毛色、瞳、遺伝子。この猫には、「たくさんの謎」が隠されている。
「キメラ」という生き物について聞いたことがあるだろうか。ギリシャ神話に出てくる生き物で、獅子の頭、ヤギの体、蛇の尻尾を持つ架空の怪物。
本来生き物は、みんな自分だけの1種類の遺伝子セットを持っていて、ひとつの体は全て同じ遺伝子セットでできている。でもたまに、ひとつの個体が「ふたりぶん」、つまり2セットの遺伝子を持って生まれることがある。ざっくり言ってしまえば、これを「キメラ遺伝子」というのだ。猫のキメラ遺伝子はそれほど珍しいものではないそうだけれど、それでも彼女ほど見事な見た目は、科学者も驚く稀有な存在。
謎多きネコ
「ヴィーナス」ちゃん
これが世間を騒がせている噂の猫ちゃん。美の女神「ヴィーナス」の名を持つだけあって、あまりにも美しい印象的な容貌をしている。それぞれ色が渦巻いて、宝石のように透き通る瞳。左右で全く違う個体かのような表情、そしてそれが反転し、混ざり合った色合いの胴体。自然が生んだこの驚くべきルックスに、生命の神秘を感じてしまう人も多いだろう。
まさしく「異なる個体」が混ざり合ったかのようなその見た目が、「キメラ猫」として話題なのだ。
とはいえ、キメラを思わせる容貌だからと言って、実は彼女が本当に「キメラ遺伝子」を持つのかは未だ謎に包まれている。
オス猫の場合は、赤系と黒の毛が混じり合うトータシェル(サビ猫)のほとんどはキメラ遺伝子を含む染色体異常だそうなのだが、メス猫の場合はキメラ遺伝子を持たなくとも、染色体の関係からこの色合いになりうるのだそう。
本当の「不思議」は、瞳にある
でも実は、ヴィーナスちゃんがただの「珍しい模様」ではないとされる理由は、その瞳にある。オッドアイだというだけではない。猫の瞳は黄色や緑が多く、青の瞳は白い毛の多い猫でないと、めったに持って生まれてこないのだ。
胸元のほんのひとつかみの毛だけが白いこの猫では、青い瞳が出現する理由にはならないと専門家は言う。彼女の存在は、研究者から見ても、それ自体がちょっとした「謎」なんだとか。
本物のキメラ遺伝子なのか?それともただの偶然か?この瞳の色はなぜ出たのか?
これらの謎は本当のところ、きちんと皮膚の組織を取って、遺伝子検査をするまで分からない。もしもキメラ遺伝子の持ち主なら、顔の黒い部分と赤茶の部分で、異なる遺伝子が出るはず。彼女のヒミツが解明される日が楽しみだ。
ちなみにInstagramでは、飼い主に抱かれたり、寝たりひっくり返ったりと、より「猫らしい」のびのびとした姿を楽しむことができる。