「Twitch」VTuber向けの服装規約を導入

アバター越しに画面を彩るVTuber。 その活動はゲーム実況や音楽活動にとどまらず、今や企業案件やTV出演など活動の幅を広げている。 しかし、その影で彼らをとりまく環境は、新たな局面を迎えている。

急成長を遂げるVTuber市場と
「Twitch」の戦略

VTuber人気は世界的に拡大し、米国発のライブ配信プラットフォーム「Twitch」でも、ますますその存在感を増している。トップVTuberであるIronmouseは、32万人以上の登録者を有しており、これはTwitchがVTuberを無視できない規模にまで成長したことを如実に物語っている。

急増するVTuberとその視聴者を取り込むため、Twitchは様々な戦略を展開してきた。しかし、それと同時に、既存のコミュニティガイドラインとの間に埋められない溝が生まれていくことになった。

「Enforcement Notes」が
投げかける波紋

VTuberの増加に伴い、既存の配信者に向けた服装規定の解釈や適用範囲が曖昧になった。 アバターという「仮想の身体」を纏うVTuberに、どこまで既存ルールを適用すべきか、議論が巻き起こったのだ。

この対応策としてTwitchは「Enforcement Notes(エンフォースメントノート)」を導入。 これは、VTuberを含む配信者に対して、服装規定に関するより具体的な解釈と適用基準を提示するものだ。

米メディア「Tubefilter」に掲載された記事によると、Twitchのサポートアカウントの投稿を引用し、エンフォースメントノート導入の背景をこのように説明。

今後、Twitch上でどのようにルールが適用されるかをエンフォースメントノートを用いて概説していく。新たな『メタ』が既存のポリシーに違反する場合やデータの急増が見られる場合、またコミュニティの混乱や議論が大きい場合は、関連するポリシーの下にエンフォースメントノートを公開し、どのような行為がルール違反になるのかを明確にする

この取り組みはプラットフォームとしての透明性を高める一方で、表現の自由を巡る議論を再燃させているようだ。

メタバース時代の新たな課題
「自己表現」と「規制」のバランス

近年、注目を集める「メタバース」は、現実世界と同様に(あるいはそれ以上に)、自己表現と規制のバランスが求められる世界

VTuberの服装規定問題は、そのままメタバースにおけるアバター表現の議論に発展する可能性を秘めている。 アバターは単なるデジタル上の衣装ではなく、個性を表現し、コミュニティに所属するためのアイデンティティとして機能するからだ。

いっぽうで、プラットフォームビジネスとしての側面も無視できない。 同記事では、Twitchの広告収入がYouTubeなどの競合に比べて少ないことを指摘。 ブランドイメージを重視する広告主の意向は無視できず、過度な規制は避けられないという現実がある。

表現者、プラットフォーム、ユーザー
未来へ向けた対話

VTuberの服装規定問題は、新たなテクノロジーと文化が交錯する現代社会における、ひとつの縮図と言えるだろう。 表現の自由、プラットフォームの責任、ビジネスモデルの持続可能性──。 複雑に絡み合ったこれらの問題に、容易な解決策は存在しない。

重要なのは、VTuber、プラットフォーム、そして視聴者である私たちが、それぞれの立場や意見を尊重し、継続的な対話を通じて、新たな共存関係を築き上げていくことではないだろうか。

👀 GenZ's Eye 👀

VTuberも生身の人間も、一人の配信者として節度のある格好で配信に映るのはあたりまえのように感じられる。ただ、VTuberの衣装というイラスト表現の幅が必要以上に制限されすぎると、これまでのカルチャーが作り上げてきた世界観が崩れてしまうからこそ、丁度いい塩梅での規約の調整が必要だろう。

Top image: © Shutterstock.com / Ink Drop
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。