「うまくいかないのは当たり前」。逆境に負けないレジリエンス力の鍛え方
私たちは人生のなかで、仕事、プライベート問わず様々な困難や逆境に出会います。「乗り越えられない」と思うほどの大きな壁にぶつかったときこそが、成長するチャンスです。人は誰しも「レジリエンス」という逆境に立ち向かう力を備えています。
ここでは、15,000人以上をカウンセリングした実績を持つ金森秀晃氏の著書『凹んだ数だけ強くなれる29の法則』から、レジリエンスの育み方を紹介しましょう。
失敗を失敗のままで
終わらせない
野村證券に入社して1年目に立てた目標は「誰よりも失敗する」でした。失敗するためには動かなくてはいけない、という自分に発破をかける意味と、失敗したほうが早く覚えるだろう、という理由だったのです。
人生を実りあるものにしようとすれば、あらゆる現象から何かを学び取り、それを教訓にしていく必要があります。失敗はまさに、教訓の宝庫なのです。
「不易流行」という言葉をご存知でしょうか?
これは松尾芭蕉の俳諧用語で、「不易」は詩的生命の基本永遠性を有する体、「流行」は詩における流転の相で、その時々の新風の体。簡単にいうと「不易」とは時が経っても変わらない普遍的な原則、「流行」とは時とともに移ろい行くものです。つまり、人間に当てはめると、教訓としての学びは「不易」、日々起こるあらゆる現象は「流行」ということになります。
流行を流行のまま終わらせてしまうということは、何も生かされずまったく成長しないということ。それは人生の浪費です。
この「不易流行」のイメージを持っていると、日々起こる問題や失敗など、すべてのことが自分を成長させてくれることに気がつくことができるのです。
失敗をスルーせず、具体的な方策は勇気を出してしっかりと目を見開いて見ること。そのなかで、どんな小さなことでもいいから、いま自分ができることを探すこと。これがあなたのレジリエンスを強化していくのです。
修正やフィードバックを
前提に動く
レジリエンスのカギは「適応力」にあります。そのポイントは「変化するために行動する」ということです。つまり、修正・フィードバックを前提にアクションを起こすことなのです。
変化を放棄した人は揃ってこう言います。
「どうせ」
「無理だよ」
「面倒くさい」
これらを口癖にして動かない習慣が身についてしまうと、とても危険です。動くことなく、幻想の安定に溺れていると、人は次第に無気力になっていきます。知らないうちに問題に向き合う気力すら、なくなってしまうのです。
修正を前提に動くことができれば、うまくいったことからも、うまくいかなかったことからも学ぶことができます。無駄なことなんて何ひとつないんだと気づくこともできます。
だからこそ、初めからうまくいくことを考えずに、修正を前提に動くことが大切なのです。
理不尽のなかに
「理」を見出す
人は理不尽なことや不平等を目の当たりにすると、やる気を失ったり、問題を先送りにしたりしてしまいます。
その結果「事なかれ主義」「波風を立てない」「目をつぶる」といった事態が横行するのです。
しかし、そのときに見ないフリをした問題が、時間を経て良くなることなど、ほぼ100%ないのです。時間が解決してくれることは、期待しないほうが良いでしょう。レジリエンスに溢れた人間は、決して問題を先送りにしません。
理不尽な要求のなかでも問題を先送りにせず、無理やりにでも「理」を見出すことで対処していくと、ある時ふと「なるほど!」と合点がいくことがあったりします。
この「なるほど」こそが、レジリエンス・マインドがつくられた瞬間なのです。だからこそ、理不尽を前提に考えて、どのような不平等な状況だろうと「やる気」を失わないような心構えが必要になってくるのです。
何でもない
「当たり前」に感謝する
日々生きていると、仕事でもプライベートでも不安なことやつらいことがたくさんあります。しかし、人間はそれらを喜びに変えていくことができるのです。
それは「困難を希望に変える力」です。
レジリエンスは能力ではなく、技術です。そして、その技術を身につけるために必要なことは、当たり前のことに「感謝」する、ということです。
「感謝」なんて気持ちの問題だけじゃないの?と思う人もいるかもしれません。しかし「感謝」ができない状態というのは、責任をどこか人や環境に押し付けてしまっているので、何かを変えようといった積極的な行動がとりにくいのです。
しかし、無理やりでも「感謝」をすると、自分は恵まれているといった気づきが「何かできるかもしれない」といった希望をもたらし、能動的な行動力を生み出すのです。そしてこれは、自分に対するアプローチでも他人に対するアプローチでも共通したことが言えます。究極のレジリエンスとは、自分自身の中に最高のカウンセラーを構築することによって成り立つのです。
大切なのはどんな絶望下にあっても「できることが必ずある」ということです。もう一度当たり前のことに感謝して、レジリエンスという技術を今後の人生を実りある幸福に満ちたものにしていくための武器にしてください。