すでに絶滅した動物のRNAが、私たちの未来を救う?

先日、科学界で驚きのニュースが報じられた。
絶滅動物としては初となる、タスマニアタイガーのRNAの回収に成功したらしい。

タスマニアタイガーは縞模様の肉食動物で、オーストラリアのタスマニア島にて1930年代に絶滅したと考えられていた。しかし、特殊な手法を用いたスウェーデンの研究チームが、132年前のタスマニアタイガーの皮膚と筋肉から数百万ものRNA鎖を抽出したという。これにより、絶滅種の遺伝子活動についての情報を取り戻せる可能性が生まれることとなった。

では、なぜRNAの回収はそれほど重要なのだろうか。

たとえばDNAの配列からは、その生物がどんな遺伝子を持っているか、などといった情報しか読み取ることができない。いっぽうRNAは、実際にどの遺伝子が活性化され、細胞内でタンパク質合成に使われているかまで読み取ることができるという。ただ、RNAはDNAよりもはるかに壊れやすく、分解される速度も速いため、過去の資料からRNAを回収するのは容易ではなかった。

ところが、今回の研究ではその課題を克服し、歴史的なサンプルからRNAを回収することに成功。成果は遺伝子研究への新たな展望をひらくことはもちろん、それ以外にも様々な可能性を秘めているという。

たとえば、ほかの絶滅種のRNAの配列を解析し、その当時のRNAウイルスを検出できれば、コロナウイルスなどのパンデミックを引き起こすRNAウイルスの性質ウイルス進化のさらなる理解につながる可能性もあるとのことだ。

すでに亡き動物のRNAが、私たちの未来を救ってくれる時がやってくるのかもしれないーー。

「史上初にして絶滅種からRNAが回収できた」と聞くと、もしかして絶滅種復活の可能性も…!? とつい考えてしまいますが、研究者によれば、遺伝的プロセスを利用して実際に絶滅種を再現することは現段階では至難の業なのだとか。

とはいえ、将来絶滅種を復活させる可能性への小さな一歩となることは間違いなさそう。実物のタスマニアタイガーにお目にかかれる日はやってくるのでしょうか……?

Top image: © iStock.com/Nastasic
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