指先に革新を。CASIOから「G-SHOCK」のDNAを受け継ぐ「指輪型スマートウオッチ」

腕時計の常識を覆し続ける「カシオ計算機株式会社」から、再び目が離せないプロダクトが登場した。

今月19日、創業50周年という節目に発表されたのは、なんと指輪型のスマートウオッチ「CRW-001」。同社は、この革新的な製品を「50年にわたる時計製造の歴史と革新性を体現するもの」と位置付けている……!

「おもしろそう」から始まった開発秘話

同プロダクトは指先に収まるコンパクトなサイズながらも、時刻表示、カレンダー、デュアルタイムゾーン、ストップウオッチなど多彩な機能を搭載している点に、カシオの技術力の高さを感じずにはいられない。それでいて、遊び心と洗練されたデザインは健在だ。

指輪の内径は20mm(USサイズ10.5)で、サイズ16と19に対応するスペーサーも付属。価格は120ドルで、アメリカでは12月26日から購入可能となる。日本ではすでに大好評により、抽選販売が終了・完売してしまっているが、今回は改めてその技術の素晴らしさに迫ってみたい。

同社が語った開発の裏側によれば、「CRW-001」は「G-SHOCK」の魅力を新たな形で表現したいという、開発部門のシンプルな思いから始まったとのこと。

遡ること昨年3月末、技術共有の場で中国工場の得意とする金型技術を用いて製作された、時計の形状を精密に再現し、美しさと快適な装着感を両立した指輪が披露された。

当初、この指輪は時計としての機能はなかった。しかし、この指輪を見た先輩社員の一言の雑談が、開発チームの心に火をつける。

「これにモジュールを組み込んで、ちゃんと時計として使えるようにしたらおもしろいかも」

ここから「指輪型時計」という、前例のない製品開発という挑戦が始まったという。

1946年の「指輪パイプ」から続く
カシオの挑戦

さらに興味深いのは、この製品が1946年に発売されたカシオ初の製品「指輪パイプ」から着想を得ているという点。

タバコ用のパイプを模した指輪型の製品は、当時の日本において画期的なものであった。創業時から脈々と受け継がれてきた「遊び心」と「革新性」は、79年の時を経て、全く新しいかたちで現代に蘇ったといえるだろう。

© X / CASIOJapan

サイズはわずか10分の1
超小型化を実現した技術力

そんななか開発チームの前に立ちはだかったのは「小型化」「コスト抑制」「量産化」という、3つの大きな壁。特に小型化は、腕時計の常識を超えた挑戦を要求されたという。

「CASIO RING WATCH」に搭載されるモジュールは、G-SHOCKの「DW5600」シリーズと比較して、サイズはわずか10分の1。この極小サイズに、時刻表示機能だけでなく、日付表示切り替えやストップウオッチ機能まで盛り込むという。

度重なる試行錯誤の末、開発チームは、部品の小型化・薄型化はもちろんのこと、素材の見直しや基板実装方法の見直しなど、あらゆる角度から技術革新に取り組んだ。

この状況について、プロジェクトの中心人物のひとりとしてモジュールの開発を担当した有田幸喜氏は「従来ならやらないこともやらざるを得ない状況が多々出現し、そうしたときには考え方を変え、それまでの常套手段をいったん捨てることにした」と語る

その結果、従来の常識を覆す、超小型モジュールの実現に成功したのだ。

カプセルトイ、
そしてSNSの「いいね」が後押し

開発過程でチームを勇気づけたのは、取り組み開始からわずか3ヵ月後に登場した、カプセルトイ版のG-SHOCKの存在だ。SNS上では、「実際に動くものだったら欲しい」という声が多数見られ、開発チームは「指輪型時計」への潜在的なニーズの高さを改めて認識したという。

© X / CASIOJapan

「身につける」から「纏う」へ
時計の概念を変える可能性

「CASIO RING WATCH」の登場は、単に時計の形状が変わっただけではない。時計という概念そのものを変え、「身につける」から「纏う」という、新たな価値観を提示する可能性すら秘めている。

同氏は、さらに「今回リングウオッチのために開発した小型モジュールは、今後他の形状の製品にも活用していけると考えています。このモジュール自体も、これが最終形とは思っていません。さらに進化させて、より驚きのある何かをさらに生み出せていけたら」と語る。

今後、この超小型モジュールが、時計の枠を超えて、どのような製品に進化していくのか。伝統をつなぎ「今日を超える」カシオ計算機が仕掛ける、未来のイノベーションに驚かされる準備はできている。

Top image: © Casio America
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。