世界を変えるのは、ヒーローじゃなく自分たちだ。「TAKI BITO」レポートvol.4

MCとゲストが、焚き火を囲んで語り合う新しい形のトーク番組『TAKI BITO』。「人生の種火 = 転機や大きなきっかけ」について、事前台本一切なしの等身大でリアルなトークを展開します。

MCを務めるのは、ULTRA JAPANのクリエイティブディレクターである小橋賢児さん、女優やモデルとして活躍する高山都さん、そしてTABI LABOの代表である久志尚太郎の3人。

第4回は、前回に引き続きチームラボ代表の猪子寿之さんと一緒に焚き火を囲みました。

食べ物の生命を感じる「猪子鍋」

久志 今日はめちゃくちゃ楽しい。

小橋 昔、俳優のとき、自分からも世間からも「あれ言っちゃいけない」「これ言っちゃいけない」って、窮屈な自分を作り上げてて。海外に行ったとき、いろんな人やいろんな文化に触れて……。

こんな世界もあるんだ。夕日を見てキレイだと思うこと、星を見て感動することも忘れてたんじゃないかって。日本に戻ってきたら、すごく窮屈だなって感じちゃった。だから僕にとって、猪子さんみたいに海外に羽ばたいて、ちゃんと自分の意志を持って発言してる人って、めちゃくちゃ気持ちいいなって思ってて。

猪子 ほんとですか?

小橋 今後アートとかインターネットが有効活用されていったら、そういう(猪子さんのような人が増える)きっかけにもなる。

久志 (奥にある鍋を見て)めっちゃ気になってて。ついつい、しゃべりがちだけど。

高山 ちらちら見えて、においもしてて。何準備してきたの?

猪子 僕、変わってて。ちょっと。

高山 もう知ってます(笑)。

猪子 月の半分くらい海外行ってて、半分くらい東京にいるんだけど、東京いるときは99%くらい、まったく同じ鍋を食べてるの。

久志 朝?夜?

猪子 夜。昼はね、オフィスでお弁当食べてるんだけど。

小橋 これね、噂の「猪子鍋」。突然呼ばれて「猪子鍋」を食べさせられるっていう。

猪子 夜中くらいまでオフィスにいるときはオフィスで、明け方になってくると自宅で打ち合わせをするんだけど。被害をこうむった方々が被害届をたまに(笑)。「猪子鍋」が出てたよって。相変わらず同じ鍋食べてたよアイツ、みたいな(笑)。

高山 何が入ってるの?何がベース?

小橋 せっかくだから知りたい。

猪子 そういう表面的なこと聞いてくる?

高山 違う、違う(笑)。

猪子 表面的な世界でいるから(そういうこと聞いてくるんだ)(笑)。

高山 じゃあ、食べさせて!早く!

猪子 これ、どうしたらいいんだっけ?シンちゃんがやるっていうほうがスムーズだからシンちゃんがやろ?いつもね、夜中ね、シンちゃんが……だめ?いい? 

久志 シンちゃんさんは?

猪子 シンちゃんは、一緒にチームラボ作ったパートナーの弟。

久志 (笑)。

小橋 パートナーの弟なんですか?チームラボの方ではなく?

猪子 シンちゃんも、チームラボのメンバー。シンちゃんが振る舞おう。

高山 それ「猪子鍋」じゃなくなっちゃう……。

小橋 いやまあでも、レシピはね。

久志 ちょっと、ちょっと!シンちゃん、トマトまるごと入れてる!

猪子 シンちゃん、宗教上まるごと入れなくちゃいけない。

高山 何の宗教?

猪子 だから「猪子教」(笑)。これ話すと長くなるんだけど……。大学時代、初めて海外行ったとき。ちょっと醤油とか恋しくなるじゃん?中毒っぽくなるじゃん?これは一体なんだろうって思い始めたの。

でも、タイとか行くと恋しくならない。つまり、別に具体的な醤油じゃなくて、うまみ成分の中毒になってるんだと。うまみ成分とはなんだろうって思ったの大学時代に。

それで、うまみってなんで、あんまり役に立たないようなものに取り憑かれてんだろうって思って。全然わかんないから、知りたいなって思って。それじゃあ、知るために毎日鍋を作ろうって思って。

一同 (笑)。

小橋 その実践力がすごいですね。

久志 そこからずっと作ってるんだ。

小橋 ピュアな男だよ、ほんとに。

高山 ピュアすぎる……。実証はしたんですか?なぜ、取り憑かれてるのか。

猪子 今日現在の回答は……。

小橋 変わってくからね。

猪子 (シンちゃんに)食べれるの?

小橋 猪子さんが作りながらやってたら、全然会話にならなかっただろうね(笑)。

猪子 それで、今日現在の回答ね。うまみがあるっていうのは、すごく語弊があるけど、大雑把に言うと「加熱」「まぜる」「発酵」の3種類。

加熱するとうまみがある。あと、まぜるっていうのもうまみがあるの。たとえば、お味噌汁とかもかつお出汁だけだとおいしくなくて。かつおと昆布ではじめておいしくなる。あとは、発酵する。

高山 味噌も発酵ですよね。醤油もそう。

猪子 大豆とかそのまま食べても、けっこうハードコアな食物でしょ?でも、納豆になるとおいしいじゃん。味噌になったりするとおいしい。 

高山 漬物もそう。

猪子 そうそう。白菜そのまま食べてもね。けっこうハードコア。

高山 パリパリするし。

猪子 そうそう。鍋を作るということで、加熱してまぜて、発酵するとうまみが増すんだよね。

あるとき、人類学者が論文出していて。それを読んでると、人類が人類になる前って、生で食べてた。料理をしなかったそのときは、生物っていうのは生で食べると、すっごい消化エネルギーがかかる。だから牛とかってずっともぐもぐしてるでしょ?1日中。ライオンも食ったあと、バタンって寝るじゃん。すっごいエネルギーがかかるから。(かつては人間も)獲物を獲得する時間と、消化する時間で1日終わってたの。

それが料理をするようになってから、消化効率がすごくよくなって。実際、脳にエネルギー使えるようになったり。消化してない、余裕のある時間ができた。つまり、遊びの時間が生まれて。脳にもすごいエネルギーを使えるようになった。人間はうまみ中毒だったがゆえに、料理をせざるを得なくなって。料理をせざるを得なくなったから、人間は人間になった。

つまり、うまみ中毒になったおかげで人間は人間になっていったんだろうなっていうのが、今日現在の回答。うまみって一見役に立たないんだけど。だって料理ってすっごいめんどくさいでしょ。

久志 でも、脳をブーストさせてるのは料理なわけですよね。それで言うと。

猪子 中毒がゆえにせざるを得なくなって。めんどくさいでしょ?でもめんどくさいことをすることによって、全体の効率がよくなって脳にエネルギーが使えて遊びの時間が生まれて。人間が人間らしくなった。現代の人間になれた。

そうこうしてるうちに、まぜるほうに興味が移っていって。まぜるだけで料理はおいしくなるじゃない?これ(猪子鍋)は加工されたものが一切入ってなくて。出汁の素とか鶏ガラの素みたいな。醤油とか味噌とかも含めて。

高山 お塩とかも入ってないの?

猪子 お塩だけは、あとで入れてもらえれば。

久志 そういうことなんだ。

猪子 お塩がないと無理だからね、人は。さらに、やっぱ切っちゃいけないなって思いはじめて。

高山 だからまるごとだったんだ。え?湯むきするとかじゃなくて?

猪子 そういうのだめ、もう。鍋に物理的に入らないときだけ、切っていいルールになってる。

高山 やっぱ「猪子教」すごいな……。

猪子 生命を直接入れていったほうがいいなって。

小橋 それ、ひとりのときでもずっと食べてるんですか?

猪子 はい。なんか問題あります?

小橋 いや……。

猪子 食いもんは全部、生命だなって思いながら食えるからいいなって。

高山 うん、うん、うん……。いただきますの精神。

久志 (笑)。いいっすね。

猪子 忘れちゃうから。食べ物が全部生命だって。コンビニで買ったものとか食べてると、忘れちゃう。スナック菓子とか食べてると、これもすっごい元を辿れば生命だって忘れちゃうから。ああ、もう、生命いいいいいいい!って言って。

高山 だからトマトもまるごとなんですよね。切っちゃいけない。

猪子 切っちゃいけないんですよ。(でも)普通のものなの。肉のハナマサで買ってきたの。

高山 材料はべつに、◯◯産とかではなく、作り方が大切?

久志 生命の話と肉のハナマサのギャップ(笑)。

猪子 普段は通販とかで自然栽培のものを買ったりしてるんだけど、それ持ってくると素材がいいんでしょ?ってなっちゃう。僕は素材信仰に反対してて、淡路のアジとかいうんじゃなく。お店行くとそういうのはね、有限なものを奪い合うモデルだからすごくよくないなって。人類によくないなって。だから肉のハナマサがいいなって。今日はね。

高山 じゃあ、調味料はお塩だけ?

猪子 そうやって言うとあまりにも宗教じみてるから、めんつゆ入れて食べてるけどね。

一同 (爆笑)。

猪子 どっちでもいいよ。めんつゆで食べると、確実においしい。宗教的に言うと、お塩だけ。どっちにしますか?

高山 とりあえずお塩でいただいて。ちょっと落としどころがよくわからない……(笑)。

猪子 来客した方には押し付けられないんで、めんつゆ入れてるんですけど。(塩も)大抵、おいしいとこ行くと岩の……。

高山 岩塩?

猪子 岩塩でしょ?だめだめ。男はやっぱ、海塩だよ。

小橋・久志 (笑)。

猪子 わかるよ。岩塩のほうが品がいい。でも品とか求めてない。ああ海!生命!みたいな。

 

~そうこうしているうちに「猪子鍋」が完成~

 

高山 食べたい!

小橋 できました?

猪子 (配りながら)熱くない、熱くない。

高山 おいしそう!

久志 これ、なんかもう、いっちゃっていいやつですか?

猪子 マッシュルーム入ってるからね。マッシュルームとお肉を一緒にね。

一同 いただきます。

高山 うわ。おいしい。

久志 めっちゃうまい!

小橋 ぜんぜん想像と違った。

高山 これ、真似して作りたい。

久志 猪子さん、これめっちゃうまいですよ。

猪子 ほんとですか。

久志 これって、塩だけですか?

猪子 そう。

久志 マジですか。

猪子 そう。何にも入ってない。

高山 おいしい、これ。

猪子 しかも全部、肉のハナマサだから。

高山 じゃあスープは何で作ってるんですか?

猪子 スープは昆布と普通に売ってる肉のかたまりの鶏ガラあるでしょ?

高山 それはハナマサで売ってるんですか?

猪子 売ってる、売ってる。どこのスーパーでも売ってる。

久志 実は、めちゃくちゃ乱暴な料理が出てくると思ってた。これ、めちゃくちゃ繊細じゃない?都ちゃん、どう?

高山 繊細なんだけど、ちゃんとにんにくが入ってるからパンチもあるし。ちゃんとお肉で、うまみも出てるし。トマトが結構効いてる気がする。

久志 びっくり。正直「猪子鍋」って、闇鍋みたいなのが出てくんのかなって思ってたんですよ。そしたらこれ?って。すごい。

猪子 途中から、うまみとは何か自分なりに答えが出たから、そうじゃない方向に。日々ね、生命を感じようみたいな方向に。

久志 案外、これが猪子さんのクリエイティビティを支えてるのかもしれないね。けっこうギャグみたいな話ですけど(笑)。見てる人、ウソだと思うかもしれないけど、ほんとにおいしい。

自分の価値観を変えるのは
身体で感じたものだけ

久志 猪子さんって、外から見てると、みんないろんな風に解釈して、こういう人だよねって勝手に言うじゃないですか。たぶん勝手にいろんな猪子さんのイメージあると思うんだけど。自分で自分のことをどう思ってるんですか?

猪子 自分で自分のこと(笑)?

久志 だって「猪子鍋」食べさせてもらったら、めちゃくちゃおいしくて。闇鍋持ってくるのかと思ったら最高の鍋だし。それにはめちゃくちゃロジックがあって。なんか、アートの話もして。なんかよくわかんないんです。外から見てると。だから自分で説明するなら、なんて説明すんだろうって。

猪子 自分で自分のこと……。2018年だっけ今?2018年の現代の、日本っていうすごいローカルな場所の、常識とか、倫理観とか、ルールとかのみで生きすぎてるんじゃないかと思っていて。そういうものってすごい長い人類の歴史からすると、もしくは生命の40億年の歴史からすると、今ある常識なんて一瞬の流行り風邪みたいなものだし。

世界はすごく多様で。いろんな生き方があって、いろんな価値観があって、いろんな倫理観があって。それからして、単なるローカルのね(生き方にしばられる必要はない)。ほんのちょっとでも、普遍性があるようなことだったり、人類全体に関係するようなことだったり。そういうことにまあ、興味があるね。

小橋 仕事で世界中まわったりとかそういう環境があると思うんですけど。そういうのは意図的に?世の中の常識みたいなものに、とらわれないように意図的に環境を変えたりとか、外行ってみようとかっていうのはあるんですか?

猪子 うーん……。なんか作品とか作るときに、日本の価値観にあんまり左右されないようにしようっていつも思ってて。日本でたとえ、何言われようともね、メジャーじゃなくても、世界で価値が認められるようなことをしたいって思って。できれば、だよ。できれば、100年後とかに、この時代を振り返ったときに、意味があるような仕事をしたいなっていつも思ってたのね。

小橋 今実際にめちゃくちゃやってるじゃないですか。今、現在進行系でやってるものって何があるんですか?まあ、もちろん言えるもの、言えないもの、あると思うんですけど。

猪子 この瞬間だけで15か所くらいでやってるんだけど。

小橋 もう開催してる?

猪子 そうそう世界中で。わかりやすいのだと、今オーストラリアのナショナル・ギャラリー・オブ・ヴィクトリアっていう、オーストラリアを代表する国立の美術館があって、ここで「Moving Creates Vortices and Vortices Create Movement」という作品を……(タブレットで映像を見せる)。

久志 これ、今やってるんですか?

猪子 今やってる作品。水に力が……。人が動く向きに力がかかって、水流が裏側で起こるのね。その水流の……なんだろう?流速の?まあ、水の流れの速さの違いで渦ができていく、みたいな。

小橋 なんかアートって、ちょっと昔までは見るものだったのに、アートがほんとに完全に体験するものになりましたよね。

猪子 そうだね。

小橋 もちろん、見た目でもインパクトあるんだけど。

高山 今って、それと逆の時代じゃない?ネットで何でも知れて、ちょっと頭でっかちになっちゃうっていうか。

猪子 そうだよね。

高山 見た気でいる。知った気でいる。体験したつもりでいる。みんなの情報とか体験だけ聞いて「あ、それ、知ってる知ってる」ってなっちゃう時代だけど。それを行かないとわからないっていうことを、なんかこうすごく前面に出してるのって、めっちゃいいなって思います。

猪子 今言ってた通り、頭でっかちになりすぎてて。ほんとは価値観が変わるような体験って、実は身体で体験したことだけなのに。

高山 旅もそうですよね。

猪子 そう。旅だったり。ネットで見て、テレビで見て、YouTubeで見て。それで知ったつもりになって。でも、それって価値観を変えるほど知れてなくて。身体で知ると、そのほんとに価値観が変わるような体験につながっていくと思っていて。

(違う映像に変えて)これは、シンガポールのホテルの上の船のプールで有名なマリーナベイ・サンズのショッピングモールにある「Digital Light Canvas」。そこにはフードコートとかがある大きな吹き抜けのホールがあって、もともとはスケートリンクだったんだけど、そこをリニューアルしてアート作ろうってアートにしちゃったんだけど。人が書を書いてくのね。こういうふうに

小橋 歩くとそこから書ができていくと。アーティストになる方って何かしら世の中に対して疑問を抱いてたり、伝えたいことがあったり。それをこう、時代を越えた何かに残るようにしてると思うんだけど。

いろんな表現の方法があると思うんですよ。絵を描くこともできるし、映画を作ることもできるし。なぜ、デジタル×アートみたいなとこにいったんですか?

猪子 ひとつは、何かできあがったものを受け取るだけっていうのを否定するつもりはないんだけど、そればっかりっていうのが人間をよくない状態にしてるんじゃないかなって思っていて。

世界はできあがったものではなくて、自分も参加するものだし、他者も一緒に参加するもの。自分の存在や、見ず知らずの他者によって変化するもの。映画みたいなものではなくて、人々がほんのちょっと関わって変わっていくようなものを作りたかったのね。

映画がわかりやすいから例えただけで、映画そのものを否定するわけじゃもちろんないんだけど。映画って20世紀の象徴だよね。20世紀の王様っていうか。主人公がいて、その主人公に対して自己投影するわけだよね、見る側は。自分の身体も捨て、自分の意志も捨て、自己投影だけする。

世界の問題は、スターなりヒーローが勝手に解決してくれて。それに対して、自分の意志も捨てなさい、身体も捨てなさい、ただただ自己投影しなさいっていうフォーマットだと思うのね(映画は)。

たとえば、自分は世界にコミットしていないのに、ちょっとミスった人をこぞってダメ出ししたり、批判したり。ちょっと倫理観からずれちゃった人をみんなでこぞっていじめたり。テレビつけてもそうだよね。

それは、世の中にはスーパースターがいて、世界の問題は勝手に解決してくれて、みたいなことが根底にあるから。スーパースターじゃなかったときに、こぞって叩きのめす。違う世界を批判する時間があったら、違う世界をほんのちょっとでも作ればいいわけでしょ。

何か正しくないものをやってる人がいたら、自分が正しいと思う世界を作ればいい。間違った世界を作っちゃった、失敗しちゃった人を叩きのめす時間があったら、自分がいいって思う世界を作ればいい。

高山 同じエネルギーだもんね。

猪子 そう、そう。

小橋 それこそ自分の失敗とかもそうですよね。世界からむきだしになって叩きのめされちゃうから、失敗さえも許されなくなって。

高山 つまんないよね。

猪子 世界の問題はスターが、というかヒーローが勝手に解決してくれて、意志も身体も捨てていいよ、というのがそういう状態をより作り出してるんじゃないかなって思って。まあ、ほんのちょっとでも、世界は自ら作ったり、よく知らない他人とともに作るものだみたいなね、体験の方がいいなって思ったんだよね。

小橋 たぶん僕も普段プライベートで(猪子さんと)会ったらこういう深い話まで聞けない。なんとなくいい感じで終わらせようとして、あんまりささった話も言わずに(終わってた)。焚き火を前にして話したことによって、深いこと聞けたなって思うし。シンプルにもうなんか、ピュアでまっすぐなことを追ってるなって思って。

久志 猪子さんって「猪子鍋」が猪子さんのことを表現してるなって思って。

猪子 (笑)。

久志 一見、それだけ聞くと闇鍋みたいなよくわからないものだって(思う)。

猪子 闇鍋って単語35回くらい出てますよ。

一同 (笑)。

久志 よくわからないものかなって思ったら、実は理にかなってて、そこにはちゃんと思いもあって。

高山 ちゃんと計算もされてるし。

久志 しかもうまい、みたいな。僕、最後に質問したくて。猪子さんって今「デジタル×アート」って領域で、多くの人を感動させたり、喜ばせたりしてるじゃないですか。そんな猪子さんが最近楽しんだりとか「おお!」ってなったことって何かなっていう。それを聞いて、ちょっと今日終わりたいなって。話、長くなるかもしれないんだけど、端的に言うとなんかありますか?

猪子 えーと……。すっごい自分ごとになっちゃうんだけど。小橋さんが来てくれた佐賀の展覧会「資生堂 presents チームラボ かみさまがすまう森のアート展」を作ったときはけっこう森に行ってた。はじめはひとりでこもったりしながら作っていったんだけど。それを作ってる途中がね。こう、やっぱ、作りながら何か考えとかがほんのちょっと変わってきたり。

作ったものに自ら身体を置いて、自ら体験するわけだよね。作ってる途中ずっと体験しっぱなしなわけでしょ。普通の人よりさらに体験しっぱなしなわけだよね。そうこうしてるうちに、なんかほんと少し世界の見え方が変わったり、考えが変わったり増えたりする状態がすごい好き。体験でのみね、自分の価値観が広がったり、世界の見え方が変わったりすると思ってるのね自分は。

うまく言葉では言えないけどね、なんとなく直感的に、こういうふうに価値観を広げていきたい、考えを深めたいみたいなのがあって。自ら作品を作り、自らその作品に身を置き、自らを変える、みたいな(笑)。

久志 うーん、なるほど。めっちゃいい。最後締まったね。

高山 締まった。

猪子 ほんと?

小橋 「なぜだろう?」っていう「Why?」の欲求をずっと作品を作りながら感じてるし、そのなかで感じたひとつのカケラを僕らが体験させてもらえてるのかなって。たぶん、そこで体験して得るものってもっと大きいものじゃないですか。

形には表せない、アートでは表せないんだけど、その一部を味わわせてもらってるなって思うと、ますますもっといろいろ見たいし。もしかしたら30年後もうデジタルやってないかもしれないし。そういう変化だってありますからね。

猪子 そうだね。

高山 つぎのステージに行ってるかもしれないもんね。

猪子寿之/チームラボ代表

1977年生まれ。2001年東京大学計数工学科卒業時にチームラボ設立。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて、集団的創造をコンセプトに活動している。47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」、「ミラノ万博2015」日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet」、5時間以上待ちとなった「DMM.プラネッツ Art by teamLab」、シリコンバレー、台湾、ロンドンでの個展、シンガポールで巨大な常設展など、アート展を国内外で開催。2018年夏に森ビル株式会社と共同でお台場・パレットタウンに「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: teamLab Borderless」を開業。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。