人生で大切なことって?アルツハイマー患者が「絶対に忘れたくない」思い出を語る
認知症の一種である「アルツハイマー病」は、記憶や思考力が徐々に失われ、最終的には日常生活に必要な作業すら困難になっていく病気。
私たちが忘れられない瞬間、忘れたくない瞬間も、彼らにとっては、「次第に忘れていく瞬間」となってしまいます。そんなアルツハイマーの人たちへのインタビューから見えてきた、人生において「大切なこと」とは?
Q.一番古い思い出は?
「人生で一番最初の思い出は?」と聞いてみると、それぞれからいろいろな話が出てきます。
「小さいころ大雨が降っていて水たまりに夢中になった」
「4歳のときに暑いコスタリカにいて、小川があったかな」
そしてひとりの男性はこう言います。
「当時はそれが僕の世界だった。でも、これ以上は思い出せないんだ」
Q.一番最近の記憶は?
次に、一番新しい記憶を聞いてみると、はっきりと答えることができず、女性は悲しそうに目を伏せます。
「すぐには思い出せないわ。アルツハイマーだもの…」
こちらの男性は、「今朝どこかに行った」という話をしようとしますが、途中で
「どこに行ったんだっけ?このインタビューが始まる前、何をしていたんだ?思い出せないよ」
Q.人生で一番悲しかった思い出は?
悲しい思い出を聞かれて、男性は愛する父を亡くしたときのことを語ります。
「父のことを本当に愛していたんだ。乗り越えるのは本当に大変だった。父が亡くなる時、ベッドサイドで手を握っていたよ」
「娘が日曜日に電話してきたの。それで、私は明日掛け直すねって言ったんだけど、できなかったの。娘は自殺したのよ」
忘れたいと願ってしまうほど、つらく悲しい思い出。でも、もしも本当に忘れてしまうとしたら……?そう考えると「悲しかった思い出」ですら、彼らにとって大切なものなのかもしれません。
Q.一番忘れたくない思い出は?
お子さんを自殺で亡くしたという先ほどの女性、ここでもやっぱりこう答えます。
「子供のことよ」
こちらの男性が忘れたくないことは、結婚式の思い出。
「妻との結婚式のことは、永遠に忘れたくない。お互いに見つめあってたんだ。その思い出は、できるだけ長く抱きしめていたいよ」
「忘れたくない、
覚えていたい」
「大切なことを、忘れたくない」「家族のことを、覚えていたい」。
当たり前とも言えるようなことが失われていくのが、アルツハイマー患者の苦悩。
いつか突然、当たり前だと思っていたことができなくなる日が来るのかもしれません。今日はいつもより少しだけ、人生の大切な思い出や家族について考える時間を作ってみては?