【フェムテックとは?】私たちの生活を良くしてくれる新常識

生理中の不快感、妊娠中の体の変化、更年期の不調……。
さも当たり前のように受け入れているけれど、「もっとラクだったらいいのにな」「どうにかならないかな」と思うことってありませんか?

自分の体や健康について、声にこそ出さないものの心の中で密かに抱えている悩みやモヤモヤって、きっと誰にでもあるんじゃないでしょうか。

この記事では、昨今目耳にすることが増えた「フェムテック」について概論的に紹介します。フェムテックの言葉の意味、盛り上がりの背景、どんなサービスがあるのか?など、初級編としてまとめています。

フェムテックとは?

©iStock.com/AleksandarNakic

FemTech(フェムテック)とは、女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスやアイテムのこと。Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせて造られた言葉です。

フェムテックがカバーするおもな健康課題としては、月経にまつわる身体的・精神的悩みや妊娠・出産・育児にまつわる悩み、更年期に関する悩みがあげられます。ほかにも、生活習慣に関する不安や漠然とした悩みなど、多岐にわたります。

フェムテックとフェムケア

フェムテックと似た言葉に「フェムケア」があります。
フェムケアは、フェムテックと同様、女性の健康課題や悩みを解決するプロダクトや製品を指していますが、デジタルなテクノロジーは使われていないものの総称です。吸水ショーツなどの月経関連アイテムはフェムケアにあたります。

フェムテックとフェムケアの目的が同じことから、一括りにされることも多いようですが、改めて以下に定義をまとめておきます。

FemTech(フェムテック)
女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスやアイテムの総称

FemCare(フェムケア)
女性の身体や健康に関する悩みをケアするアイテムの総称

フェムテック市場が
なぜこんなにも盛り上がっているのか

©iStock.com/LordHenriVoton

2020年はフェムテック元年といわれ、フェムテック企業が増えたり大手企業が市場に参入したりと、フェムテック市場が急拡大しました。

ではなぜ、“今”なのでしょうか?
当たり前ですが、女性の体の悩みは今急に出現したわけではなく、ずっと昔からあったはずですよね。

理由①:女性が声をあげるようになってきたから

1つ目は、国内外問わず女性のエンパワーメントを推進する動きがあるなかで、女性が声をあげやすくなってきたというのがあります。

時代の風潮やSNSの普及により、これまでは当たり前として我慢してきた不調やタブー視されていた悩みを発信しやすくなったと考えられます。さらに、「#Me Too運動」も後押しとなり、女性が抱えている悩みが徐々に世に出てきたというわけです。

「#Me Too運動」とは?
2017年、著名人の告白を皮切りに、たくさんの人が「#metoo」のハッシュタグをつけて性的被害を訴えた動き。性的被害者がいかに多く、大きな問題であるかということを世に知らしめる結果となり、これまでは沈黙するしかなかったことを公表していくことで世の中を変えていこうという動きの大きな一歩となった。

理由②:女性起業家が増えてきたから

2つ目は、女性の社会進出が少しずつ進み、女性起業家が増えてきたことも関係しています。

フェムテックで解決しようとする分野は、なかなか周りの理解を得ることが難しい分野です。女性の体の悩みは男性にはイメージしにくかったり、一見同じようなことで苦しんでいるように見える人たちも一人ひとり悩み深度が違ったりなど、「伝わらないこと」が事業推進の妨げになっているケースもあるでしょう。

女性の社会進出に伴い女性起業家や女性管理職が増えてきたことで、より当事者意識を持ってフェムテック分野に挑戦しようとする人の数も増え、フェムテック市場を牽引しているのです。

サービス、アイテムはどんなものがある?

©iStock.com/AleksandarNakic

「女性の健康課題」と一口にいっても様々。冒頭であげた生理や妊娠、更年期の悩み以外にも、フェムテックがカバーする領域はたくさんあります。

どんなものがあるのか、以下で具体的なサービス名とともにカテゴリーを紹介します。

月経

生理痛や不快感、「もうすぐ生理がくるんじゃないか」というなんとなくの緊張感……。月に一度訪れる月経といかにうまく付き合うか、ここで一役買ってくれるのがフェムテックです。

2000年にスタートした「ルナルナ」は、日本フェムテック界のパイオニア。生理日や排卵日を予測してくれ、体のリズムを把握することができます。

「スマルナ」は、オンラインで診察を受けられ自宅にピルが届くサービス。ほかにも、月経カップや吸水ショーツといった生理の不快感を軽減するためのアイテムが、複数ブランドから登場しています。

ヘルスケア全般

ホルモンバランスの乱れによる不調や慢性的な疲労感などは、一人で抱えてしまいがちでツラいもの。「病院へ行くまで大げさにはしたくないけれど」という原因不明の体調不良やどこに相談したらいいか迷うようなヘルスケアの悩みってありますよね。

「わたし漢方」は、体質や症状の悩みを薬剤師にLINEで相談でき、自分に合った漢方薬を届けてもらえるサービス。

生理や更年期、妊娠・育児などの婦人科領域に特化したメディア「ランドリーボックス」では、人には相談しづらい悩みに特化したコンテンツを読むことができます。

妊娠・産後ケア

同じ境遇の人にしか相談できなかったり、頼れる人がいなかったりで何かと不安定になりやすい妊娠中や産後。

「じょさんしONLINE」「産婦人科オンライン」は、妊娠中の不安や産後の孤独、心身のことなどを専門家に相談できるサービスです。専門家に相談することで安心感を得られるのはもちろん、誰に相談したらいいか分からない悩みに耳を傾けてくれる人がいるというだけでも心強いですね。

不妊・妊孕(にんよう)性

不妊の悩みや妊活などのデリケートなテーマに関して、一人でモヤモヤを溜め込んでしまうこともあると思います。

身体的にも精神的にも負担が大きい妊活中の女性を応援すべくつくられたのが、妊活者専用SNS「妊活ボイス」です。自分と似た人と繋がり、情報交換をすることができます。

「ファミワン」は、妊活の専門家がLINEで相談にのってくれるサービス。アドバイスをもらえたり、病院選びの相談も可能です。

ほかにも「シーム」は、キットを購入して精子の状態を自宅でチェックすることができるサービス。男性が精子の状態を調べることは、妊活における女性の負担の軽減につながる可能性があることから、「シーム」もフェムテックの一員といえるでしょう。

更年期

頭痛やめまい、イライラなどの更年期症状とどう向き合うか、更年期をどう過ごすかといったこともフェムテックで対策できる日がくるかもしれません。

「TRULY(トゥルーリー)」は、女性ホルモンの変化による心と体の悩みに応えてくれるオンライン相談サービス。匿名で相談でき、女性医師が対応してくれるので、病院で直接相談しにくいような悩みを気軽に相談しやすいですね。

また、「エクオール検査 ソイチェック」は、女性の健康に関わるホルモンに似た成分を体内でつくれているかどうかを検査でき、結果が届くサービスです。自分の体のことを把握できると、生活習慣を見直すなどの対策を早めにとることができます。

セクシャルウェルネス

セクシャルウェルネスはざっくりいうと、性の健康。セックスやセルフプレジャー、デリケートゾーンや膣ケアのこと、このあたりがセクシャルウェルネスカテゴリーに含まれ、女性が健やかでより豊かな人生を送るうえでとても大事なことなのです。

「LOVE PIECE CLUB」は、1996年にスタートしたセックストイグッズストア。女性だけで運営されており、世界中から厳選された女性目線のトーイを購入することができます。

海外事例

日本では2020年ごろから広がりを見せているフェムテックですが、海外、とくに市場をリードしている欧米では2000年ごろから市場が拡大してきています。

以下では、海外スタートアップの事例を一部紹介します。

● Cora(コラ)/ 生理用品のサブスクリプションサービス
生理期間や経血量に合わせて、毎月生理用品を届けてくれるサービス。“いわゆる生理用品”のパッケージではなく、スタイリッシュなデザインにこだわってつくられているのも特徴です。

● Elvie(エルビー)/ 骨盤底筋トレーニングデバイス
内臓を支えたり膀胱を締める働きがある骨盤底筋を鍛えるトレーニングアイテム。膣内に挿入しアプリと連動させることで、ゲーム感覚で膣トレをすることができます。

● Willow(ウィロー)/ ウェアラブル搾乳器
ブラジャーの中に入れて使える、コードレス、ボトルレスのウェアラブル搾乳器。搾乳にかかる時間や場所を気にせずに使用することができ、母乳育児の負担をぐっと減らすことが可能です。

【まとめ】フェムテックに期待できること

©iStock.com/AleksandarNakic

これまでタブー視されてきた体のことや性のこと。
個人で何とかしないといけなかったり耐えしのぐことしかできなかった悩みや不調が、フェムテックの広がりによって「課題」として議論される機会も増えるのではないでしょうか。

フェムテックのサービスやアイテムが多くの人の目に触れることで、一人ひとりがもっと声をあげやすい世界になるのかもしれません。そして、まだまだ世に出てきていない課題も表に出てきやすくなるでしょう。

フェムテックの盛り上がりをきっかけに、「一人で抱えるのではなく、周りと共有する」文化が、もっともっと当たり前になりますように。

Top image: © iStock.com/AleksandarNakic
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。