超アナログな蓄電方法「重力蓄電」が今注目される理由

再生可能エネルギーへのシフトが加速するエネルギー業界において、今「重力蓄電」というエネルギーの貯蓄方法に注目が集まっている。

「重力蓄電」とは、文字通り重力を利用した蓄電方法。かのアイザック・ニュートンが17世紀に発見した、位置エネルギーを利用した“アナログな方法”だ。

例えば、スイスのスタートアップ企業「エナジー・ボールト」が開発しているのは、35トンの安価なコンクリートブロックを使用して、重りを上げ下げするシンプルな方法(もっとも実際には最先端テクノロジーが利用されており、現代の技術力によって約85%という高効率を実現している)の「重力蓄電」。

余ったエネルギーは重りを持ち上げる際に位置エネルギーに変換して保存し、エネルギーが必要な時には、重りを降ろすことで、取り出すことができるのだ。

© Energy Vault Inc/YouTube

この「重力蓄電」が今、注目を集めるのにはいくつかの理由がある。

まずは、再生可能エネルギーが持つ供給の不安定性。多くのクリーンな発電方法は、稼働時間にムラがあるが、電気はそのままでは保存することが出来ないため、これからより多くの蓄電施設が必要になると予想されている。

さらにコスト環境保護の観点からも「重力蓄電」が支持されている。

例えば、最先端のリチウム電池・水素電池は、コストも高く長期間の保存には向かない。また、同じ"位置エネルギー”を利用した揚水発電施設は、建設場所が限られるうえに、環境破壊との声も上がっているのだ。

このような背景を考えたうえで、アナログな蓄電方法が注目を集めているのだが、確かに、これはとても堅実な選択肢かもしれない。

ちなみに前述の「エナジー・ボールト」によるクレーン車は、1台で3〜4万人都市の電力需要をまかなえる容量を持つとのこと。

また、英国の「Gravitricity社」は、街の地下に大きな蓄電エレベーターを製造する未来も構想しているらしい。

少し先の未来の街では、もしかして「クリーンエナジー」と「重力蓄電」だけが使われていたりするのかも……。

Top image: © Energy Vault, 2021.
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。