3Dプリンターでも「復元」できないものがあります
今日、絶滅の危機にある動物を紹介するキャンペーンとして、国際動物福祉基金(IFAW)が制作したビジュアルイメージが、世界で高い評価を得ている。
過度な森林伐採や密猟、乱獲により生命を落とす野生動物たちの現実を表現する手段に選んだのが、今や家庭にまで浸透してきた3Dプリント技術。キーワードは、その再現性だ。
テクノロジーをもってしても
復元できないものがある
サバンナに生息するアフリカゾウ。インドゾウやマルミミゾウと共にレッドリストに登録される彼らの一番の外敵は、皮肉にも象牙を狙う人間たちだ。
ゾウの脚元から胴体、長い鼻と牙を通って、次第に輪郭が現れてきた。体躯の上を水平に走るチューブはプリンタの先端。つまりは、3Dプリンタを用いてゾウの躰を再現している途中段階が表現されているのだが…。まるで、製作工程で主電源を切ってしまったような中途半端な状態。けれど、これが完成形なのだ。
この違和感が表現するものこそが、絶滅への危惧だとIFAWは説明する。そこには内臓や肉の付き方が生々しく再現されているものだから、余計にリアリティが増して感じられないだろうか。
代替も復元もできない
それが、自然環境
それが、自然環境
パーソナル3Dプリンターのみならず、3D出力を事業化するサービスの台頭に始まり、医学応用、さらにはファッションとして、3Dプリントの技術進化は、もはや生活環境に直結するテクノロジーだ。
けれど、どんなに技術革新が進んだとしても、自然環境の代替だけはテクノロジーだけではカバーできない。この未完成の動物たちこそ、「代替も復元も利かない」というIFAWが発信したいメッセージそのものだ、と「designboom」。デザインとしての秀逸さに加え、シンプルでありながら強力なメッセージに高評価のコメントだ。
なお各イメージの右下には、IFAWロゴと共にここんな一文が表記されている。
「If only they were this easy to reproduce」
(もしも、彼らがこれくらい簡単に再現できたなら…。)
3D artist:Olivier Djalayer