リアル体験を共有できる「音楽フェス」は、人間をしあわせにする(研究結果)
フェスやライブ会場にいるとき、何かに取り憑かれたような高揚感に浸れるのには理由があった。心地いい音楽によって、単に自分がハイになるだけでなく、周囲の人々からも同時にエネルギーを得ているから。じつはこうした相乗効果、数千年前から連綿と続く人間の習性なんだとか。
音楽フェスに行く人ほど
しあわせを感じている
集団で大いに盛り上がることは、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを減少させ、ストレス発散にもつながっていて、精神にとっても重要なこと。フェスに出向いて騒ぎまくる人は、まったく赴かない人に比べ多幸感を有しているという。
豪ビクトリア州のディーキン大学で実施され、「Psychology of Music 」に発表された最新の研究では、人々の幸福度と音楽イベントへの参加不参加との関連性を示している。
だが、被験者1,000人に対して行われたこの研究において、フェスやライブに単に多く参加することで、受動的に幸福感を得られることを証明した訳ではない。では、フェスをはじめ、心から楽しめるイベントに参加しているとき、生物学的に人間の脳内でどのような変化が起きているのだろう?
カギは、大勢が同時に
行動や意思を合わせること
行動や意思を合わせること
人間の進化によって体得した習慣や心の持ち方が、我々の行動にどう影響を及ぼすかを科学する進化心理学の専門家たちは、「意思の疎通や、他人との関係、絆の強化を図るため、有史以来人間はつねにダンスを利用してきた」と推測。
今日のフェスやライブ会場において飛んだり跳ねたり、踊りまくることも、広義に捉えれば、関係を深めるコミュニケーション方法としては同じこと、と。
そして、踊りまくることでエネルギーを他人と共有し合う現象は、19世紀後半のフランスの社会学者エミール・デュルケームが説いた「集合的興奮」に起因するものだという。これは、ある一つの接点で行動を共にしながら、同じ思考を同時にやりとりできる何かに、多くの人が関与する際に発生する感覚を指す。
これをフェスやライブに置き換えてみれば、その「接点」ないし「行動」が高揚感であり、一緒になって体を揺らすことにもなる、ということらしい。
似たような感覚は、きっとスタジアムでのスポーツ観戦中にも得られるだろう。行動や意思を共にする無数の人々に囲まれることで、他人と空間を共感し、一緒に盛り上がる。人間はある意味スピリチュアルな領域へと、自らの意思で精神を引き上げることだって可能だ。
リアリティを共有する
40万人以上の観客を集め、音楽史に残る伝説的野外フェスとして、今でも語り草となっている「ウッドストック・フェスティバル(1969年)」では、すべての人々を結びつけるほどのエネルギーや気の流れが、会場全体を埋め尽くしていたに違いない。
どんなドラッグをやっているか、どれほど泥酔しているかに関係なく、こうしたエネルギーの充満やうねりを、あなただってフェスの現場で少なからず感じたことがあるはずだ。
好きなアーティストで選ぶフェスのスタイルから、次第に「踊れる曲」があるかどうかが重要という人も増えてきているという。そこにしかない熱気やうねり、こうしたリアルな体験を大勢で共有することが、遺伝子レベルでしあわせを味わっていると言えるのかもしれない。