「探検をやめてはいけない」THE NORTH FACEの創業者が教えてくれたこと

2015年12月8日、La Nacionがダグラス・トンプキンズ(72歳)の死を報じた。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」の創業者として知られている人物だ。

チリ南部・ヘネラル・カレーラ湖でカヤックに乗っていたところ、強風を受け転覆。コジャイケの病院へ運ばれたが、重度の低体温症で帰らぬ人となった。パタゴニア地方は気候の変化が激しく、風が強いことで知られている。

同じカヤックには、彼の親友であり「パタゴニア」の創業者でもあるイヴォン・シュイナードを含む5人が同乗していた。幸いその他の人々は生存したが、あまりにも突然の訃報に世界中のアウトドアファンに衝撃が走った。

自然を愛する冒険家

North Face Co-Founder Doug Tompkins In Patagonia National Park

「ザ・ノース・フェイス」と「パタゴニア」の創業者のふたりは、かつて冒険を共にした親友同士だ。今となっては一般的だが、"自然を愛するアウトドアカルチャー"の哲学を世界中に広めたのは他でもない彼らである。少し、"ダグ"と呼ばれ親しまれた彼の過去について紹介したい。

The New York Timesには彼の生い立ちが書かれている。1943年にオハイオで生まれた彼は、12歳のときにニューヨーク・シャワンガンク・マウンテンズでロッククライミングを始めた。それからスキーや登山にのめり込んでいった。

17歳になると、彼は高校を卒業せずにコロラドへ向かった。スキーリゾート「アスペン」で働きながら、ヨーロッパに遠征するためのお金を貯めていた。その後はアンデス山脈で、資金が尽きるまでスキーに明け暮れたそうだ。

"Never Stop Exploring"
(探検をやめるな)

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1966年、ダグはスキーやバックパック用品を取り揃えた小さなお店をサンフランシスコにオープンした。"探検をやめるな"とスローガンを掲げた。「ザ・ノース・フェイス」だ。

The Atlanticには、オープン日のことが紹介されている。ボブ・ディランのポスターが貼られたお店で、グレイトフル・デッドが演奏していた。

その後、1968年には同社を売却。妻と衣料ブランド、エスプリ・ホールディングスを共同創設し、1980年には60カ国で衣料品を販売する人気ブランドに成長。売上は年間数十億ドルにも及んだ。が、エスプリも1989年には売却した。

その頃、彼はファッション産業が生み出す環境への悪影響に対して幻滅していた。The AtlanticLaterceraに彼の発言が掲載されている。

「必要ないものを人々に売るのはやめる。第二次世界大戦中は、人々のクローゼットの中にコートは1着しかなかった。今は10着ある。もうこの業界に意味はない」

ダグは、それまでに得た私財を自然に還元する道を選んだ。チリやアルゼンチンに広大な土地を取得し、環境保護活動に傾倒。「この惑星に住むための家賃を払う」とビジネス界を去った。Douglas Tompkins: A Force for Natureに掲載されている。

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National Geographicには、彼のことをよく知る登山家ジミー・チンの言葉が紹介されている。

「ダグは常に先頭を切る人でした。格好よくて強烈。また、とてもきちんとしていましたね。上品でいて、それでいてミニマリストとしてのスタイルがにじみ出ていました」

彼には先見の明があったそうだ。きちんとした訓練を受けていないにも関わらず、機能的かつスタイリッシュなデザインを生み出す不思議なテクニックを持っていた。イヴォンもジミーもその感性に惹かれた人間のひとりだった。

Mount Fitz Roy, Los Glaciares National Park, Patagonia, Argentin

1968年、パタゴニアエリアの自然が大好きだったダグは、イヴォンと一緒にドキュメンタリームービー『Fun Hog』を制作した。伝説の冒険映画とも言われている。

カリフォルニア州・ベンチュラから南米・ティエル・デル・フエゴまで数人の友人とともにバンを走らせ、サーフィン、スキー、登山をしながら16mmカメラで旅の様子を記録した。イヴォンはダグのアイデアに魅せられて参加したが、この旅をきっかけに人生が変わった。

彼らは、その旅の途中で当時まだ2度しか達成されていなかったフィッツロイの登頂にも成功。そこは「パタゴニア」のブランドロゴにも使用されている場所だ。

映画『180° South』は、その伝説をある若者とともに追体験したリメイク版。ここに登場するジェフという若者に、ダグもイヴォンも昔の自分の姿を感じたという。

エスプリホールディングスを売却後、彼はチリ南部へと移住した。「直感でやりたいことをやっているだけ」だそうだが、現地の人々から反感を買いながらも広大な土地を購入し、政府の協力を得て国立公園の拡大や農地改善などに尽力した。

事故が起きる直前の11月、インタビューに答えた彼の言葉がEl PAISに掲載されている。死についてどう思うか?という質問だったそうだ。

「恐怖はない。そんなことは考えないよ。だけど、以前より体内時計には気を使うようになったね。チックタックチックタック」

Top Photo by James Q Martin/Getty Images News/Getty Images

Reference:La Nacion,The New York Times,The Atlantic,The Atlantic,Latercera,Douglas Tompkins: A Force for Nature,National Geographic,The Wall Street Journal,Woodshed Films.El PAIS

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