職業、「ハグ師」。

これ、冗談でなくプロとして、ちゃんとお金をもらっている人たちがいる現実のハナシ。

ロサンゼルスの「Cuddle Sanctuary」は、ストレスの多い現代社会に癒しとつながりをもたらすサービスとしてハグイベントを実施。そこで、トレーニングや研修を受けたプロのハグ師らによる“ハグセッション”が、高い人気をよび、参加者同士の新たなコミュニティをつくる、ひとつのキッカケになっているというのです。

人の温かさとつながりを求めて

Cuddle Sanctuaryの創始者であるSamantha Hessさんは、20代の頃交通事故に遭い、腰に慢性的な痛みを持つようになりました。治療を受けるうち、人の手で触れられることによって痛みが軽減することに驚きを覚えます。

複雑な家庭環境で育ち、最初の結婚も上手くいかなかったSamanthaさんでしたが、人と人の物理的なコミュニケーションによって、心も体も癒やされるということを知りました。そうして2013年、彼女は「ハグ師」としての活動をはじめます。

Samanthaさんはこの活動を通じ、人と人の触れ合いがどれほど大きな力を持つか認識しました。

例えば、幼い頃虐待を受けていた人や、病気や障害によって身体に麻痺を抱える人、心や体に障害を持つ人と触れ合うことで、人がどのように受け入れられたいと感じているかを知り、自分自身も相手に受け入れられていることに気づいたといいます。

それは、物理的なハグというコミュニケーションによって得られる大きな効果でした。

「抱きしめる」がつなぐ
あたたかいコミュニティ

Samanthaさんはハグ師としての活動をさらに発展させ、広めることを目的にCuddle Sanctuaryを設立。ビジネスとしてハグを行い、さらにプロのハグ師を育成していくことに決めた彼女の思いを伺ってみました。

私は今でこそ毎日笑って過ごしていますが、昔はそうではありませんでした。何年もの間孤独に苛まれ、ナーバスな気持ちになることもたくさん。恋人がいれば満たされるだろうと思ったこともありましたが、本当に欲しかったのは性的なつながりではありませんでした。

私はノンセクシャルな触れ合いを必要としていたのです。抱き合って寒さを凌ぐ人たちを見て自分が本当にしたかったことに気付き、ロサンゼルスでハグ師としての活動を始めました。

はじめこそ自分のためだけの活動でしたが、そのうちハグが持つ力と効果を確信するようになりCuddle Sanctuaryを設立しました。

活動は、孤独に苛まれる人々に新たなコミュニティを提供すること。触れ合いによってつながりが実感できる癒しの効果を発揮しています。長年実現したかったことが、今ようやく実りの時を迎えようとしています。

Cuddle Sanctuaryは3日間の認定イベントやトレーニングによってプロのハグ師やコミュニティリーダーを育て、その規模を徐々に拡大している最中。自分のペースでイベント参加もでき、初心者も大歓迎とのこと。

個人のハグセッションでは、プロによるガイドとあたたかなコミュニケーションでクライアントの緊張を解き、初めてでも安心してハグを体験することが可能です。

人同士のつながりが薄く、目まぐるしく変化していく社会に置いて行かれるような焦りや孤独感を感じる現代人にとって、誰かと触れ合い、コミュニケーションを取れる場は貴重な存在、人気を呼ぶのもわかるような気がします。

Cuddle Sanctuaryの活動は、誰かと顔を合わせて、触れ合うということの大切さを改めて私たちに教えてくれます。毎日の生活に疲れたら、大切な人を抱きしめたり、抱きしめてもらったり。それは疲れた心と体にとって一番の薬になるかもしれませんね。

Licensed material used with permission by Cuddle Sanctuary
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。