#4 接続と分断が同時に起きる場所――Neon Saltwater インタビュー

Vaporwave特集 #4

“Internet Aesthetics(インターネット美学)”という言葉がある。 ヴェイパーウェイヴに関連する、ビジュアルの雰囲気を表してよく使われている。

例えば、ネオンやヤシの木といったモチーフを使ってつくられた、80年代や90年代の雰囲気を感じるトロピカルでディストピアなグラフィック、懐かしいゲームのCGに感じるカクカクしたポリゴンやグリッチ感などなど。

このムーブメントに共通する不思議な魅力に対して「Aestheticだね」と評する感じ。想像上の部屋を具体化するシアトル在住のアーティスト・Neon Saltwaterの作品も、そういう創作物の一種だと思う。

作り手としてヴェイパーウェイヴを意識しているの? と聞くと、本人はNOと答えたけれど、その考えかたには共通点も多かった。目で見て楽しむヴェイパーウェイヴのヒントにしてみて!

©2018 Neon Saltwater
©2018 Neon Saltwater
©2018 Neon Saltwater
©2018 Neon Saltwater
©2018 Neon Saltwater

 

――てっきりヴェイパーウェイヴを意識しているのかな、と。

 

無意識に影響されていたのかもしれません。

初めてヴェイパーウェイヴを知ったときは、不気味な感じがしました。ミステリアスなエネルギーがあったのは確かです。たぶん、自分も含めて多くの人が気にかけていたことなのだけれど、それが何だったのか正直わからなかったから。

なんとなくその概要を掴めるようになったきっかけは、香港の路地を深夜に歩いているような雰囲気とか、誰もいないショッピングモール、というイメージができてからかもしれませんね。

 

――Neon Saltwaterのプロジェクトをはじめたきっかけは何だったのでしょうか。

 

もともとは、Crushという友だちとシェアするためにつくったプレイリストの名前だったんです。コラボレーションだったのですが、お互いの関係性を再確認するための音楽でもありました。

同時に、私が夢で見たり、頭の中で思い描いたりしている、数百万とある部屋や、そこにある明確な雰囲気を具体化するプロジェクトでもあります。今では、ビデオや、ポップアップとしても存在しています。

私の想い出は場所と雰囲気に紐付いているから、その感覚や情熱のイメージを部屋に表しているんです。ときには、音楽からインスピレーションを得ることもあります。

 

 

©2018 Neon Saltwater
©2018 Neon Saltwater
Photographed by Ashley Armitage
©2018 Neon Saltwater

 

『Un-virtual』という作品は、私が初めて部屋を現実世界に再現した展示でした。私の作品を見て、ヴェイパーウェイヴの世界観に似ていると言う人はたくさんいます。

私自身、今28歳で80年代から90年代という時代に大きな影響を受けているし、子供の頃の記憶に感じるノスタルジアが、創作活動の大部分を占めています。私の作品を見る人は、そこから未来を感じることもあるみたいですね。

感情の変化を表現することが究極のゴールなので、私の作品からそういう雰囲気を感じとり、なんらかの思いを抱いてくれること自体は嬉しいです。

 

――ヴェイパーウェイヴや、“Internet Aesthetics(インターネット美学)”と言われているビジュアル感覚については、どんな印象がありますか?

 

定義できないものだと思っています。

私にとっては“常に変化していること”を意味しているから、その瞬間に私たちの周りで発生している何か、としか言えないポップカルチャーなんです。

ただ、インターネット独特のクレイジーさがあるなと感じるのは、それがどんなことであっても、“その瞬間とは直接関係を持つことができない”ところ。

その一瞬を数百万人の人々とシェアすることもできるし、人々のリアクションの肥やしにして次の何かを感じることもできますが、同時に分断されてもいる。

 

――真逆なものが共存している感覚?

 

同じひとつのことを、最悪のバージョンと素晴らしいバージョンとで、同時に行っている場所だと思うんです。

あらゆる物事がどんどん使い捨てされていくようになりつつあって、共感して、感情移入して、配慮をするというような、他人から受ける影響を失っていっているのではないかと怖くなることがあるんです。

その一方で、傷つきやすい人々でも自己主張できる創作環境を育むことは、インターネットなしではできないことだとも思いますし、バーチャルな体験を通じて他者との繋がりに心地良さを見出すこともできます。

接続と分断が同時に起きているんです。そういうところは、おもしろいですよね。

 

――真逆のものが混在している不可解さみたいなものが、インターネットならではの美意識として楽しまれているのかもしれませんね。貴重なご意見ありがとうございました。

彼女が頭の中で思い描いた無数の部屋はコチラから確認できます。ぜひ、バーチャルとリアルの両方をチェックしてみてください。

 

取材協力 Neon Saltwater
「Vaporwave」をもっと知りたい

関連する記事

ヴェイパーウェイヴの代表的アーティスト、Vektroidことラモーナ・アンドラ・ザビエルが、ブラジルのメディア「I Hate Flash」に登場。貴重なイ...
ヴェイパーウェイヴがわかりにくいのはなんでだろう? 音楽ジャンルの名前として見るか、一連のムーブメントの名前として見るかで、捉え方が大きく変わるということ...
なんてかっこいいアルバムなんだ! って思って、聞きはじめて最初の数秒でもっていかれた。
ヴェイパーウェイヴの音楽をLIVEで楽しめる機会は少ない。その希少性を抜きにして考えても、11月2日(金)からはじまるツアー「NEO GAIA PHANT...
使い込むほど魅力が高まる家具や日用品を、サブスクリプション型で提供する新サービス「(tefu)vintage supplies」が誕生。
アンダーグラウンドで、とらえどころがなくって、だけど、とってもクールなこのムーブメントに、ぼくはもう長いこと夢中になっている。
都合の良いお洒落と恋を楽しむ架空の都市のようなコンセプトは、そのほかの作品も同様にあります。
こんなに知られるとわかってたら、もうちょっと違う名前にしてたと思う(笑)。
日本ではまだまだ知られていない博物館「The Neon Museum Las Vegas」。ここはラスベガスのダウンタウンから北に10kmほど離れた場所に...
「Neon Muzeum」は、その時々の時代を反映したネオンサインが集まるミュージアム。混迷の時代のプロパガンダや戦後のポーランド繁栄を感じられるものなど...
この記事では、『恐ろしいほど人の本音がわかる!大人の心理テスト』から友達や恋人と盛り上がれる面白い心理テストを3つ厳選してご紹介します。簡単にできる心理テ...
水中で、息継ぎしながら、音楽ライブ!?
フィリピンの「Malasimbo Music & Arts Festival」は、音楽にプラスしてアートにも重点を置いたフェス。会場は毎年、光や色を巧みに...
「フロリダ州の財産はキレイな海のはずなんだ」。2013年、デルレイビーチに創業したブルワリーSaltwater BreweryのChris Goveさんは...
NYCから来日したメッセンジャー界のレジェンド、カート・ブーン氏に、メッセンジャーのリアルな日常や氏が生み出すアート、そしてメッセンジャーカルチャーとファ...
ギャラリーや展示会、イベント会場、音楽とアートを同時に体感できる場は幾つかありますが、そのふたつを融合させた「壁掛けスピーカー」が登場しました。クラウドフ...
NYジャムバンドシーンを代表するドラマー「Billy Martin」にインタビュー。
この木に吊るされた15個のヘッドフォンからは様々な音楽が流れます。大人も無邪気に笑顔になってしまうアートには製作者の「音楽に出会う喜びを感じてほしい」とい...
美術館などのアート施設が近くにない人にも、アートを届ける素敵なプロジェクト。
スマホに直接接続して使える電動シェーバー「Plug Shave」。

おすすめ記事

大分県の景勝地、耶馬渓に3日間限定でが「耶馬溪トンネルホテル」がオープン。客室となるのは道路に設置されたキャンピングカー。トンネル内には、建築家・佐野文彦...
埼玉県、名栗エリアの北欧文化を体験できる施設「Nolla naguri(ノーラ名栗)」が、グランピングエリア開業にともない2021年4月29日(木)にグラ...
「ラムを作ろう、壁ではなく」というタイトルのユニークな動画広告は、オーストラリアのラム肉メーカー「Australian Lamb」が制作したもの。「私たち...
3月16日、軽井沢にほど近い御代田町に新たなラグジュアリーホテル「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」が開業。すでに予約を受付中。
NBAの「ロサンゼルス・レイカーズ」に所属している選手、アンソニー・デイビスが着用し話題となっていた「ナイキ」のサステイナブルな新作バスケットボールシュー...
今月1日、「帝国ホテル東京」がホテル内での「サービスアパートメント」をローンチ。3月15日からの入居開始に先駆け、現在、予約を受付中だ。
トランスポーター(移動手段)としての車には、もう多くの人の興味が失われているとおもう。誰もが車をもてる時代をへて、今はカーシェアリングなんてあたりまえ。U...
浜松市の鉄工所がつくったジュラルミン仕様のペグ。強度はもちろん、らせん形状に秘密あり。
英国発のフレッシュハンドメイドコスメを展開するLUSHが、短編ドキュメンタリー映画『We the Bathers』を企画制作。