家は人生で一番高い買いもの・・・だったのは昔の話。多拠点暮らしができる「マイクロハウス」に住んでみたい!

家に置けるものは、たったの「108個」だけ。そんなコンセプトの家・マイクロハウスをつくっている会社が福岡にあります。ものを持たない、つまり丸腰であることから、その社名は『丸腰不動産』
代表の後原宏行(せどはらひろゆき)さんは、27歳のときに断捨離を決意。持たない生活へ少しずつシフトしていったそう。

マイクロハウスとは:スクリーンショット 2016-01-28 15.02.44ロシアに「ダーチャ(田舎の邸宅)」というカルチャーがあります。避暑にしか使わない日本の別荘とは違い、「平日は街で働き、週末を田舎で過ごす」ために建てられます。マイクロハウスのコンセプトはそれに限りなく近いそう。

後原さんは都会と田舎を行き来しながら、マイクロハウスによる多拠点暮らしを実践しています。そんな彼に、ものを持たない生活の先にある、新しいライフスタイルについて伺いました。

持たないライフスタイルで、
本当に必要なものが見えてくる

ーー『丸腰不動産』を設立するに至った経緯を教えてください。

後原 元々は、たくさんのものを抱えた暮らしをしてたんです。若い頃って、音楽とかファッションとか、いろんなことに興味があったりするじゃないですか。僕が20歳くらいのときはインターネットがなかったので、本やCD、情報などは手元に置いておくしかなかったんです。

だけど、あるとき「これは本当に必要なのか?」って思うようになって。たくさん所有している背景には「これを持っている自分は音楽に詳しい」とか「この本はレアだから持っておこう」とか、そういう気持ちがあることに気がついたんです。

ーー必要だから持つのではなく、「たくさん持ってる俺カッコいい」的な感覚だったんですね。

後原 ちょっと違うな思って、今から15年くらい前に思い切って断捨離をしました。そしたらもう気分爽快で!。そこから、あまり消費しないような生活を意識するようになったんですよね。

今では仕事着は1種類しか持っていません。選ぶのが面倒くさいので、ジャケットとパンツは共通でインナーだけを変えているんです。ちなみに靴も1種類だけですね。朝からストレスを感じるのはイヤですし、あまり選択をしなくて済むように心掛けています。

ーーライフスタイルが変わったのが先だと。

後原 はい、そうしたライフスタイルの延長で、マイクロハウスにも興味を持つようになったんです。ただ、今と違って、6〜7年前には国内にマイクロハウスの情報がほとんどなかったので、アメリカのタイニーハウスのことをたくさん調べました。
アメリカはライフスタイルの部分でもすごく進んでいるなと感じて、いつかは自分もマイクロハウスを作りたいなと思ったのが、『丸腰不動産』を設立したきっかけです。

ーーたくさんのモノを所持していた理由に疑問を抱くようになり、それらを処分したのをきっかけに、持たない生活にシフトしていったと。

後原 そうですね。“ものが自分を形成している”ような感じになってしまったので。捨てていくことで何が必要かってのがわかるんですよね。自分のことがよくわかってくるんじゃないかと思います。

多拠点暮らしで手に入れた
“もうひとつの人生”

ーー後原さんがモノを持たない暮らしを始めたのは、15年ほど前からだと伺っていますが、ミニマリストというライフスタイルをどう見ていますか?

後原 僕らは消費させられてきた世代だと思うんですが、“消費疲れ”が起きているんじゃないでしょうか?ミニマリストという生き方に感化される人が、少しずつ増えているのかもしれません。

とはいえ、結婚して家族が増えると、必然的にものは増えますよね。僕は無理に減らそうとせず、自分にピッタリの「何もない暮らし」を実現する場として、マイクロハウス生活を始めました。
同じ場所で生活を続けるよりも、拠点をいくつも持って、それぞれで違う暮らしを送るのもありだと思うんです。お金を稼ぐのは都市、好きなことをして過ごすのが田舎、といったライフスタイルですね。

ーーマイクロハウスはどこに建てられたんですか?

後原 普段は福岡で仕事をしているんですが、マイクロハウスは佐賀に作りました。車で1時間半くらいの場所ですね。

ーー実際に住んでみて、印象はいかがですか?

後原 もうひとつの人生を手に入れたようで、大満足というのが正直な感想です。近くの海でのんびり釣りを楽しんだり、逆に何もしない贅沢を満喫したりと、自由に生活していますよ。

週末に1泊旅行に行くのと何が違うのかというと、簡単に言えば、人の家に泊まるか自分の家に泊まるかの違いなんじゃないかな。新しい土地や文化に触れるのは楽しいですが、旅行だとどうしても気疲れするところがあると思うんです。自分のマイクロハウスだと誰にも気を使う必要はないですし、厳選した大切なものに囲まれて過ごせるのが最大のポイントだと思っています。

ーー都会と田舎の多拠点暮らしについて、ご家族からの反応はどうですか?

後原 妻もそういう過ごし方を楽しんでいるみたいです。まだ子どもは小さいんですけど、もう少し大きくなったら、自然豊かな環境で存分に遊ばせてあげたいと思ってます。個人的にはライフラインがない山奥や山頂で暮らしてみたいですね。星がキレイに見えて、サバイバルが体験できるところならどこでも(笑)。

家を売りたいのではなく、
「多拠点暮らし」を広めたい!

ーー『丸腰不動産』のWEBサイトを見ていると、家というよりも“拠点”としてマイクロハウスを提案しているような印象を受けるのですが、実際にはどういった位置付けで捉えているのでしょうか?

後原 多拠点暮らしを提案していきたいという気持ちは強くあります。家をたくさん売りたいわけじゃなくて、こういったライフスタイルの提案が目的なんですよ。売ってもあまり儲からないんですし。

ーー国内にもマイクロハウスを販売している企業はありますが、200万円を切るのってほとんどないですよね。工事費込みで128万円という価格はどのようにして実現されているのでしょう?

後原 単純に薄利ってことだけですね。先ほども言ったように、家をたくさん売って儲けようという商売ではないので。他所だと4畳半くらいでも200万円くらいはするんですけど、うちのは6畳分のスペースがあって128万円なので、かなり安いと思います。

ーー他社と比べて格段に安いですよね。そういった事情を知らないお客さんからは「安いけど、耐久性は大丈夫なの?」といった声はありませんか?

後原 けっこうありますね。家自体は小さいんですけど構造計算はしっかりしていて、工法も普通の家と同じように大工さんが作ってくれています。耐久性や機密性も高いんですよ。小屋っぽい外見ですけど、中身はガチの家って感じですね。

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ーー完成までには、どれくらいの日数がかかるんですか?

後原 基礎を固める期間を除いて8日間ですね。工場でカットした木材を、大工さん3人とアシスタント2人で組み立てます。ただ、工場が九州なので、今のところ128万円で建てられるのは九州内だけなんですけど。

ーー関東で作ってもらうとすれば、見積もりはどれくらいになるんですか?

後原 問い合わせは多くて工務店を探してはみたんですが、いま関東では大工さんの工費が高騰しているんです。大きな案件を手がけているところも多く、うちのような小さな仕事はなかなか受けてもらえなくて。東京で見積もりをつくると、一般的なマイクロハウスと同じで300万くらいかかっちゃうこともあるんです。

ーー『丸腰不動産』を立ち上げたのは、それで利益を得るというよりも、新しい“ライフスタイルの提案”できればという思いなんですね。

後原 ものを持たないライフスタイルを提案していきたいですが、持たないといっても限界はありますよ。そんなときって目利きの力が必要になるんじゃないでしょうか。

アウトドアブランドの服は高いですが、丈夫だし機能的ですよね。安物で揃えるより、高いけど良質なものを買ったほうが長持ちするし、長い目で見ればお得です。そういう目利きの力を持った人が増えると、本当に良い品を売る人も増えるんじゃないでしょうか。それを長く大切に使うようなライフスタイルが広がればいいですね。

マイクロハウスを建てるにしても、どうやって土地を探せばいいのかわからない人が多いでしょうし、気になったらぜひ相談してもらえればと思います。

後原 宏行 hiroyuki sedohara
カラクリワークス株式会社 代表取締役
2005年5月にカラクリワークスの屋号でWebデザイナーとして独立。以降Webサイト制作を中心に活動、現在に至る。日替わりでマスターが変わるSharingBar「UNDERBAR」、一坪ポップアップショップ「人三化七」、志賀島活性化プロジェクトの拠点「シカシマサイクル」の運営等を行う。2015年よりペチャクチャナイト福岡の公式オーガナイザーとなり、定期的にイベントを開催中。
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。