これ、アリ?豪でベッドをシェアする「Hot Bed」が増加するワケ

ねぇねぇ、知らない人とベッドを共有する「Hot Bedding(ホットベディング)」って聞いたことある?

近年、会社で自分のデスクを与えられずに、どこで作業をしてもいいという職場環境になり、デスクを他人と共有して使用する「Hot desking(ホットデスキング)」が受け入れられている。

デスクの共有には抵抗がない筆者だが、「さすがにベッドは自分だけで使いたい……」って思ってしまう。でも、そんなホットベディングはオーストラリアで浸透しつつあるというんだから、めちゃくちゃ気になる。

今回は、他人とひとつのベッドを共有する「Hot bedding」に迫ってみよう。

「Hot Bedding」の実例

『SBSNews』の取材に応じたのは、インドからオーストラリアに来た19歳の留学生プリヤンカ(仮名)。

彼女は、メルボルンでベッドルームを借りているが、家賃550ドル(約5万2854円)を、なんとトラック運転手の男性とシェアすることで折半して支払っているんだそう。夜は彼女がベッドで眠り、日中は彼がベッドを使っている。ホットベッドは、一緒にベッドで寝るのではなく、交互にベッドを使用するというスタイル。

トラック運転手が休みの日は、プリヤンカはベッドを使うことができず、代わりにマットレスがギュウギュウに入るくらいの“物置”で寝泊まりしているんだそう。

このような生活に対し、彼女自身はストレスを感じていると漏らす。そりゃそうだろう。自分だけのスペースがないことで、身体も心も休まらないってことは容易に想像ができる。

では、なぜホットベッドを利用する?

実際にストレスを感じるというのに、なぜ、彼女はホットベッドを利用するのだろうか?

その背景には、インフレ家賃の高騰という経済的に逼迫した状況がある。つまりは、ホットベッドはそれに対抗するための創造的な解決策ということか。

プリヤンカの住むオーストラリアを含め、世界各地で物価が上昇している。オーストラリア統計局は、2022年から2023年にかけて生活費指数が7.3%上昇したと報告している。移民や留学生は、インフレによる経済的苦境の影響を受けやすいかもしれない。彼らはより良い生活を求めて国を移していても、実際の生活はもっと厳しいかもしれないのだ。

2021年にシドニーとメルボルンに住む7000人の留学生を対象としたシドニー工科大学の調査によると、留学生の3%が家賃を節約するためにホットベッドを利用していることが報告され。また、調査対象者のうち4割が経済的負担のために食事を抜いたことがあると回答したらしい。

逼迫する経済状況の中で……

ホットベッドはオーストラリアでは一般化しつつあるが、実際、多くの人々はいまだにルームメイトを得るという伝統的な方法を選んでいる。ミレニアル世代は、高騰する生活費と持ち家率の低下に直面し、「ルームメイト世代」として知られるようになった。また、高齢者との共同生活を選ぶ若者もおり、世代間共同生活のためのプログラムを開発している大学もあるんだとか。

プリヤンカの経験は、留学生が直面する経済的苦境とその家族が払う犠牲を例証しているといえるだろう。

プリヤンカの家族は経済的な犠牲を払って彼女をオーストラリアに送り出したが、彼女はいまだに食費、家賃、交通費に苦労しているらしい。ただ、彼女は自分の生活状況について、家族にはすべてを話すことができないでいるという。

初めてホットベディングについて知った時は少し抵抗感があった。しかし、彼女の状況を知ると、ベッドを共有するという選択肢があることが、生活環境の悪化を少しでも妨げられる要因になっていると考えられるのではないだろうか。

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