病気でキックボクシングを引退…だけど、僕は前よりも強くなっている〜宮城大樹〜

俳優の宮城大樹さんはとても明るい人だ。

だけど、その半生は決して順風満帆じゃない。子どもの頃から打ち込んできたキックボクシングの第4代RISEバンダム級チャンピオンになったのも束の間、脳にくも膜嚢胞が見つかり、引退。その一部始終は当時出演していたリアリティ番組『テラスハウス』でも放映されたので、覚えている人も多いはずだ。

今、宮城さんは当時を振り返って「今のほうが強くなっている」と語る。もちろん、フィジカルの話じゃない。逆境を乗り越えて、手に入れたのは人生を前向きに生きる強さだった。

「 僕はプロになってから強くなった。見られる世界っていうのが合っていたんでしょうね」

ーーキックボクシングをはじめたきっかけは?

宮城 親父も姉もやってたんで、その流れで5歳から空手をはじめて。格闘技が好きな家庭だったんですね。それがある日、K1グランプリを横浜アリーナで観戦して、将来ここで戦いたいと思って、キックボクシングに転向したんです。

ーー同じ格闘技でも、まったく違いますよね。

宮城 そうなんです。一応、空手でも全日本3位に中学3年生の時と高校1年生の時になっていて…まあ、それほど強かったわけじゃないど、自信はあったんです。でもキックボクシングは、全然違って。甘かったですね。
アマチュアの戦績、悪いですよ、僕(笑)。 

ーー努力を重ねて強くなった?

宮城 もちろん、それもあるんですが、プロになってから強くなったんです。アマチュア時代から会場を沸かせるスタイルだったんで、キックボクシングの師匠から「お前はプロ向きだな」って。で、プロになってから芽が出てきた。
プロの自覚というか、そういうのですね。アマチュアは試合に出るためにお金を払う、でもプロはお金をもらって試合をする。しかも、注目もされる。
当然、お客さんにいい試合を見せたいって思うし、楽しいって思う。それで強くなった。結構、ナルシストなのかも(笑)。

ーーだからこそ、テレビ番組『テラスハウス』にも出演した?

宮城 それは、きっとありますね〜。

「『テラスハウス』出演していた頃、正直負ける気がしなかった」 

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ーーどういう経緯で出演したんでしょう?

宮城 ずっとテレビに出たいって思っていたんです。そもそも横浜アリーナで試合するのが夢な目立ちたがり屋ですから(笑)。で、周囲から「こんな番組あるよ」って教えてもらったのが『テラスハウス』でした。
ちょうどタイトルマッチの前だったんで「今、出演すれば、俺の試合がテレビで放映される!」って思ったんです。

ーータイトルマッチ前のナーバスな時期、不安はなかったんですか?

宮城 全然。周囲からはやめとけって言われることもありましたけど。
実際にテラスハウスに入居して男女で共同生活を送ることになっても、戸惑うことはありませんでしたね。むしろプラスになりました。

ーープラスに?

宮城 ええ。試合前って、とくにタイトルマッチだと精神的にはピリピリするんですが、テレビに出て周囲が騒がしくなったことで、反対にリラックスできたんです。
練習中は真剣ですが、テラスハウスに帰ってきたら、いい意味で気が抜けるというか。

ーーそして目標であったタイトルマッチもしっかり放映されました。

宮城 しかもチャンピオンになった。僕、あのタイトルマッチの前から数えて5連勝したんです。本当に当時は負ける気がしなかった。もう試合のファーストコンタクトでわかるんですよ、「今日勝てる」って。
アスリートの宮城大樹としては、間違いなく最強の時期でした。

 「病気になったことで、不安になる? 僕はその反対だった」

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ーー最強と自負していた絶頂期に、病気が見つかって引退することに…

宮城 それは落ち込みましたよ。でも、切り替えは早かったと思う。というのも、周囲に支えられた。『テラスハウス』の生活は、ものすごいスピード感で、ウジウジ悩む時間なんてなかったし、周囲の仲間も明るく接してくれたのが有難かったですね。

ーー周囲が支えになったとはいえ、自分ではどのように気持ちの整理を?

宮城 本当言うと、やっぱり格闘技を観るのは1年ぐらい辛かったんです。何度か会場に足を運んだんですが、大丈夫と思っていても、自然と涙が出てくる、そんな感じでした。
ただ、病気で不安になる人もいると思いますが、僕はそうじゃなかった。たしかに、脳に水がたまっている状態なので、健康な人よりも死のリスクは高い。衝撃を受けたら、死んでしまうかもしれない。
じつはウチ親父が15歳の時に亡くなっているんです。また、最近も親しかった友人を1人亡くしました。そんな経験があるからこそ、僕は死のリスクを肌で理解しています。実際、親父が亡くなってからは、金銭面も含めて家族でとても苦労した覚えもあります。
だからこそ、なんです。死を人よりも近く感じているからこそ、不安な日々を過ごすんじゃなくて、いざという時のために、僕は毎日を大事に生きるって決めたんです。

ーー反対にポジティブになったんですね。

宮城 はい。現役の頃より、むしろ人間的には強くなったかもしれません。 

 「毎日を大事に生きる。そのためにはまず、自分を好きになる!」

ーーそして現在は、俳優として活躍しています。

宮城 引退して、8ヶ月ぐらい経った頃、舞台に出るお話をいただいたんです。それまでもバラエティ番組に出たり、モデルをやらせてもらったりはしていたんですが、本格的な演技ははじめて。
その舞台を観に来てくれた仲間が「大樹、リングに立っているみたいだったよ」って。マジか? これをやりたい!って思いましたね。

ーーまた、キックボクシングジム『TARGET SHIBUYA』の代表でもあります。

宮城 はい。もう選手ではないけれど、キックボクシングを広めたいと思って。そう考えられたのも、完全に吹っ切れたからでしょうね。

ーーものすごいパワーで前に進んでいる感じがします。そのモチベーションの源は?

宮城 大人になったら、仕事でもなんでも嫌なことでもやらなきゃいけないって言うじゃないですか? 僕、考えてみたら、この歳まで嫌なことやってないんですよ。別に逃げてるわけじゃないですよ。ちゃんと仕事もして、苦労もしていると思う。
ちょっとカッコ悪いけど、自分が大好きなんですよ(笑)。だから、嫌なことをしない。好きなことを一生懸命やるんです。ものすごく自分を、自分の気持ちを、大事に考えているんです。それは病気の経験も関係しているかもしれません。
だから、もしも僕がおっしゃっていただいているみたいに、前向きなパワーを持っているとしたら、「自分が好き」っていうのが、その源だと思います。

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宮城 大樹(みやぎ だいき) 俳優/モデル 1990年生まれ。幼少時より空手をはじめ、高校時代にキックボクシングへ転向。2013年には、第4代RISEバンタム級王者となるが、同年膜嚢胞が見つかり引退。現在は、俳優としてだけでなく、キックボクシングジム『TARGET SHIBUYA』の代表として後進の育成にもあたっている。

自分を引退に追いやった病気を乗り越えるだけでなく、ポジティブなパワーへと転換した宮城さん。その想いへの感動を伝えると「でも、僕は病気になる前から、自分好きなんですけどね」と笑って答えてくれました。

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