AIは人類の敵か味方か:『ターミネーター』公開40周年にあらためて問う
「I'll be back」──。
冷酷な殺人アンドロイド「T-800」の放つ言葉は、映画史に残る名セリフとして、40年経った今も色褪せない。1984年公開の映画『ターミネーター』は、AIの反乱と荒廃した未来を描いたSFアクションの金字塔。
しかし、それは単なるフィクションとして片付けて良いのだろうか?あまりにもリアルな近未来を描いた作品として公開当時、世界に衝撃を与えた。そして2024年現在、私たちは『ターミネーター』が描いた未来に近づきつつあるのかもしれない。
冷戦下の恐怖を具現化
『ターミネーター』誕生の背景
「The Conversation」に掲載された記事を元にご紹介したい。
1984年当時の世界は、アメリカとソ連による冷戦の真っ只中。ロナルド・レーガン大統領が推進した「戦略防衛構想(SDI)」は、宇宙空間におけるミサイル迎撃システム構想であり、AIによる核戦争の恐怖が現実味を帯びていた時代だった。『ターミネーター』は、当時の人々が潜在的に抱えていたAIに対する不安を、エンターテイメントへの昇華した作品だったと言える。
テクノロジーは諸刃の剣
「テック・ノワール」が示唆するもの
その『ターミネーター』は、テクノロジーの進化がもたらす負の側面を描いたテック・ノワールに位置付けられる。1980年代、コンピューターの普及が始まり、人々の生活は大きく変わり始めた。それと同時に、テクノロジーに対する漠然とした不安、そして未来への希望と恐怖が交錯する時代に突入した。『ターミネーター』は、そんな時代の空気感を巧みに捉え、後世に語り継がれる作品となった。
AI脅威論は現実のものに?
『ターミネーター』公開から40年、スマホやAIスピーカーなど、私たちの生活はAI技術と密接に結びついている。しかし、それは映画で描かれた「機械が人間を支配する」という未来に、私たちがまた一歩近づいたことを意味するのだろうか。
1970年代以降、コンピューターは急速に進化し、社会のあらゆる場面に進出してきた。それと同時に、人間はコンピューターに仕事を奪われるのではないか、あるいは、自我を持ったコンピューターに支配されるのではないか、という不安を抱え始めた。
そして現代、ChatGPTなどの生成AIの登場は、私たちの生活を大きく変えようとしている。文章作成、翻訳、プログラミングなど、これまで人間にしかできなかった高度なタスクをAIが代行できるようになり、その精度は日々進化している。
「I'll be back」──。
劇中の象徴的なそのフレーズが、いま妙にリアリティをもって聞こえてくる。
テクノロジーは、使い方次第で人類にとって希望にも脅威にもなり得る。40年前の映画が投げかけた問いは、今も私たちに突きつけられている。私たちはAIとどのように共存していくべきなのか。映画史に残る傑作はフィクションを超え、現実を生きる私たちに警鐘を鳴らし続けているのかもしれない。
👀 GenZ's Eye 👀
物心ついたときからAIが存在し、なんなら共に成長してきた気さえする我々Z世代にとって、AIは人間の生活を脅かすものではなく、むしろ「上手に使って共存するもの」という意識が強いのが事実。実際ここ数年で、人間とAIがただ敵対するのではなく、互いに心を通わせたり、まるで人間のように愛を持って接してくれるAIを描いた映画なんかも誕生しています(深すぎる愛と執着がゆえに暴走してしまうときもありますが……)。テクノロジーの進化とともに、映画で扱われる“(恐怖の)AI像”も変化していくのでしょうね。