「あなたと私の思い出」を、毎日忘れて、大人になった
生まれてすぐの頃は、顔が見えないだけで、隣にいてくれないだけで不安で、大きな声を出して泣いていたのに。
今では別々の街で暮らして、あまり顔を合わせることもない。電話越しの会話では、「もう大人なんだからさぁ、心配しすぎだよ!」と、呆れてしまう。
私の記憶の中にはもう、ほどんど残っていないのに
お母さんの記憶の中には、ずいぶんと鮮明に残っているんだろう。
紛れもなく、私が、あなたの体の一部だったこと。自分の足で立って、離れていくまで、ずっと。
愛おしくて仕方のない日も
疎ましくて仕方のない日も
息を吸っているだけで、嬉しいと想いつづけてくれる
そんな人がいる偉大さを、一番理解していたのは
まだこの世界にあるどんな言葉も、声にできなかった頃かもしれないね。