楽しんでほしいけどごめん。英国パブが「アンハッピーアワー」に踏み切ったワケ
ハッピーアワーからお店でちょっくら乾杯!
お得にお酒を楽しめるまさに幸せなひとときだが、実はいまイギリスで、ハッピーアワーに逆行する「アンハッピーアワー」が生まれているらしい……
というのも先日、英国の大手パブチェーン「Stonegate Group(ストーンゲート・グループ)」が、週末などのピーク時にドリンク価格を上げる「サージ価格」の導入を発表したのだ。
ドリンク1杯当たり20ペンス(およそ37円)ほどの値上げで、同社が所有するパブ4,500店舗のうち、約800店舗で適用されるとのこと。
パブを愛するイギリスでなぜ?
もともと「Public House(パブリック・ハウス)」を意味するパブ。人々が集い、食事やドリンクを楽しみながら語らう、まさに“公共の家”だ。数百年にもわたり、イギリス人に親しまれてきた生活の一部といえよう。
そんなパブを愛する英国でなぜ、値上げという苦渋の決断が下されてしまったのだろうか。その背景には、人件費の確保とライセンス要件に伴うコスト増大という大きな問題が。
混雑時に、より多くの人手を要することは想像に難くない。それに加えて、英国では営業許可を取得するために、お酒の提供時間の申請やライセンス料の支払いが求められるそう。
パンデミックによるパブ離れも追い風となり、ストーンゲート・グループは2023年4月までの6か月間で2,300万ポンド(約40億円)の損失を報告している。
こうした厳しい状況に対し、“アンハッピーな時間”として消費者にも小さな負担を課すことで、増大するコストをカバーしようというわけだ。
アンハッピーアワーはパブを救うか
それとも、パブ離れを促すか
需要と供給に応じて価格が変動するサージ価格は、航空券やホテルの料金を中心に広く取り入れられてきた。最近では、テイラー・スウィフトのライブチケットにも導入され、一部のファンの怒りを買ったとも。
そんな価格システムが、国民の文化とも言えるパブにやってきたとなれば、消費者は黙っちゃいない。
英国パブの利用者を代表する団体「Campaign for Real Ale」のCEOトム・ステイナー氏は『NewYork Times』に対し、「アンハッピーアワーは、パンデミックで経営が悪化したパブにとって、消費者を呼び戻す助けにはならない」と主張。
一方で、パブの決定を支持する声も上がっている。
「サージ価格は何十年も続いており、ストーンゲートだけを批判するのはおかしい」「そもそも通常の値段で楽しみたいのなら、混雑しない時間帯に行けばよいのだ」と。
今後この新たな価格制度が、パブの未来に影響を与えることは間違いないだろう。
とにかく、価格はアンハッピーでも、お店で過ごす時間だけはハッピーであることを願いたい。