外資系コンサルの仕事術。プロがアウトプットの際に行う「5つの儀式」

知的成果を生み出すには、「思考技術」のトレーニングではなく、具体的に手や足をどう動かすか? という「心得」のトレーニングが必要になってきます。ここでは「情報のアウトプット」について紹介します。

01.
メッセージを明確にするため
余計な情報をそぎ落とす

Drawing up a new strategy

アウトプットの心得としてみなさんにお伝えしておきたいのが「レス・イズ・モア=少ないほどいい」という価値観です。なぜこれをお伝えしたいか。一言で答えると「効率がいいから」です。

ビジネスにおける知的生産は最終的に「望ましい行動を起こさせること」を目的にしています。行動を起こさせるためにはメッセージが明快に伝わる必要があり、そのためには余計な情報をできる限りそぎ落とす必要があります。だから情報量は「Less is more=少ないほどいい」のです。

一般に日本のホワイトカラーは、資料に情報を詰め込みすぎる傾向があります。しかし、「情報の量とクオリティはむしろ逆相関する」という価値観を持っていてほしいと思います。

02.
ベクトルではなく、
具体的な到達点を伝える

We need weigh the opportunity cost of each venture

知的生産のアウトプットに際して「検討する」「推進する」「強化する」というような抽象行動用語は便利なため、つい使いがちですが、これらは具体的に何をするのかをイメージしにくくなる恐れがあります。これらの用語の使用を避けるには、「ベクトルではなく、到達点を伝える」ように意識するとよいでしょう。ベクトルだけで作られたアウトプットの典型例は次のようなものです。

「A事業を積極的に推進するに当たって、販売員採用をさらに加速し、販売力の強化を図ります」

この文章を到達点で書き換えるとこのようになります。

「A事業については売上高前年比120%を目指す。この目標を達成するに当たって、現在月3〜5名となっている販売員採用を一気に10名まで増やすとともに、販売トレーニングの時間を現在の年間8時間から32時間に増やす」

このようにアウトプットを「ベクトル」から「到達点」に変えることで、関係者にとって何をいつまでにどれくらい進めればいいのか、ということが明確になります。

03.
「論理」「倫理」「情理」の
バランスを取る

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アリストテレスは著書『弁論術』において、本当の意味で人を説得して行動を変えさせるためには「ロゴス」「エトス」「パトス」の三つが必要であると説いています。

「ロゴス」とはロジック=論理のことです。主張が理にかなっているというのは、人を説得する上で重要な要件です。ただし、論理で打ち負かしたとしても面従腹背するだけで、本当に人を動かすことはできません。

「エトス」はエシックス=倫理のことです。いくら理にかなっていても道徳的に正しいと思える営みでなくては人のエネルギーを引き出すことはできません。

「パトス」はパッション=情熱のことです。本人が思い入れを持って熱っぽく語ってはじめて人は共感します。坂本龍馬もキング牧師も、情熱を持って未来を語ったからこそ世界は今のように変わりました。

過剰に論理的思考の効用が喧伝されている現代の日本。「ロゴス」だけでなく「エトス」「パトス」が重要だというアリストテレスの指摘は、大いに意味があるでしょう。

04.
質問に答えてはいけない

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「質問に答えてはいけない」とアドバイスすると驚かれるかもしれませんが、筆者はそうアドバイスしています。理由は単純で、顧客が質問をするとき、それが本当の意味で質問であることはめったになく、質問という名を借りた反対意見や懸念の表明であることがほとんどだからです。

仮に完璧な知的生産物であれば顧客から出てくるのは感嘆と感謝の言葉だけのはずで、質問が出ているということは、知的生産物に欠陥があったということなのです。したがって、質問が出た際には、その背後にある真意、つまり「どのような欠陥を指摘しているのか」を汲み取る質問を逆にこちらがするべきです。

顧客:この期間でこれだけのサンプル数を処理するって、現実的に可能なんですか?
自分:情報も十分に集まっているし、時間的には問題ないと思いますが、何か懸念材料がありますか?

このように質問に質問で返すことで、より良質なインプットを得られるのです。

05.
アウトプットが出ないときは
インプットを見直す

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「アウトプットが出ないときは、基本的にインプットが足りない」ということを多くの人は見逃しがちです。

例えば、明日までに企画書を出さなければならないのに、なかなか企画書の作成が進まないとき、多くの人はパソコンを前にしてウンウンと唸り、「絞り出そう」とします。

しかし、これは間違いで、本当にやらなければならないのは「インプットをやり直す」ということなのです。いい知的アウトプットが出ないというのは間違いなく「量あるいは質の面で、正しいインプットができていない」からです。

アウトプットが出ないときこそ、インプットに再度目を向けて、「聞くべき人に話を聞いているか」「読むべき資料にちゃんと目を通しているか」という点をチェックしてみましょう。

外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」
コンテンツ提供元:光文社

山口周/Syu Yamaguchi

電通、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー等を経て、世界最大級の人事・経営コンサルティング会社であるヘイグループに参画。「人事制度の設計」「リーダーの育成」「組織のデザイン」の3つをテーマに活動している。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科前期博士課程修了。 『グーグルに勝つ広告モデル』、『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』(ともに光文社新書)など多数の著書をもつ。

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