ガチゲーマーが考えた「超効率型ラーメン」が示唆する社会変化
食べて、寝て、活動する──人間、そして生物の基本のき。
疑問を抱くまでもないルーティンに思えるかもしれないが、この世には、あまりにも“生物らしくない”生き方をする人だっている。
分かりやすい例は、ヘビーなゲーマーたち。
典型として筆者自身を挙げると、自分にとって生活の最重要項目は「ゲームや趣味の時間の確保」であり、そこから逆算して他を……つまり食事や睡眠を削っていく。
ただ、らしくないとは言え「食べない/寝ないと死ぬ」という生物の宿命は超えられない。そういうわけで、我々はどうにかして趣味の時間を減らすことなく、最低限のエネルギーを補給する方法を探しているのだ。
科学の現状から言うと、睡眠時間の削減は難しい。なら答えは一つ、食事を”最も効率的な方法で”済ませるまで。
先日、そんな人種に向けて、日本ハムが革新的な商品を発売した。
極限のタイパでラーメンを食べたい──ゲーマーの声に応えるべく、日本ハムが出した答えは「片手ラーメン」だった
7月27日に発売された新商品『BOOST NOODLE®』。簡単に言うと、片手で食べられるラーメンである。
プレスリリースによれば、日本ハムは本品を”究極のタイパラーメン”として打ち出している。片手でパウチを掴み、吸い込むだけで「濃厚魚介豚骨スープと絡み合った状態」の「本格的な味わいのラーメン」を堪能できるというのがセールスポイントのようだ。
スパウトパウチの中にゼリー状のスープと麺、小さくカットされたチャーシューやメンマまでもが入っており、単なる栄養補給というよりも、小腹を満たす「食事」をとれるのが魅力。
また、120gと小腹が空いたときにちょうどいい分量で常温保存可能、こんにゃくが使われた特製の麺により放っておいてもふやけない点など、食事の準備を省けるように細部まで考え抜かれている。
“当事者”が生み出すからこその強さ。
「ゲーマー×ラーメン」という組み合わせのシナジー
この商品のもう一つの特徴となるのが、35ミリグラムのカフェインが配合されている点だ。
食事時間を省きたいほどに何かに熱中している人にとって、カフェインによる集中力ブーストは捨ておけない魅力と言えるだろう。
特にゲーマーにおいては、(経験則的に)エナドリやコーラ等でカフェイン漬けになっているために食欲が湧かないことも多いのだが、そんな人でも大丈夫。
これは麺=食事であると同時に、集中力をBoostするエナジー(カフェインとも言う)の補給源でもあるのだ。
時間を割いて食事を摂るほどお腹が空いていなくとも、食後の血糖値上昇による集中力低下が煩わしくとも、このラーメンにおいては気にする必要がない。あくまで”エナドリ感覚”で摂取できる点で、趣味人の多くにとって非常にコアなアイテムかもしれない。
おまけに、思い当たる限り、なぜかゲーマーにはラーメン好きが多い。「ゲーマー×ラーメン」という組み合わせのシナジー効果は、見かけよりも強いように思える。
そもそも、この商品を考案した張本人も、きってのゲーマーでありラーメン好きなのだそう。
リリースによれば、「自身もゲーマーである若手開発担当者が、オンライン対戦型ゲームを長時間プレイしながらもラーメンを食べたいとの発想からたどり着いた」とのこと。
開発者自身が当事者だからこそ、“解像度の高い”アイデアが誕生したのだろう。
かつて仕事人、いま趣味人。
“タイパを求める瞬間”が時代と共に変化している?
昨今、ワンハンドフードは一種のトレンドだ。
見た目の映えやグルメ性が求められるほどに多様化しているが、思い返せば、前から「ワンハンドで手軽に栄養補給」をウリにしていた商品はいくつもある。
しかし、元来こうしたフードは「忙しい労働者」に向けたものだったのに対し、『BOOST NOODLE』を含む最近の商品の多くは「自分の時間」に焦点を当てたものが多いことに注目したい。
「仕事こそ至高」たる昭和の価値観を受け継ぐ平成において、今で言うタイパ=時間を惜しむ必要があったのはオフィスだった。
一方で、令和のいま人々がもっとも大切にしているのは?言わずもがな、自分自身の時間だ。
ならば、プライベートを有意義に過ごすために、ワーキングタイムの外でもタイパ重視のアイテムが欲しくなることには合点がいくのではないだろうか。
そう考えると、趣味の時間に没頭し、新しいライフスタイルを体現するゲーマーたちをターゲットとする商品が登場したことは、社会的な意味を帯びているとも言えるかもしれない(参考例として、会社員や受験生等をメインターゲットとしていた『GABAチョコレート』は、最近になってゲーマー及びeスポーツプレイヤーを狙った広告をTwitch上で流している)。
カフェイン入りのラーメンは少しニッチだが、仕事以外でタイパが必要な状況はまだまだあるはずだ。
これから先、ビジネス起点とは異なる”N=1視点の欲望”が、共感を集める絶妙な組み合わせを増やしていくかもしれない。