未来の「極小粒子」を、動物の犠牲なく利用できる可能性はあるのか
ナノマテリアルで動物を犠牲にしない。欧州で研究本格化
動物実験をせずにナノマテリアルの安全性を試験する方法。それは今、ヨーロッパで大きな注目を集めているテーマだ。
ナノマテリアルとは、1nm(ナノメートル)から100nmの微小な粒子のこと。ナノマテリアルは独自の物理的・化学的特性を持ち、細胞中への侵入が可能なことから利用価値が高い。従来の材料にはない強靭性を持つほか、電気伝導性・熱伝導性に優れていて、電子工学から医薬品、化粧品まで幅広い分野での応用が期待されている注目の新素材だ。
ただ、現段階では未解明のものが多いことから人体や動植物への悪影響が懸念されており、安全性を検証するテストの推進は喫緊の課題とされている。そして、そのために繰り返されてきたのが動物実験だ。
そんな背景から、「EUナノ材料観測所」(EUON:欧州市場に存在するナノマテリアルに関する情報を提供・関連トピックの研究を行っている組織)が「動物実験を伴わない実験方法」に関する研究結果を公開した。
結論から言えば、状況はまだ手探りの段階だという。
「NAM」の確立は難航中。認定できるのはわずか8/200
研究の主な目的は、ナノマテリアルの人間への安全性評価のための新しい方法論(NAM)に関する正確かつクリアな情報を収集・提供し、これらの方法の包括的なリストを作成すること。
NAMは「New Approach Methodologies」の略で、動物実験を使わないで化学物質や物質の安全性を評価するための代替的な方法や技術を指す用語。細胞培養、生体外実験、コンピュータベースのモデリングやシミュレーションなど、さまざまな技術や手法が開発・適用されている。
また、NAMの開発が進むことは動物福祉の観点だけでなく、より迅速で効率的な評価が可能になることも期待できるという。
EUONの研究によれば、200以上の新しいNAMが特定されたが、そのうちの8つしか現時点で公式のテストとして認められていない。つまり、多くの方法がまだ検証段階にあるということだ。
動物愛護と文明発展を両立させるため、NAMの開発は喫緊課題
「この調査で明らかになったのは、緊急に新しいナノ特有のテスト方法の検証を進める必要があるということだ」と、EUONの報告書で語られた。
研究ではナノマテリアルに限らず、複雑な試験項目(例えば、神経毒性や生殖毒性など)のためのNAMの開発必要性も確認している。安全性テストの新しい手法を模索する中で、さらなる進歩と革命が待ち受けているのかもしれない。
未来のテスト方法がどう変わるか、注目していきたい。
ナノマテリアル──分子サイズの素材だなんて、未来的でおもしろいですね。
様々なテクノロジーの発展につながる素材だけど、安全性担保のためにはテストが必要。動物の虐待は避けたいけれど、他の方法は非常に限られている。
難しい課題です。EUONほか、様々な機関が積極的にNAMの確立に向かうことを願うばかりです。