種の消滅と再生。「トキ」が再び空に舞うまでの20余年
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
日本生まれのトキの最後の雄・ミドリが死亡した日
「日本鳥類目録」に記されている学名は「Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)」。
そんな学術上のネーミングからもわかる通り、日本を代表する存在である鳥・トキは、漢字で「朱鷺」と表記しますが、すらりと伸びた脚や長い首など、見た目の共通点は多いものの、鷺(サギ)とは別種の鳥なのだそう。
江戸時代までは日本全土に広く分布し、群れをなして飛ぶ様子はごく一般的な日常の風景のひとつだったというトキ。
しかし、1800年台の中盤、農作物の苗を踏みつける“害獣”として駆除の対象となったことなどが原因で、瞬く間に数が減少。ついには、自然界でその姿を確認されることはなくなってしまいました。
1952年、調査によって新潟・佐渡でわずか22羽ながら生存していることが確認され、即日のうちに政府より「特別天然記念物」に指定されます。そして、約30年後、「環境庁」の指示のもと、自然界での生存数が5羽にまで減ってしまったトキの全羽捕獲が実施され、人工増殖の道を探ることに。
日本のトキとDNAレベルでほぼ違いのない種が生息する中国の協力をあおぎ、人工繁殖を試みますが、28年前(1995年)の今日4月30日、日本産トキの最後の雄であるミドリが死亡。それにより、“野生の血を引く日本のトキ”は繁殖能力のない雌の一羽・キンのみとなり、事実上の“絶滅”という結果を迎えてしまうのでした......。
その後、中国から譲り受けた2羽のトキ(友友、洋洋)の子、孫が佐渡で放鳥され、2019年1月21日の調査では353羽にまでその数を回復させているそうです。
とはいえ、かつては“人間の都合”によって絶滅という憂き目に遭わされてしまったトキ。
絶滅した種を再生してしまうほど劇的に進化したテクノロジーでさえも、過去の過ちを記憶や記録から消すことはできないのです──。