いまさら聞けない。なぜこんなにもレトロブーム?
ここ数年、Z世代やミレニアルズを中心に盛り上がりを見せる「レトロブーム」。
カセットテープ、シティポップ、写ルンです、銭湯、昭和アニメ、レコード、純喫茶、クリームソーダ……こういった「昭和レトロ」と呼ばれるものはその見た目からもイメージしやすいですが、彼/彼女たちが “親世代” のカルチャーにノスタルジーを感じるワケをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
きっと、デジタルから離れたい、という理由だけではないでしょう。
なぜいま「レトロブーム」なのか。注目される理由や事例を交えながらご紹介します。
そもそも「レトロブーム」って?
ひと口に「レトロブーム」と言っても、さまざまなものがあります。
前述したような、昭和の古き良きアナログ感を求める「昭和レトロ」から、Y2Kと呼ばれる2000年代のファッションカルチャーやギャルマインドを楽しむ「平成レトロ」、さらにはそういったファッションからインスパイアを受けた海外アーティストのスタイルをSNSでチェックして参考にする「輸入レトロ」と呼ばれるものまで、いろいろな形での「懐古主義(ノスタルジー)」がトレンドになっています。
気になるのは、なぜ今このタイミングで? ということ。ファッションの流行は20〜30年周期とも言いますが、それ以外にもいくつかの背景がありそうです。
今より「生きやすかった時代」への憧れ
「レトロブーム」は日本国内だけのトレンドではなく、海外でも同時に連動するように起きているのが特徴的です。
とくにZ世代の人口が多く、その影響力の大きさが注目されるアメリカでは、90〜00年代へのノスタルジーを感じる人たちが多く、それらは経済不況やコロナ以前の、より「シンプルで生きやすかった時代」への憧れもあるのではないかと言われています。
当時の映画やドラマから感じる刺激的なカルチャーや自由な空気感は、今の時代の息苦しさを打ち壊してくれるものとして興味を抱きやすいのかもしれません。
またアメリカのZ世代では、ミレニアルズが体現してきた「Instagram上の造られた美しい世界」や「マインドフルネスなライフスタイル」「不要を省くミニマルな暮らし」などに対する反発心から、よりエネルギッシュで攻撃的だった90〜00年代カルチャーへと目が向いているという声も。
参照:https://www.businessinsider.com/gen-z-indie-sleaze-trend-hipster-grunge-party-2022-1
古着という選択と、サステナビリティ
レトロファッションには、そのスタイルやデザインだけでなく、サステナビリティ(持続可能性)の観点が影響していることも無視できません。
古着のECサイトを運営する米企業「スレッドアップ」が出した2021年のレポートを見ると、現在360億ドル(約3兆9500億円)の古着市場は今後5年で約2倍になり、770億ドル(約8兆4550億円)まで伸びるだろうと予測されています。
コロナ禍を経て、多くの人がファストファッションや新品購入から徐々にシフトし、アパレル業界が抱えていた環境問題に意識が向いたことも要因のひとつでしょう。
日本には古来から「もったいない」という美意識にも通ずる言葉がありますが、現在は多くの大手企業や有名ブランドもリペアや古着販売に着手していて、とくに環境配慮への関心が強いZ世代にとっては重要視されるポイントになっていくでしょう。
動画配信で、いつでも
「レトロな作品」にアクセス
一方で、アニメやドラマなどのエンタメコンテンツに目を向けると、かつては再放送や録画、レンタルショップに足を運ばないと見られなかった懐かしい作品まで、サブスクサービスを通していつでも見られるようになりました。
今でも活躍している声優さんの出世作を見たり、実写化される映画の原作アニメをチェックしたり、4:3比率のドラマが妙にオシャレに感じたり。レトロな作品をレトロとして体験するのではなく、あくまでも新鮮なコンテンツのひとつとして純粋に楽しんでる人が多いのも特徴的です。
なかには、毎週更新を待たなければいけない新作よりも、好きなときに一気見ができるレトロ作品のほうが好き、なんていう声も聞くほど。
かつてのように「○○知らないの?」「○○見たことないの?」のような一方的なジェネハラは減りつつあり、むしろZ世代のほうが昔の作品に詳しかったりすることもありますよね(笑)。
レトロブームをまとめると……
不確実性が高い「VUCA」と言われる時代だからこそ、どこか温かみのある昭和レトロやエネルギッシュな平成レトロが求められ、一方でコロナ以前に根づいていた価値観をひっくり返すためのヒントとして、Y2Kファッションやギャルカルチャーに再び注目が集まっているのかもしれません。
レトロブームは、Z世代とその親世代の価値観をつなぐきっかけにもなります。
それぞれの時代の良かったところをうまくハイブリッドしながら、まだまだ加速すると言われるVUCAの時代を乗り越えていきたいものですね。