮らしてみると、東京で得ようとしていた表面的な豊かさがとてもチープなものだと分かったんです。だから年収5000万円貰っても東京に戻りたくないと周りに言ってました。月8万円ぐらいの給料を貰って宮崎で暮らしていた方がよっぽど豊かだと…。

でもこれは極端な話であって、今大切なのは、バランスを取りつつ豊かさについて考えること。だからまた東京に戻ってきたんですが、こうした新しい価値観だけを武器にビジネスに取り組むのは正直難しさもあると感じています。白木さんの場合はいかがですか?

白木 どんな仕事をするにしても、会社を立ち上げるのはやはり大変ですよね。ソーシャルな仕事だからといって、楽ができたとか、緩いスピードでできるかといったら全くそうではありませんでした。むしろ、もっと難しいことをしているんじゃないかなと。

久志 実際に海外の鉱山や工場まで行かれるとか。その行動力って一体、どこからくるんですか?

白木 世界じゅうを旅していた時の実体験が大きいです。大学時代にバックパックを背負ってアジア、アフリカを中心に沢山の国を放浪していて、インドでは水も電気もない農村部で生活したこともありました。辺境の地で心から感動するほどの手つかずの美しい自然を見たり、言葉も通じない場所で人の暖かさに触れ感動することもあったり…。

私たちが作るジュエリーは、鉱山で石を採る人がいて、それを研磨する人がいて…と、沢山の人が関わっていて、その素材の殆ど全てが地球の一部で。昨年もペルーの金鉱山に行ったのですが、採掘する人たちと一緒に過ごすことで、ひとつのプロダクトを通じて世界中の人と繋がれるんだと実感しました。旅での出会いは一期一会ですけれど、仕事での出会いは今後も関係が続きますから、この一体感がいいですよね。

久志 僕、今の話を聞いて、白木さんの仕事に取り組む姿勢って根底に〝楽しさ〟が宿っているんだなと感じました。

白木 そうかも知れません。現場を見るのは搾取や児童労働などの負の側面がそこにあるかもしれないから、自分の目で見なければ気が済まないという気持ちと、人との触れ合いや自然との出会いの楽しさが入り混じっていると思います。また、一生に一度の起業になるかも知れないから、自分が究極的に楽しいと思えることをしようと考えました。

鉱物が好き、ジュエリーを作るのも大好き、作っている人に会うのも、そして旅も好き。好きなことを追求できて、鉱山で働く人も、研磨する人も、関わる人皆が幸せになっているような、こんな仕事ができたらこれ以上素敵なことはない。こんなことを全部ひっくるめて実現できることはなにか…と考えた結果、HASUNAの姿に辿り着きました。

002.
「心を閉ざし、自分のなかの世界で生きていた」インナーノマドだった幼少時代

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久志 毎回インタビューする際に、皆さんのパーソナルな部分をお伺いしているのですが、白木さんはどんな子ども時代を送っていたんですか?

白木 すごく内向的でしたね。人と話すのが苦手だった。学校で一人で過ごすことは日常的でした。家に帰ると自分の部屋にこもって、古代生物の図鑑を見たり。宇宙関連の本も読んでいて、46億年前に地球が誕生したことや、600万年前に類人猿が人類と分かれたとか…、そういうことを部屋に引きこもりながら知識として詰め込んで、たまに「生きることって意味があるの?」なんてことを鬱々と哲学する。今思うと完全に心を閉ざして自分のなかの世界で生きていました。

久志 そこからどう変わっていったんですか?

白木 思春期ぐらいまではそうして自分自身の中を旅する、いわゆるインナーノマドと呼ばれる状態にありましたが、成長するにつれて少しずつ外の世界に出るようになりました。

あとは一緒に暮らしていた祖父が戦争を体験していたことや、世界じゅうを旅した経験があったのですが、その祖父から実際に見てきた世界の話を聞くうちに、「私も日本から飛び出して世界を見てみたい。そして日本人として世界に何ができるのか考えたい」という気持ちを抱くようになりました。それで21歳でイギリスの大学へ留学するんです。

久志 インナーノマドからリアルノマドに変化したわけですね?

白木 そうです。留学する前に社会派フォトジャーナリストの桃井和馬さんの講演を聞いたのも大きなきっかけですね。桃井さんは100カ国以上の国を取材し、写真として収めてきた方なのですが、講演の中で「ここにいるみなさんが今すぐ動き始めなければ、地球はすぐに壊れてしまう」とおっしゃったんです。その言葉がすごく衝撃的で。「私は今まで何をしてたんだ」と反省しましたね。それから、世の中で困っている人がいたら、私ができることをやってあげたいと思い立ち、フィリピンなどの発展途上国に行きました。

久志 なるほど。幼い頃に、自分と対話をし続けたことがあってこそ、この講演が胸に響いたという側面もあるかも知れませんね。

白木 そうだと思います。

003.
宇宙単位で自分を見つめる 平穏な日々は少しの工夫で得られる

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久志 ちなみに、好きな言葉はありますか?

白木 ドイツの詩人フリードリヒ・フォン・シラーの言葉で「迷い、夢見ることをはばかるな。高い志向はしばしば子供じみた遊びのなかにあるのだ」。つまり〝夢を描いたり、人生を迷ったりすることのなかに志がある〟ということ。「HASUNA」で今実現していることも、幼い頃に心の探求をしていたことや、今まで散々迷って、または遊んできたことが大きく影響していると思います。

久志 なるほど。あと、普段から気をつけていることとかあります?僕は自分が思ったことが大体実現してしまうんです。だから思考をクリアにすることを大切にしています。白木さんはなにかありますか?

白木 自分の中に軸を持つことです。女性は勤める会社やお付き合いする男性によって人生が大いに左右される傾向がある。結婚や付き合う相手によって、仕事を辞めたり職業を変えたりすることも多いかと思います。相手に軸があると、いざその関係がうまくいかなくなってしまった場合に路頭に迷ってしまう。人生何があるか分からないので、仕事をしていても、そうでなくてもあくまでも軸を自分の中に持ち、自己実現に向けて追求することが大切だと思います。

仕事に限らず、趣味やボランティアでもいい。自分が生き生きと輝けるための術を知ることが、シンプルですがとても重要なのではないかと思います。

久志 Facebookなどで白木さんの写真を拝見していて、「どうしてこんなに綺麗なのかな、輝いているのかな」と感じていたのですが、なんとなく腑に落ちた気がします。最後に、今伝えたいメッセージがあれば聞かせてください。

白木 宇宙から、自分の姿を俯瞰しよう、ということでしょうか。地球単位、宇宙単位で自分のことを見つめられたら、もっと穏やかで前向きな人生を送れるのかなぁと思います。

先週までインドに行っていて、飛行機からランドスケープを眺めていたんですが、やっぱり地球の風景って素晴らしくて、「何万年も前からこの同じ風景が続いているんだ」と思うと、悩みなど無に近く、更に大きな挑戦を迷わずしてゆきたいという気持ちになります。こうして時々少し俯瞰して自分のことを考えられるようになったら、惑うことなく安定した心で、前向きに日々が過ごせるかなぁ…と思います。

私が日々接しているジュエリーも、この地球の一部。金も、プラチナもダイヤモンドも、殆どのジュエリーの素材は地球の一部として何億年も眠っていた。TABILABO読者の方は旅が好きな方が多いと思いますが、HASUNAのジュエリーはまさに世界じゅう旅をしながら作っていて、きっと手に取るとその空気が伝わるのではないかと勝手ながら思っています。

HASUNAのジュエリーを手にしたお客様には、こんな地球のことや世界のことを感じてもらえたらと思っています。ものの裏側に思いを馳せることが、人や自然、私たちが生きている地球への敬意にも繋がり、良い循環を生むと考えているからです。

白木夏子/Natsuko Shiraki

株式会社HASUNA 代表取締役社長 。 英ロンドン大学卒業後、国際機関、金融業界を経て2009年4月に株式会社HASUNAを設立。地球へのオマージュ(敬意)を表現し、自然環境と関わる人に配慮するジュエリーブランド「HASUNA」を展開。世界経済フォーラム(ダボス会議)に参加、内閣府「選択する未来」委員会メンバーを務めるなど、国内外で活躍。Forbes誌「未来を創る日本の女性10人」に選出。最新刊に「女(じぶん)を磨く 言葉の宝石」(かんき出版)がある。

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