生誕50周年記念!合法的に「Hip Hop」を楽しむための3つの方法
1973年8⽉11⽇──。
NY州ブロンクス区で生まれたHip Hopというカルチャーは「National Hip Hop Celebration Day(ヒップホップ記念⽇)」として、上院により正式に定められた。そして今年は記念すべき50回目の記念日。
現代では幅広い世代が触れるメインストリームの音楽ジャンルとして確立されたHip Hopだが、「まだ50年なんだ!?」と驚く若者もいれば、「50年……感慨深いな」と当時を懐かしむバブル世代もいるだろう。
どんなジャンルであれ、50年も経てば変化は避けられないが、Hip Hopもその例外ではなく、様々な変遷を経てきた。それと共に変化してきたものがある。
それが「Hip Hopの聴き方」。
聴き方と言っても捉え方は人それぞれだが、当時では考えられなかった楽しみ方が現代では主流になっていたり、はたまた昔ながらの楽しみ方が意外と現代でも受け入れられたり。音楽を入手して楽しむまでのプロセスには、数多の選択肢が存在する。
そんななか、Hip Hopに触れる良い機会になるよう「聴き方のススメ」を、Z世代の筆者目線からいくつかご紹介しよう。
01.
CASEETTE(カセットテープ)
パンデミックによってレコードのリバイバルが起きているなか、近年盛り上がりを見せているのがカセットテープ。
1963年、カセットテープの登場はデモ音源やレコードのリリースすらできなかった無名のラッパーたちに、大きな希望を与えた。レコーディングからアートワーク、販売まですべて自分たちで行えるという手軽さは、Hip Hopという当時まだアンダーグラウンドであったカルチャーにとって、人々の手から手へと渡る重要な役割を果たした。
レジェンド的なHip HopアーティストであるGrandmaster Flash、Grand Wizard、Theodoreなどは、こうしてコストをかけずに有名になったそうだ。
カセットには、現代のようなクリアで洗練された音質を求めることはできないが、それでもこうして需要が高まるのは、レコードへの注目が高まっている理由と同じだろう。
02.
Vinyl(レコード)
1940年代後半、割れやすかったシェラック盤の後釜として普及し始めたレコードは、各国の音楽消費量をグンと急上昇させた。
レコードの最大の魅力は、なんと言っても「音楽を持つ」という満足感にある。
現代で重宝されるデジタルの手軽さに対し、音楽を聴くためにわざわざ手間をかけるという新鮮な感覚。そんな「面倒くささ」はどんな時代でも魅力や新鮮味へと変化し、私たちを音楽の世界に浸らせてくれる。
さておき、Hip Hopのレコードは大まかに、LPレコードと12インチレコードの2つに分類される。
2枚組仕様のアルバムタイプとして発売される収録時間長めなモノがLPレコード、片面1〜2曲程度を収録したシングルレコードが12インチコード、と覚えておけば大丈夫。
長い歴史をもつHip Hopのレコード文化には、もちろんレアなレコードも存在しており、特にオリジナル盤は高価な価値をもつ。当時最初に発売された初版という意味で、その後再発されたモノは復刻盤として捉えることができる。そのため、オリジナル盤には時を経ても変わらぬ高い価値があるのだ。
最初はジャケ買いしてみたり、インテリアとして買ってみても良いじゃないか。レコードは芸術作品としての側面も持っているから。針を上げ下げする面倒な手間は、いつしかあなたが音楽を楽しむための至高の時間になるかも。
03.
ストリーミング
レコードやカセットのコレクターでさえ、おそらく日常的に使っているのはストリーミングサービスだろう。
「Spotify」「Apple music」のようなストリーミングサービスの魅力は言わずもがな、保管場所の心配をせずに、ほぼ無限に好きな音楽を聴けるようになったのがこの時代。
ストリーミングの提供によって誰でも音楽を入手しやすくなったことに伴い、イヤフォンやヘッドフォン、スピーカーなどの音質環境も段違いにグレードアップした。
要するに、音楽を聴く人の数だけ音楽の楽しみ方が増えたってこと。
「Spotify 」によれば、2023年にもっともストリーミングされたジャンルはHip Hopで、ストリーミング量の全体の4分の1を占めていることを明らかにした。これまでに世界中で4億人以上のユーザーがHip Hopの楽曲をストリーミングしたとのことだが、その人数は今も増加の一途をたどっている。
瓦礫だらけの荒廃した街で生まれたHip Hopが、50年の時を経て世界でもっとも聴かれている音楽ジャンルへと成長した。これって、シンプルにすごいことなんじゃないか。
Hip Hopのスタイルやブームは、時代と共に変化してきたわけだが、現代では人々が自分の感情やセクシュアリティに対してオープンになり、そういうコミュニティから新たなサブジャンルも派生している。それは、Hip Hopの根底に「ストーリーテリング」の要素があるから。時代が変わっても、ラップが詩を詠むことに通じている部分は、なんら変わりはない。
今後、次の世代がどのようなHip Hopを生んでいくか、楽しみで仕方がない!