【世界初】アルツハイマー患者を救うべく、AI伝記作家が誕生
「やあ。私は世界初の人工知能の伝記作家です。」
これはフィクションではない。世界で初となる、AIが伝記を執筆するプラットフォームが誕生したのだ。
AI伝記作家こと「bAIgrapher」は、アルツハイマー病の患者が回想療法を身近で実用的なものにするためのプラットフォーム。この療法に人工知能を用いたアプローチとしては、世界初の事例だという。
回想療法とは、アルツハイマー病患者が過去の体験を思い出し、それに浸るというものである。認知予備力を強化し、病気の進行を遅らせる効果が証明されている。
効果が期待できる一方、介護する側の負担が大きいこともあり、これまでは導入と維持を続けることが難しかったのだそう。近年になってAIを利用したアプローチが検討され、システムの開発が進められてきた。
開発したのは、ブラジルでトップの医学部を持つポルトアレグレ連邦大学と、同国のIPGヘルス企業、AREA23。bAIgrapherの名は、伝記作家を指す「Biographer」と「AI」を組み合わせて付けられたものだ。
アルツハイマー病の患者やその家族から回想を聞き取り、人生の物語を書くことで、認知機能の維持を手助けする──それが、このAIの役割。
bAIgrapherは、400以上の名作伝記を学習したうえで、アルツハイマー患者にとって“最適な作家”となるようにトレーニングされたという。
実際の伝記作家のように、bAIgrapherはまず、デジタルプラットフォームを通じて患者とその家族や友人へインタビュー行い、エピソードを集めることから始める。
そして、これらの情報を基に、患者が「自分の過去と再びつながる」ことができるようパーソナライズされた伝記を作成する。完成後は本やオーディオブックとして提供され、患者は自分の伝記を読むことで思い出を追体験できるのだ。
アルツハイマー病は、個人だけでなく家族にも影響を及ぼす病。
bAIgrapherは、対人回想療法を、実用的かつ拡張可能、そして利用しやすい方法で提供できるため、彼らにとって救いの手となることが期待できる。
これまで「一般人のライフストーリー」が伝記になることはなかったが、人工知能の活用によって、たとえ著名人でなくとも、人生の回想録を遺すことができるようになる。しかも、それがアルツハイマー患者を救うとなれば、この技術は画期的な発明といえるだろう。
公式サイトには、実際の機能を試せるDEMOが用意されている。興味があれば、試してみるのはいかがだろうか。