生みの母と育ての母。オープンアダプションで見つけた幸せのカタチ
ある女性が、生まれたばかりの息子に別れを告げている動画があります。彼女は泣きながら、絞り出すように言葉を紡いでいきます。それもそのはず、出産前にパートナーであった男性を亡くしたHannah Mongieさんは、苦悩の末に息子のTaggart君を養子に出すという決断をしたからです。
撮影されたのは約2年半前。どのようにしてTaggart君を養子に出すことに決めたのか、Hannahさんのパートナーは生前息子に会えることを楽しみにしていたなど、動画内で彼女は時に涙しながら、心の内を赤裸々に語っています。その後、ネットにアップされメディアに取り上げられると、多くの人の心を動かし拡散されていきました。
とここまでは、よくあるネットやSNS発信による感動話かと思いきや、しっかりと彼女のストーリーを把握してみたら、そこには私達が幸せになる“ヒント”が隠されていたのです。
「人生なんてこんなもの」
と思う前に
前述した過去の動画で、泣きながらTaggart君への思いを語っていたHannahさんですが、現在の彼女の様子をSNSで見てみると、充実した生活を送っているようです。
もちろん、悩みや心配事が全くないわけではないと思います。けれど、彼女を知ると、もう子どもに会うことはできないという従来の養子に対するイメージが覆されるのです。
Hannhaさんは、オープンアダプションという制度を取り入れていて、2歳になった息子と今でも時々会い時間を共にすることがあります。「息子が成長するにつれて、私への態度がよそよそしくなるのではないかと心配していましたが、今日会った時、喜んでくれました」「私の膝の上にのって、心地良さそうにしてくれました」と、自身のInstagramに息子の“成長記録”を書いています。
彼女の笑顔は、オープンアダプションといった制度だけでなく、Taggart君を受け入れている家族があってこそだと思うのです。
Hannahさんは今年の初めに、育ての母であるEmily Marshさんと一緒に「TODAY」の取材を受けました。Emilyさんは、その時、以下のように話していて、2人の母親は互いに良好な関係を築いていることが伺えます。
「Hannahの誕生日には、一緒にお祝いをするようにしています。私達はよく会って話しますし、自分の家族のように接し合っているんです」
子どもを養子に出したからその先には悲しい人生が待っている……。彼女のストーリーを知れば知るほど、そんなイメージは微塵も湧きませんでした。むしろ、逆境の中でもどう自分なりの幸せを見つけることができるか、について教えてもらった気がします。
生きていくなかで思わぬ出来事が起きても、「人生なんてこんなもの」などと諦めず、時には周囲の力も借りて、自分なりの幸せを手に入れることはできるのです。