#4 接続と分断が同時に起きる場所――Neon Saltwater インタビュー
Vaporwave特集 #4
“Internet Aesthetics(インターネット美学)”という言葉がある。 ヴェイパーウェイヴに関連する、ビジュアルの雰囲気を表してよく使われている。
例えば、ネオンやヤシの木といったモチーフを使ってつくられた、80年代や90年代の雰囲気を感じるトロピカルでディストピアなグラフィック、懐かしいゲームのCGに感じるカクカクしたポリゴンやグリッチ感などなど。
このムーブメントに共通する不思議な魅力に対して「Aestheticだね」と評する感じ。想像上の部屋を具体化するシアトル在住のアーティスト・Neon Saltwaterの作品も、そういう創作物の一種だと思う。
作り手としてヴェイパーウェイヴを意識しているの? と聞くと、本人はNOと答えたけれど、その考えかたには共通点も多かった。目で見て楽しむヴェイパーウェイヴのヒントにしてみて!
――てっきりヴェイパーウェイヴを意識しているのかな、と。
無意識に影響されていたのかもしれません。
初めてヴェイパーウェイヴを知ったときは、不気味な感じがしました。ミステリアスなエネルギーがあったのは確かです。たぶん、自分も含めて多くの人が気にかけていたことなのだけれど、それが何だったのか正直わからなかったから。
なんとなくその概要を掴めるようになったきっかけは、香港の路地を深夜に歩いているような雰囲気とか、誰もいないショッピングモール、というイメージができてからかもしれませんね。
――Neon Saltwaterのプロジェクトをはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
もともとは、Crushという友だちとシェアするためにつくったプレイリストの名前だったんです。コラボレーションだったのですが、お互いの関係性を再確認するための音楽でもありました。
同時に、私が夢で見たり、頭の中で思い描いたりしている、数百万とある部屋や、そこにある明確な雰囲気を具体化するプロジェクトでもあります。今では、ビデオや、ポップアップとしても存在しています。
私の想い出は場所と雰囲気に紐付いているから、その感覚や情熱のイメージを部屋に表しているんです。ときには、音楽からインスピレーションを得ることもあります。
『Un-virtual』という作品は、私が初めて部屋を現実世界に再現した展示でした。私の作品を見て、ヴェイパーウェイヴの世界観に似ていると言う人はたくさんいます。
私自身、今28歳で80年代から90年代という時代に大きな影響を受けているし、子供の頃の記憶に感じるノスタルジアが、創作活動の大部分を占めています。私の作品を見る人は、そこから未来を感じることもあるみたいですね。
感情の変化を表現することが究極のゴールなので、私の作品からそういう雰囲気を感じとり、なんらかの思いを抱いてくれること自体は嬉しいです。
――ヴェイパーウェイヴや、“Internet Aesthetics(インターネット美学)”と言われているビジュアル感覚については、どんな印象がありますか?
定義できないものだと思っています。
私にとっては“常に変化していること”を意味しているから、その瞬間に私たちの周りで発生している何か、としか言えないポップカルチャーなんです。
ただ、インターネット独特のクレイジーさがあるなと感じるのは、それがどんなことであっても、“その瞬間とは直接関係を持つことができない”ところ。
その一瞬を数百万人の人々とシェアすることもできるし、人々のリアクションの肥やしにして次の何かを感じることもできますが、同時に分断されてもいる。
――真逆なものが共存している感覚?
同じひとつのことを、最悪のバージョンと素晴らしいバージョンとで、同時に行っている場所だと思うんです。
あらゆる物事がどんどん使い捨てされていくようになりつつあって、共感して、感情移入して、配慮をするというような、他人から受ける影響を失っていっているのではないかと怖くなることがあるんです。
その一方で、傷つきやすい人々でも自己主張できる創作環境を育むことは、インターネットなしではできないことだとも思いますし、バーチャルな体験を通じて他者との繋がりに心地良さを見出すこともできます。
接続と分断が同時に起きているんです。そういうところは、おもしろいですよね。
――真逆のものが混在している不可解さみたいなものが、インターネットならではの美意識として楽しまれているのかもしれませんね。貴重なご意見ありがとうございました。
彼女が頭の中で思い描いた無数の部屋はコチラから確認できます。ぜひ、バーチャルとリアルの両方をチェックしてみてください。