衰退するニュータウンを「思い出のラムネの味」が救う!?

子どもの頃、駄菓子屋さんの棚でキラキラと輝いていた「ラムネ菓子」。あの独特の瓶の形、口に入れるとほろほろと溶ける懐かしい味わいは、多くの人にとって忘れられない思い出と結びついているのではないだろうか。

今、そんな誰もが知るラムネが、衰退する日本のニュータウンを救うかもしれない、という取り組みが始まっている。

「住む」から「楽しむ」へ。
ニュータウンの新たな挑戦

舞台となるのは、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウン。独立行政法人「都市再生機構(UR都市機構)」と「春日井製菓株式会社」がタッグを組み、地域活性化プロジェクト「団地味ラムネプロジェクト」を始動。

UR都市機構によると、全国には1,421団地、約70万戸ものUR賃貸住宅が存在するという。高度経済成長期に建設が進んだニュータウンも、今では少子高齢化や住民間のつながりの希薄化といった課題を抱えている。 そんななか、UR都市機構は全国の団地で様々な世代が交流し、支え合う「ミクストコミュニティ(Mixed Community)」の形成に力を入れている。

いっぽう、愛知県名古屋市に本社を置く春日井製菓は、「グリーン豆」「ラムネいろいろ」など、長年愛され続けるお菓子を作り続けてきた。同社は2024年6月、UR都市機構と「地域連携・協力に関する連携協定」を締結。その最初の取り組みとして、日本三大ニュータウンの一つ、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンを舞台にした「団地味ラムネプロジェクト」が始動した。

300通りのストーリーを閉じ込めて
「団地味ラムネ」ができるまで

同プロジェクトのユニークな点は、住民から「高蔵寺ニュータウンの幸せな思い出」を募集し、選ばれた300個の思い出をオリジナルラムネの商品パッケージに印刷するところだ。

「ラムネいろいろ」は、1979年の発売から46年間、幅広い世代に愛されてきたロングセラー商品。現在または過去に高蔵寺ニュータウンに住んで/働いて/学んで/など、高蔵寺ニュータウンに関わりのある人々の記憶は、どんなパッケージへと姿を変えるのだろう。また、第1弾のオリジナルラムネづくりを始め、2025年内に9回のワークショップ開催を予定しているという。

©春日井製菓株式会社

共感から生まれる
人と街の新しい関係性

「団地味ラムネプロジェクト」は、単なる商品開発や地域貢献活動ではない。地域住民が自身の思い出を振り返り、共有することで、街への愛着を再確認する機会になるだろう。 そして、完成したラムネは、世代を超えたコミュニケーションを生み出すツールとなり、高蔵寺ニュータウンに新たなコミュニティを形成する可能性を秘めている。

近年注目されている「関係人口」や「コミュニティビジネス」といったキーワードとも親和性の高いこの取り組み。今後の展開から目が離せない。

Top image: © 春日井製菓株式会社
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。