人間の手首と指は「魚のヒレ」が進化したもの(米シカゴ大学)
人間の手首や手足の指が、魚のヒレの柔らかい骨から進化したものという証拠を米シカゴ大学の研究チームが発表した。数百万年前の哺乳類の進化の歴史が、遺伝子組換え技術によって少しずつ明らかにされようとしている。
遺伝子組換え技術が
ナゾを解明した
人間の祖先や、陸上で暮らすほかの哺乳類が水生生物から進化したことは、これまでの研究で解明され、化石がそれを証明してきた。しかし、魚のヒレのどの部分が手足の指となったのかなど、詳細は不明のままだったそう。
研究者らが注目したのは、哺乳類の手首や指の細胞をつくるホメオティック遺伝子(Hox遺伝子)。「The Atlantic」によれば、1996年の時点でフランスの科学者が、Hox遺伝子の2つ(HOXA13とHoxd13)がマウスの手足の開発に関与している事実を発見している。
今回シカゴ大学研究チームは、遺伝子組換え技術を応用しマウスの手首と指をつくる細胞群が、魚(ゼブラフィッシュ)ではどの部分で働くかを実験した。
ヒレの中の軟骨が形を変え手首や指になっている
遺伝子を改変し、Hox13を動かなくさせたマウスとゼブラフィッシュを比較したところ、マウスは手首や指がなくなったのに対し、ゼブラフィッシュは胸ヒレの柔らかい骨がほとんどなくなっていた。と、「The New York Times」が報じている。
このことから、ヒレの硬い骨ではなく、「皮骨(ひこつ)」と呼ばれる柔らかい骨の部分で細胞群が形成されていることが分かった。上の写真右側がゼブラフィッシュのヒレ。左がマウスの手。
写真で緑色に光る部分が皮骨。この軟骨組織が、次第に硬く変化することで、手首や指の成形にいたった。というのが今回の研究によって判明したこと。今月18日、研究者らは「Nature」誌に発表した。
ちなみに、研究チームには日本人の中村哲也研究員も参加しており、今回の発見を機に「魚が陸へと上がる進化の解明に向け、大きな前進になる」、とコメントを残している。