「気持ちいい」ことをしていたい。清水文太が語る「僕たちの生き方」

MCとゲストが、焚き火を囲んで語り合う新しい形のトーク番組『TAKI BITO』。3月28日(水)に放送される第4回のゲストは、スタイリストやモデルとして活躍している清水文太さん。ユニークで印象的なファッションセンスに国内外を問わず注目が集まっている清水さんですが、実はまだ弱冠20歳。

今回のキャスティングは、そんな清水さんの活動をひそかに追い続けていたという『TAKI BITO』MC・久志尚太郎の願いで実現しました。はじめましてのふたりは、自己紹介もかねて撮影前に少し話をしてみることに。お互いの生き方について素直に語り合ったところ、たくさんの共通点が見つかったようです。

「何やってる人?」って聞かないで

 

久志:清水さんは、スタイリストとかモデルとか、いろんなことをやってるけど、自分のことを説明するとき、何やってる人だって言ってるの?

清水:うーん、何でも屋さんって言うかな。その質問、答えられないんですよ。強いて言うなら「やりたいことやってる」かな。

久志:「やりたいことやってる」っていいね。

清水:ひとつに決めちゃうと、それに固執することになっちゃう気がする。それも「職人」って感じでいいと思うんだけど、僕は違うかなって。10年後、20年後って、絶対やりたいことが変わってるから、自分で自分の首を絞めたくないんですよね。「若手スタイリスト」って紹介されることもあるんだけど、キャッチーに語られることはあんまり好きじゃなくて。だって10年後には農家をやってるかもしれないし、水族館で働いてるかもしれない。

久志:わかる。やりたかったらやればいいもんね。僕も20代のとき、ふと思い立って田舎で塩を作ったり、野菜を作ったりしていた時期があったんだけど、すごく勉強になったな。

清水:今やってることは、きっと10年後に活きてくると思う。僕はずっとファッションが好きだけど、アルバイトはぜんぜん違うことをやってきて。八百屋さんとか、児童館のスタッフとか、たいやき屋さんとか。

久志:よくさ、世の中の人に「なぜそれをやるんですか?」って聞かれるでしょ。僕も清水さんみたいに、いろんな職業に就いてきたけど「なぜ?」って聞かれてもわかんないんだよね。楽しくてわくわくするからやってるだけで。清水さんにもその感覚と通ずるものがあるんじゃないかな。

清水:みんなきっと理由が知りたいんですよね。なんでそんなにコロコロ職業を変えるの?って。一般的な人には理解できない範疇だから。でも僕は「聞かないで待ってて。そのうちわかるから」って思ってる。

「やわらかい世界」に生きていたい

 

久志:清水さんはファッションの仕事をしてるけど、実は僕も17歳くらいのとき、古着の仕事をしてたんだよね。そのころアメリカに住んでたんだけど、バスで国中をまわって古着を売ったり買ったりしてた。だから今、日本で古着シーンが盛り上がってる気がしてうれしいんだよね。清水さんは、今、日本のファッションってどうなってきてると思う?

清水:ルールがなくなってきたと思う。たとえば、「スケーター系のファッションといえばVANS」っていう「型」みたいなものがなくなってきた。

久志:なるほどね。しかも、ファッションだけじゃなく、いろんなことがルールをなくす方向にいってる気がする。清水さんは、なにがきっかけだと思う?

清水:社会が変わってきたんじゃないかな。マイノリティに対する理解も少しずつ進んできてるし。ファッションのことで言うと、それぞれに当てはめられた「用途」が意味を持たなくなってるんだと思う。だから、ユニフォームみたいなものもなくなってきてる。

久志:僕も「『型』がなくなる」って感覚はすごく理解できて。ちょっと前までは誰かが作ったスタイルが絶対だったけど、今はそれがない。「『マス(mass)』か『オルタナティブ(alternative)』」か、だったのが、今は小さな選択肢がたくさんあるっていう感じの時代。

清水:たしかに。でも僕はまだまだもっと「やわらかく」なっていってほしいと思う。LGBTのことも、メディアで取り上げられるのはドラァグクイーンとかいわゆる「オネエ」の人ばっかりだけど、本当はそれだけじゃなくて。そもそも、人それぞれ細かい違いがあるから、カテゴリーででくくれるものじゃない。

そこがもっと「やわらかく」なったらおもしろい世の中になると思うんだけど。僕のファッションを嫌いって感じる人もいるし。生理的に苦手なものってみんな絶対あるから。でもそれを否定するんじゃなくて認め合うっていうのが「やわらかさ」。お互いの違うところを、暴力じゃなくてコミュニケーションで埋めていければいいのになって。

久志:「やわらかい」って表現、すごくいいね。60年代から70年代にかけて、ロックやパンクが生まれたときって、社会に対するアンチテーゼがすごく暴力的だった。今も芯の部分は変わらないけど、あんなに激しいことはなかなかやらない。それは強いとか弱いとかじゃなくて「やわらかくなってきてる」ってことなんだよね。

清水:これからもっと「やわらかい」世界になれば、すごく気楽に生きられるなって思う。だから、多様性が認められるように社会に働きかけることもしていきたい。結局それが、自分の幸せにつながっていくはずだから。

人間は「気持ちいい」ことだけ
やってればいいと思う

 

久志:僕、最近、人間は「気持ちいい」ことだけやってればいいんじゃないかと思うの。でも、僕たちみたいな見た目で「気持ちいいことだけしよう」って言うと、何事も適当にやってるだけって思われがちで。

勘違いしないでほしいのは、仕事のアウトプットには徹底的にこだわるっていうこと。「時間通りに出社する」とか「毎日ヒゲを剃る」とか「上司の言うことを聞く」とか、そういうのを「気持ち悪い」って思うからやらないだけ。そういうことができるからって優秀とも限らないしね。

清水:その感覚はわかります。僕は「気持ちいい」ことをしていたい。我慢することが得意じゃないっていうのもあるけど。メンタリティってアウトプットにめちゃくちゃ影響するから、自分が「気持ち悪い」と思うことはやらない方がいいと思う。

長時間働いた人がえらいわけじゃないし、「遅刻した」とか「上司に怒られた」とか、一般的にダメだって言われちゃうことも、何かしら理由があるならべつにいいと思う。自分のキャパシティのなかで、いかに結果を出せるかっていうことが大切。

久志:あと、たとえ「気持ち悪い」ことがわかっても、自分の「気持ちいい」ことが何かわからないっていう人、意外と多いんじゃないかと思うのね。そういう人には「“オナニー(マスターベーションの意)”するのが大切だよ」って言いたい。“オナニー”って自己満足っていう否定的な意味で言われちゃうこともあるけど、それって悪いことじゃない。

自分で自分の「気持ちいい」ところを探ることで、それを人に伝えたり、一緒に気持ちよくなったりできる。なんか「気持ちいいかも」って思うことがあったら、もうちょっといじってみる。それでオーガズムに達すれば最高だし、結果的に痛かったとしても、べつにいいじゃん。自分を知るには“オナニー”するのが一番。ただ、それが人に受け入れられる、誰にとっても気持ちいいことか?っていうのはまったく別物だけどね。

清水:それってすごいわかりやすいたとえかも。でも、それってなかなか気付けないですよね。そもそも、“オナニー”のやり方自体知らないとか、どこでやればいいのかわからないとか。そういう人に“オナニー”について伝えられるような活動もやっていきたいかも。

ひとつのコミュニティに
閉じこもりたくない

 

久志:清水さんは、仕事をするうえで何か心がけていることはある?

清水:「我慢しない」っていうのが一番。だから、自分の意志はちゃんと伝えるようにしています。たとえば雑誌のスタイリングとかで、編集さんがちょっと順番を変えるだけでも、嫌だって思ったら絶対に直してもらう。我慢してストレスがたまると、結局アウトプットに響いちゃうから。それと、仕事は大好きだけど働きすぎないようにしています。一気に働いて、一気に休むとか。休みの日は山登りに行ったり、畑で農業したり。

久志:働くのが苦痛になったらダメだよね。

清水:生きるために働いていますからね。ただ僕は、仕事とプライベートはしっかり切り離して考える方。休日は仕事関係の人とは会わないし。

久志:僕は普段から、同じ業界の人と絡まないようにしてる。自分と似てる人と一緒にいると、安心するけど、世界が閉じていっちゃう感じがして。僕は知らない世界をどんどん広げていきたい感覚が強いかな。

清水:コミュニティは常に広げていきたいですよね。僕、もともと学校っていう場所が得意じゃなくて。すごく小さくて閉じられたコミュニティじゃないですか。ファッション“業界”も、僕にとっては学校とか会社みたいなもの。僕が好きなのはファッションであって、ファッション“業界”じゃないから、そこにとどまる必要はないなって。

僕の一番のクライアントは水曜日のカンパネラのコムアイさんなんだけど、彼女が大御所の歌手の方を紹介してくれて。その方の船に乗せてもらったんですよ。そういう出会いがあるから、コミュニティは絶対に閉じたくないんです。だから、SNSってコミュニティを広げるにはすごくいいツールだと思う。僕がファッションの仕事を始められたのも、Instagramがきっかけだったから。

久志:清水さんはSNSを駆使して、いろんな人とつながって世界を広げていくっていうデジタルなこともやるし、一方で山に登ったり、畑に行ったりっていうリアルなこともやっている。その融合している感じがすごくいいなって思った。次は、いまの話も含めて、焚き火を囲みながらもう少し掘り下げて話していきたいね。

清水:ぜひ、よろしくお願いします。

共通点の多かったふたり。
どんな焚き火トークが展開される?

 

「やりたいことをやりたい」「コミュニティを閉じたくない」と生き方に共感し合える部分が多かった清水さんと久志。そんなふたりに小橋賢児さんと高山都さんが加わって、どんなトークが展開されるのか。3月28日(水)放送の『TAKI BITO』をお楽しみに!

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。