一流アスリートやアーティストが実践する、「なりたい自分」へのコンセプトづくり
「理想の自分」や「なりたい自分」、それらにふさわしい生き方をするには、まずもってコンセプトづくりが大切です。第一線で活躍するアスリートたちを例に、このコンセプトをつくる上でのヒントを紐解いていきましょう。
01.
自分自身を
「単語」で表現してみる
アスリートが企業や商品の広告キャラクターとして出演する際、マネジメント事務所は資料を用意します。写真と略歴、獲得タイトルや芸能活動の出演実績などと一緒に、本人を象徴する言葉もここには掲載されています。
たとえば、メジャーリーガー・ダルビッシュ有の場合、「世界」「技術」「緻密」「努力」といったキーワードが並びます。
これは広告案件にかぎった話ではありません。そのアスリートを象徴する言葉が何かということは、彼らの魅力を最大限に引き出す上で、とても重要なのです。
これと同じように、あなた自身の「コンセプトを表す言葉」をイメージしてみましょう。ポイントは副詞や形容詞ではなく、名詞を使うこと。「美」「理想」「尊敬」などの単語で表現したほうが、本質的な魅力を端的に表し、さまざまな場面に柔軟に対応できるでしょう。日ごろから、そのような生き方をするよう心がけるといいと思います。
02.
「本性」が見えなければ
振り向いてもらえない
元スピードスケート金メダリストの清水宏保さんのコンセプトを表すキーワードとして、私たちは「逆境」「挑戦」などの言葉を選んでいます。この種目は長身選手に有利という常識を覆し、重度の喘息とつきあいながら、自身の世界記録を何度も更新してきました。清水さんのコンセプトは、正に清水さんの人生の本質。「本性」と言い換えてもいいでしょう。
コンセプトは自分の価値を高める最も重要な要素。そのためには、あなたの本質を表すものでなければなりません。自分自身を素直に、客観視して抽出することが重要です。たとえば…、
どんな子ども時代を過ごしたのか。
どんな夢を抱いているのか。
夢を叶えるためにどんな努力を重ねてきたのか。
本性の見えるコンセプトができたときこそ、まわりの人があなたに振り返り向いてくれる可能性が出てくるのです。
03.
自分から率先して
自分を「表現」する
サッカー日本代表の本田圭佑とは、これまで多くの広告・媒体・イベント出演などで仕事を共にしてきました。初仕事は2008年、プロフィール写真の撮影でした。
撮影が始まると、彼は誰からも指示されることなく、カメラに対して身体の向きを斜めに構え、スッと足を交差させたのです。私は「この人は自ら表現したいと思っている」と直感しました。クリエイティブな彼の素質が見えた瞬間です。
このように、人が見せる仕草には、その人の「素」の部分や「本質」が隠れています。日常生活の中で、誰かと一緒に食事をしたり、どこかに出かけたり、時間を共有しながら、その人の仕草や反応をよく観察してみるといいでしょう。
04.
成功の“種”は過去の
喜怒哀楽のなかに隠れている
アーティスト、アスリート、ビジネスパーソン、学生。職業や立場が違っても、みんな努力し、前進しようと奮闘していることに変わりはありません。たとえそれが、夢や目標といった明確なものになっていなくても、なにかに一生懸命取り組む姿やその思いがあなたの軸であり、コンセプトの源泉です。
「自分はどんな人間になりたいのか」
自分探しの旅に出かけたところで、どこか知らない地でなにかを得ることは絶対にできません。あたなのコンセプトの源はあなたのなかにあるからです。
今までどんなことがあったのか。
楽しかった。
苦しかった。
悲しかった。
努力した。
そんな経験をもう一度見直してみてください。そう、人生の“棚卸し”です。あなたの言動、経験、すべてがコンセプトにつながっているのです。
05.
自分の方向性が定まらないなら
クローゼットを整理せよ
タレントや俳優、アーティストなど演者には概ね「スタイリスト」がついています。それは、演者の商品価値を衣装が代弁すると知っているからです。ファッションほど手っ取り早くその人を表現しているものはありません。クローゼットには、あなたが「人からどんなふうに見られたいと思っているか」という答えがぎっしり詰まっているはず。
ですから、自分のコンセプトが知りたいなら、クローゼットをのぞいてみることです。まったく整理できていない場合、同じくコンセプトも雑多な情報のなかに埋もれているかも。「自分のコンセプトってなんだろう」「私ってどんなふうに見られたいと思っているのだろう」と考えながら、クローゼットと頭のなかをスッキリさせれば、きっと何かが見えてくるでしょう。
『すごい人のすごい流儀』
コンテンツ提供元:サンマーク出版
エイベックス・スポーツ㈱代表取締役社長。2000年からは全国エリアのプロモーターとして邦楽トップアーティストたちのプロモートに参画。13年、エイベックス・スポーツ株式会社を設立。エンタテインメント業界で培ったノウハウを活用したマネジメントとブランディング手法でスポーツ、トップアスリートなどの価値最大化を実現している。