ホログラムのイエス・キリスト「Deus in Machina」生誕。賛否両論が勃発

テクノロジーの進化は、ついに宗教の聖域にまで踏み込んだ。スイスの教会に「AIイエス」が登場し、世界中で賛否両論が巻き起こっている。

まるでSF映画のような話だが、これは現実の世界で進行中のプロジェクトだという……。

2000年の歴史をもつ「懺悔」とAIの融合

米「Gizmodo」によると、「Deus in Machina(機械仕掛けの神)」と名付けられたこのプロジェクトの中心にいるのは、AIによって命を吹き込まれたホログラムのイエス・キリスト。人々の問いかけに応答し、神学テキストに基づいた助言を与えるという。

一見すると、テクノロジーによって宗教体験がより身近になる画期的な試みにも思える。しかし、キリスト教礼拝の歴史の専門家であるJoanne M. Pierce氏は、このプロジェクトに対してある種の懸念を抱いている。「AIイエスが実際に人々の罪の告白を聞いて赦しているわけではない。しかし、本来信者が使うはずの実在の告解場にAIを設置した行為には、私は不安を覚える」と語っている。

告解の進化が意味するもの

カトリック教会にとって、告解は重要な儀式のひとつだ。その歴史は古く、初期のキリスト教では共同体全体の前で行われていた。その後、3世紀頃に司祭や主教への個人的な告白が主流となり、時代と共にその形式は変化してきた。そして現代、告解はAIという新たな局面を迎えている。

近年、オンライン上のコミュニティやサービスを通じて、人々のあいだでゆるやかなつながりが生まれている。しかし、同時に孤独を感じやすくなっているのも事実だ。AIイエスは、そうした現代人の心の隙間を埋める存在になり得るのかもしれない。

しかし、同氏は「人間同士の対話」という告解の本質的な部分を重視する。AIはあくまでもツールであり、人間の抱える複雑な感情や苦悩を真に理解することはできない、というわけだ。

「信仰のデジタル化」の先に待つ未来

興味深いことに、すでに現実の世界では、メタバース教会やVR寺院といった、テクノロジーを活用した新たな形の宗教活動が生まれている。オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」上には、すでに170万人以上のユーザーが登録する巨大な仮想教会が存在するというデータも。AI告解も、こうした流れのひとつとして捉えることができるだろう。

AIイエスは、私たちに「テクノロジーと宗教の未来」について、多くの問いを投げかけている。信仰のあり方、そして人間とテクノロジーの関係性を、私たちは今一度見つめ直す必要があるのではないだろうか。

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