手描きの「黒板アート」を美術教材に用いるこの先生は、いま世界で最も名の知れた高校教師かも

まだ卒業シーズンでもないのに「黒板アート」を話題にあげれば、当然季節外れな感は否めません。けれどその黒板アートで、このところアメリカのメディアを中心に話題騒然の日本人教師がいます。

絵画・デザインの魅力を 
「黒板アート」で伝える

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マッシュルームカットが印象的なTwitterアカウント@hamacreamこと「はまー先生」は、高校の美術教師で美術部の顧問も務める人物です。身なりも、写真からにじみ出る雰囲気もイマドキなこの先生を一躍有名にしたのは、授業で教材とともに使う黒板アート(本人から言わせると板書)。それもすべて自作のもの。

ある日、「魅力ある授業とはどんなものか?」を考えていたとき、この黒板アートを“板書(ばんしょ)”というカタチで取り入れることで生徒たちの美術への関心、興味の入り口になればと始めたんだそう。

この試みは大好評。黒板にチョークだけで本物そっくりに表現されていく、はまー先生の板書は評判を呼び、いつしか学校を飛び出し海外のメディアがこれを大きく取り上げるまでに。

まずは世界が目を丸くした、はまー流リアルな板書作品からどうぞ。

世界が仰天した
黒板の『ゲルニカ』

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例えば一番目の『ゲルニカ』。油彩の壁画は白チョークと黒板に置き換えられてはいるものの、モノクロームのキャンバスいっぱいにピカソの大作が再現されています。制作当時、生徒にあてたつもりのツイートに6,000を超えるリツイートが殺到しました。

ところが当の本人はというと…「凄いのはピカソという人物と、ゲルニカという作品と、リクエストしてくれた教え子です」と、いたって謙虚。いったいこの先生どんな人?Twitterのコメントだけでは人物像が見えてきません。ということで、はまー先生に直接いろいろ質問をしてみました。

生徒が下校した教室で
黙々と作業にあたる

 TABI LABO(以下TL):これらの板書、投稿された日付をよく見ればどれも深夜帯や始業前ですよね。ということは、放課後ひとりで描いている?

はまー先生(以下はまー):基本的には生徒が帰った後ですね。「そこまでしなくても…」なことなので、勤務時間外に制作に取り掛かるようにしています。ちなみにチョークも自腹ですよ(笑)。ただ、最近は美術部の活動も絡めながら、生徒たちとともに描く機会も増やすようにしています。

TL:制作時間はどのくらい?

はまー:ものにもよりますが、一晩、二晩といったところですね。学習の範囲はどんどん進んでいくし、黒板をずっと占領する訳にもいきません。できるだけ手短に書いて消すようにしています。

TL:こうした黒板アートは授業の一環だけですか?

はまー:普段はあくまで授業で用いる板書としての役割ですね。教科書や資料集と同じように名画やデザイン作品を取り上げ、授業の導入や展開の潤滑油的な役割をもたせています。『リトルマーメイド』や『君の名は。』など、卒業式や文化祭などの行事では、教え子からのリクエストに応えるものも。

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TL:これまでにも学生たちによる黒板アートが、世界のメディアに取り上げられ話題となってきました。先生は昨今の黒板アートのムーブメントについてどうお考えですか?

はまー:黒板アートという言葉が今ほど世の中に浸透していなかった頃から、各地の行事やイベントでは行われていたように思います。ただ、近ごろは気軽に高画質な写真を撮れる機器が充実し、SNSを使えばそれがまたたく間に拡散される。その影響は正直大きいと思います。

TL:多くのいいねやリツイートが付くたびに、先生は「注目されるべきはオリジナル作品」であったり「リクエストしてくれた教え子たち」なんて。謙虚すぎません?

はまー:私はMr.Childrenの桜井和寿さんの大ファンなんですが、桜井さんがBank Bandの櫻井和寿として他のミュージシャンの曲をカバーするとき、愛や敬意に満ちあふれていて…。自分もそのスタンスで模写したくて(笑)。

TL:作品へのリスペクトと教え子への愛情、ステキですね。では、そんな学生たちに先生の板書から、作品を描くことや芸術への可能性をどう広げていってほしいとお考えですか?

はまー:可能性について言えば、誰にでもあると考えています。この仕事をしていると「私、センスないから」とか「絵心ないんだよね」なんて諦めをよく耳にしますが、センスも絵心も生まれ持ったものじゃなく、知識からはじまるものだと思うんです。一つひとつ知識を積み重ねていけば、上達もするし広がってもいく。

TL:知識とは絵画や書き手のバックボーン?

はまー:そうだと思います。私の板書もそのひとつで、模写を通して学ぶことはとても大きい。ピカソやダヴィンチの筆跡をたどることで、自分自身が一番勉強になっているかも。模写のカギは「上手に描くこと」ではなく「しっかり見ること、感じること」だと思います。作者になったつもりで、しっかり目と心を使って。

教え子たちもスゴかった!

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2016年より開催された「日学・黒板アート甲子園」にて、はまー先生率いる美術部の生徒たち17人の作品が全国第2位(優秀賞)に選ばれました。授業も部活動も同じ教室で行っているというから、板書を目にする部員たちのイマジネーションもきっと広がったことでしょう。

魅力ある授業づくりから始まった美術教師による圧倒的な板書。「どれも教え子のため」と、書いては消すを繰り返してきた自らの作品を、最後まで“アート”と表現することはなかったはまー先生に、プロフェッショナルの一面を見た気がしました。

Licensed material used with permission by はまー
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