ハチのいない食卓はこんなに粗末なものになる

一日30品目──、バランスのいい食事をとることで日々の健康づくりに役立てる。それは、バラエティに富んだ食材があって初めて成立するロジック。もし世の中の食材が、今よりもっともっと制限されたとしたら…。

こんな仮説が現実となるのかいなか、その境界線に「ハチ」の存在があります。減少を続ける世界のハチに、あるホテルが立ち向かう。まずは、「もしも」の世界を直感的に味わっていきましょう。

色のない食事は味気ない。
もしも、ホテルの食事がこんなだったら…

トーストの上から消えるマーガリン、グラノーラはずいぶんとボリュームダウンしたばかりか、ベリー類やアーモンドが姿を消しました。飲みものに関してはどちらも空。

同様にランチも、ディナーも、デザートも。じつはこれ、「ハチが世界からいなくなってしまった場合の食卓」を比較するためにつくられたもの。

ほんの一例ですが、世界で栽培されているブルーベリーのほとんどが、マルハナバチとミツバチによる受粉で成長するそう。オレンジも、ひまわり油も、コーヒー(一部は自家受粉もホテルで提供するものとなると)も、食料品がどれほどハチに依存しているかが分かります。

しかも、ハチがいなければ食べものの味さえ粗末になるんだとか。もちろん、こうした生産物が完全に消えて無くなるわけではないでしょう。だとしても、まず間違いなく価格は高騰、入手困難に。

世界から消失するミツバチに
企業努力で立ち向かうホテルがある

2006年ごろより報告され始めたという、ミツバチたちの原因不明の大量疾走、蜂群崩壊症候群(CCD)は現在にいたるまで、世界各地で報告され、その原因も一部を除いては特定されないまま。

このまま世界からハチがいなくなってしまったら、私たちの日常にどんな影響が出るのか?それをホテルで提供される食事でもって表現したのが、アメリカ、カナダを中心に世界展開するフェアモントホテル&リゾート(以下フェアモント)です。同ホテルはCSR(企業の社会的責任)がビジネススローガンとなるずっと前(約25年前)から、環境問題への取り組みにフォーカスしてきた企業なんだとか。

お客様はハチです。
一流ホテルの環境に対するホスピタリティ

過去数年間、個体数の減少を止められないままのハチに対し、いかに持続可能な方法で群生コロニー再建のためのアクションを起こせるかにある。フェアモントはそこに着目しました。

こうして2014年に建設を始めたのが、ハチのためのホテル「Bee Hotel(ビーホテル)」。ハチだって大切なお客様?ということなのでしょう、ホテルの屋上に巣箱を設置すると同時に、屋上庭園を増築、現在までに世界40カ国以上のホテルでビーホテルを“運営”を始めました。多くのハチがもたらすローカルハニーの採取という副産物まで手に入れることができたそうですよ。

ボストンの「Fairmont Copley Plaza」の屋上ハーブガーデン脇に設置された3つのビーホテル。中にはおよそ13万匹が暮らしている。

モントリオールの中心街に建つ「Fairmont The Queen Elizabeth」。こちらは隣接するシェフご自慢のオーガニックガーデンだけでなく、市内の庭園の受粉にも、ミツバチたちが一役買っている。

ハチの危機にホテルが立ち上がる。直接的な関係がなくても社会の問題に企業が動く典型的な例。現在、フェアモントは世界各地の団体と協力、パートナーシップを結び、さらなる保護活動に尽力していことを強調します。

以下の動画は、同ホテルのホスピタリティが、人間だけでなくハチにも傾けられていることが分かる内容に、ちょっと口角が上がってしまいました。

Licensed material used with permission by Fairmont
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。