リアーナが手がけるコスメブランドのモデル「その正体」

誰も彼女を知らなかった

2017年4月22日、Instagramに1枚の写真が投稿された。そこに写っていたのは世にも美しいひとりの黒人女性。長くしなやかな手足と闇のように厳かに黒い肌は、息を呑むほど妖艶。

ヌードで、黄金に輝くアクセサリーを身につけて撮影された写真は彼女がモデルであることを物語っていたが、誰ひとりとしてその名前を知る人はいなかった。

彗星の如く現れた彼女は「Shudu」と名乗り、世界中の人びとを次々と魅了。瞬く間に莫大な数のフォロワーを獲得した。リアーナがプロデュースするコスメブランドの「Fenty Beauty」のモデルを務める姿もアップされ、彼女はますます注目を集めるようになっていった。

しかししばらくして、衝撃の事実が明かされる——。

彼女は「実在しない」

その言葉に多くの人が衝撃を受けた。中には落胆する人も。「Shudu」はイギリスの写真家であるCameron-James Wilsonが手がける、3DCGだったのだ。

とはいえ、巧妙な技術を駆使したドッキリか何か、なんて思ってはいけない。彼女はある深い思いのもと作られていたのだから。

モデル業界の多様化を象徴

作者のCameronはこう語る。

残念ながら「Shudu」は実在しない。でも彼女は現代の多くのモデルを象徴する存在なんだ。今ファッション業界には、肌の色が濃いモデルを起用する大きなムーブメントが起こってる。「Shudu」はそういったモデルたちを象徴している、その影響を受けて生まれた存在なんだ。

昔から白人至上主義を指摘されてきたモデル業界。世界的なファッションショー等でもその傾向はまだ根強いといわれる。

『The fashion spot』の報告によれば2017年春のコレクションの299のショーに出演したモデルのうち、74.65%は白人だったという。最近は「モデルに多様性を」という声と試みも目立ってきているし、この数字も以前よりは改善されてはきているが、それでも黒人や黄色人種は以前として圧倒的なマイノリティーだ。

スーダン出身のオーストラリア人モデル、Ajak Dengが白人至上のファッション業界にうんざりしてモデル引退を表明したというニュースもほんの2年前のハナシ。

そんな業界の動向に注目して、「黒の持つ素晴らしさ」を体現する「Shudu」は作られた。

彼女をリアルな存在として運営するか、フィクションだと公表するか、実のところどうしていいかわからないと感じたこともあった。でも僕は「Shudu」を単なる人気インスタグラマーとか、インフルエンサーにはしたくなかったんだ。彼女はあくまで「芸術作品」なんだ。

「Shudu」はその秘密を明かした後、現在も「バーチャルモデル」としてInstagramを更新し、魅力を発揮し続けている。彼女にまつわる騒動はモデル業界の多様化を後押しするのか、するとしたらどのような影響を与えてゆくのか、注目だ。

ところで、先に触れたとおりアジア系もいわゆるスーパーモデルの中では少数派。いつかアジア諸国でも「Shudu」みたいなCGのファッションモデルが作られて、名を馳せる日が来るかもしれない。

Top Photo by Shudu
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。