料理するとき、食べるとき。「肉や魚」と仲良く付き合っていくには?

聡明な女性はいつの時代も家事を合理的に再編成し、台所を賢く支配するーー。1976年に刊行されたベストセラー『聡明な女は料理がうまい』より、肉と魚を調理する上での”哲学”を紹介しましょう。ここでのメッセージが、台所に立つ気持ちを鼓舞してくれるはず。

素材に敬意を表わそう

肉でも魚でも、すごく上質な素材だったら、料理などいらないのである。そのままでおいしいものによけいな細工をすることはない。牛肉だったらステーキとかローストビーフとかオイル焼きとかいった単純明快な食べ方ほど豪勢なのだ。生きのいい魚には、さしみや塩焼きがいちばんよく似合う。なるべく手をかけず、素顔に近い状態で食卓に迎えるのが、誇り高い素材への敬意の表し方である。

時には高級肉を
ドンと買ったっていい

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こういう奇怪な世の中で知性を侮辱されずに過ごすために必要なのは、主体的な価値観と健康な平衡感覚である。ほんとうに自分自身の欲求として何がなんでもソレがほしいと思うなら、特選松阪肉だろうが東京の土地やエルメスのハンドバッグや東大だろうが遠慮することはない。

私も思いきって欲求に殉じることは多い。たとえばすごい勢いで働いた週の終わりに恋人とふたりで互いの労をねぎらいながらホッとくつろいで過ごす宵の食事に費用など惜しまない。

こんなときになによりも松阪肉の鉄板焼きが食べたい心境だったら、もう一人前5000円だろうが1万円だろうが、ドンとこい。数日分の稼ぎを一夜にして蕩尽したって自分にとってちゃんとそれだけの価値があるのだから知性の侮辱にはならないのである。

"民族資本の7つ道具"
で肉にぴったりのタレができる

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ペラペラの薄切り肉だったら、しょうがじょうゆにしばらく浸して焼いて大根おろしと刻みねぎを添えたり、酒でゆるめ、ごまやにんにくをすり込んだみそをからめて網焼きにしたりの日本風味がいちばん効果的である。これは豚でも鶏でも羊でも同じことで、これくらい便利でまちがいのない料理法はない。豚肉のしょうが焼きというのは、いまやサラリーマンのランチ定食のエースだし、朝鮮焼き肉も値段の割には最も満足度の大きい外食として人気が定着しているが、こんな簡単な魔法で商売人をかせがせておく法はない。

だれだって”秘伝のたれ”ぐらい作れるのである。別に、これが決定版という処方などありはしないのだ。みそ、しょうゆ、しょうが、にんにく、ごまに加えて、甘口が好きな向きにはみりん、辛いのが好きな向きにはとうがらし…この七種を私は民族資本の七つ道具と呼んで最も頼りにしている。7つ道具をさまざまにかげんして組み合わせ、さらにトマトケチャップでもウスターソースでも酢でもカレーでもためしたいものは何でもためし、いちばん自分にピンとくる味をつかまるまでそう時間はかからない。

魚との付き合いは
常識路線でOK

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魚とのつきあい方に関しては日本が世界一で、とりたてて外国から学ぶべきことはないと思う。

私の魚料理のレパートリーを指折り数えてみても、さしみ、塩焼き、煮つけ、照り焼き、天ぷら、酒蒸し、ちり、魚すき、それにちょっと西洋がかればフライかムニエル、中華風ならから揚げに甘酢あんかけ…ぐらいのもので、従来の日本の常識路線を出ることはめったにないし、それで満足なのだ。

一番好きな肉・魚を
恋人だと思ってみる

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いわし屋という初めから終わりまで徹底的にいわしばかりで飽きさせない料理屋があるが、私もいわしのスペシャリストにならなってもよいと思うくらいに、いわしが好きだ。

どういう性格の人間にはどう対処するかなんて心理学をいろんな例題を出されて総花的に習うより、一人の男メタメタにほれて彼の一挙一動に心をとぎすまし、彼をモノにするべく全力を傾けるほうが、ずっとよい人間勉強になるだろう。

料理もたぶん同じことである。肉でも魚でも特に好きなものを恋人にしてそれにふさわしそうなあらゆる料理を試みてみるとよい。ともかく、なにか一つ系統立った料理の木が根をなせば次々と枝が広がり、連鎖的にどんどん茂みが増して林になり、森になる。

※書籍からの引用にあたり、一部表記を編集しております。


聡明な女は料理がうまい
コンテンツ提供元:アノニマ・スタジオ

桐島洋子/Yoko Kirishima

文藝春秋に勤務の後、フリーのジャーナリストとして海外各地を放浪。70年に『渚と澪と舵』で作家デビュー。72年『淋しいアメリカ人』で第3回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。以来、メディアの第一線で活躍するかたわら、独身のままかれん、ノエル、ローランドの3姉弟を育て上げる。ベストセラーとなった『聡明な女は料理がうまい』や、女性の自立と成長を促した『女ざかり』シリーズをはじめ、育児論、女性論、旅行記などで人気を集めた。

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