ゲーム特化のサマーキャンプに潜入。注目度増すゲームの「教育的価値」

スポーツ選手、医師、教員……小学6年生の男女に聞いた「将来就きたい職業」のトップ3だそうだが、昨今「プロゲーマー」も子どもたちが憧れる職業のひとつに定着しつつある。

エンタメにとどまらず、教育的な意図をもったプログラムへの関心も高まるeスポーツ。この夏、渋谷のど真ん中で、ゲームが大好きな子どもたちのためのサマーキャンプ「CR Fortnite CAMP」が開催された。プロゲーマーを体験するその内容を詳しく紹介していこう。

教育プログラムとしてのゲームの可能性

プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」(CR)が監修する小中高生向けのプロゲーマー体験イベントCR Fortnite CAMP。人気シューティングゲーム『Fortnite』の現役プロ、元プロ、キャスターによるレッスンやミニ大会などが2日間にわたって実施された。

eスポーツを通した成長や将来を考えるきっかけづくり、eスポーツを学びながら社会性を養うこと、さらにはCRメンバーによる対面指導という思い出づくりなどをテーマにプログラムは構成されている。

CR Fortnite CAMPは、ゲームや新しい時代の多種多様なエンタメを扱う「株式会社Brave group」の事業会社である「Game & Co.」によって企画運営されている。エンタメとして比較的若い産業であるeスポーツの分野において、先んじた教育コンテンツであるサマーキャンプを運営する同社プロデューサー増井洸貴氏に話を聞いた。

©Game & Co. 2024

マンツーマンレッスン時はコーチ(Fortnite公式キャスター「トンピ?」)も参加者も真剣な表情

イベントの狙いは
「ゲーミングカルチャー」そのものを識る

本企画のキーワードは「プロゲーマー体験」にある。しかし、単にプロゲーマーを増やしていくというゴール設定ではなく、ゲーム好き、eスポーツ好きの子どもたちの未来を考えることを目指したプログラム構成という部分に注目したい。将来の夢をプロゲーマーとすることも、あくまで一つの選択肢というスタンスだ。

現役プロ、元プロ、キャスターなど、eスポーツ及びゲーミングカルチャーにおけるプロフェッショナルと直接交流できる機会を創出することで、幅広い未来像をイメージしやすくなるという仕掛けが施されている。

本プログラムは「CR Gaming School」という、『VALORANT』や『APEX LEGENDS』などの人気FPSタイトルのオンラインマンツーマンコーチングが実施されている中で、新たに『Fortnite』を扱ったオフライン実施企画として誕生。

『Fortnite』のコーチングを行う上で、コーチ人材やプレイヤーが若年層に偏っている特性から、オンラインでのマンツーマンコーチングではなく、“キャンプ”という形式でオフラインで実施するに至ったそう。

『Fortnite』の競技シーンには、10代前半から参加する選手が多いゆえ、子どもたちが自身の将来的なビジョンがまだはっきり見えない中で、競技参加の意思決定をすることになる。選択肢を狭めかねない意思決定をする前に、子どもたちが将来を考える機会の創出を狙う。

ゲームを通じて
“将来”を見据える子どもたち

具体的な職業に踏み込んだ話題というよりは、プログラムの講師であるプロフェッショナルとの対面での会話の中から思い出をつくる過程で、子どもたちに少しずつ将来について考える機会を提供するCR Fortnite CAMP。

キャンプに参加している子どもたちの中には、すでに競技に挑戦している子もいるため、シンプルに競技者として背中を押すという面を持つ一方で、そもそも自身が大好きなゲームとどのように向き合いながら生きていくか、日常の中で勉強とどのように両立させるかなどを対話に織り込んでいるというのも興味深い。

参加者たちの声に見る
ゲーミングの熱量

下は小学生から上は高校生、広い範囲での公募となった本プログラム、実際に参加した子どもたちのメインは小中学生だったということからも、『Fortnite』が他のゲームタイトルと比較して、若いゲーマーにプレイされていることを実感する。

年の離れた参加者同士でも『Fortnite』という共通言語を通して、垣根を感じさせないコキュニケーションが生まれていく。ゲームはただの娯楽としてではなく、こうして教育やコミュニケーションツールとしての役割も認識されはじめている。

さて、2日間のプログラムに参加した子どもたちの親向けのアンケートからもサマーキャンプ開催の意義が見えてくる。プロゲーマーと交流するという稀有なシチュエーションに感謝する声とともに、ゲームとの向き合い方が多面的に変化したという声もあがっていたそうだ。同時に、使用機材に関する質問や、韓国へのeスポーツ留学の検討など、専門的かつ具体的な質問も寄せられたという。

今年で3回目となるキャンプだが、皆勤している参加者もいるほどにリピート率は高く、今年も公募開始から1週間を待たずにすべての席が埋まったことも付け加えておこう。

©Game & Co. 2024

ゲームという共通言語を通じて、それぞれのプレーを見合いコミュニケーションをとる子どもたち

「CR Fortnite CAMP」
その先の未来へ

これまで開催されてきたCR Fortnite CAMPを踏まえて、「Game & Co.」はさらなる企画拡大を検討しているようだ。主に短期、中期、長期に分けてこのような展開をイメージしているという。

短期的には、地方都市での開催。遠方からの参加者も多いことを考慮して、渋谷「CR Gaming Space」にとどまらず、地方都市へと拡大していくことを検討中。

中期的には、地方自治体との連携を強めたイベントの企画。eスポーツがエンタメにとどまらない教育的価値を見出せるコンテンツであるということの効果やエビデンスを実証していくことが狙いにある。

そして、長期的にはキャンプを経験した卒業生がeスポーツ、ゲーミングに携わる何らかのロールにつながっていくこと。それは、直接対話したプロや演者はもちろん、こういったイベントを企画する裏方に至るまで様々な形でという意味で、だ。

現在、東京理科大学との共同研究を通してアカデミックな試みもスタートさせた「Brave group」。eスポーツ領域のみならず、あらゆるステークホルダーを巻き込む一大ムーブメントを最先端で牽引し続ける彼らの示す未来には、子どもたちならずとも、いちeスポーツファンとして胸の高鳴りを感じずにはいられない。

©Game & Co. 2024

コーチレッスンでは、独自の教材も用いられている

Top image: © Game & Co. 2024
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。