米裁判所、カバを「人間」として認める

先月20日、オハイオ州の南部地区地方裁判所が、ある歴史的な判断を下した。

それは、動物を「法的な人間」として認めるということ。コロンビアで暮らす120頭ほどのカバたちが、法を行使する権利を認められたのだ。

当のカバは、1980年代にコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルが自宅の動物園で飼育するために密輸した、通称“コカインカバ”の子孫たち。

93年にエスコバルが警察に殺害された後、彼の財産は押収されたものの、大きくて運搬の難しいカバは敷地内に残されることに。当初は4頭だったカバたちはみるみるうちに繁殖し、120頭近くまで増えてしまったのだ。

地元民の安全や周囲の生態系といった点から問題視され、駆除するか避妊処置を施すかで議論が発生。弁護士の活躍によって不妊化に落ち着き、命は助かったものの、この際に使用された避妊薬はあまり安全なものではなかったんだそう。

そこへ参戦したのが、アメリカの「アニマル・リーガル・ディフェンス・ファンド(ALDF)」。より安全な避妊薬の使用を訴えるためにオハイオ州で訴訟を申請。

カバを原告としたこの申請を裁判所が承認したため、アメリカで初めて「動物が人間と同等の存在として認められた事例」という歴史的な判断になったというわけだ。

アメリカの法律では、外国の訴訟の“関係者”であれば誰でも外国の訴訟を支援するための証言を求めることができるという。

今回の件において、カバたちは「確実に“関係者”である」ことから、この法律を適用することができたのだそう。

ALDFは声明で「動物には残虐な行為や搾取から逃れる権利があります」と発表。

アメリカの歴史上初めて動物に“人権”が認められたことで、「カバも法的権利を行使できる、と認めた裁判所の命令は、動物の権利を巡る闘いの画期的な節目になった」とも述べている。

確かに、アメリカを含め世界の法律上での動物の扱いは曖昧で、これがいままでの動物保護を法的なものにする妨げとなってきた。

今回の判断を受けて各地で「動物への人権適用」が認められれば、法的に保護し、救える動物たちがもっと増えるはず。

真に平等な社会……その一歩進んだ、偉大な判断に拍手。日本も含め、動物保護の在り方を考えるきっかけになることを願いたい。

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