告知は0点。中身は100点。この音楽フェスはほっとけない。
驚いた!
2017年に開催された音楽フェス「FESTIVAL de FRUE」に、THE MASTER MUCISIANS OF JOUJOUKA(通称:ジャジューカ)が出演していた。モロッコ・スリフ族の村で先祖代々受け継がれている音楽家集団だ。とってもマニアックなワールドミュージックの世界。
現地で見た人の話を聞いたことがあったせいもあって、まさかそんな濃ゆい存在が去年静岡の音楽フェスに来ていたなんて露知らず、よけいにびっくりしたのだった。
彼らの音楽は、乱れた心を治癒するバラカ(超人的能力)を秘めた、数千年の歴史がある神聖なものと言われている。これまでに、欧米のビート詩人やヒッピーたちを魅了し、ザ・ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズや、心理学者のティモシー・リアリーなんかも、彼らのもとに集ってきた。作家のウイリアム・バロウズは、この音楽を「世界最古のロック」と呼んだとか呼ばないとか。
ジャジューカの音楽家たちは、いわゆるアーティストじゃない。ツアーにひっぱりだこな世界的ミュージシャンとは違う。基本的にライブを見るなら、会場はモロッコのジャジューカ村で毎年開催されるフェス一択。しかも、全世界から50人しか参加できない超激レアイベント。そんな彼らの初来日を成功させたのだ。
来場者の話を聞くと、会場では現地を模したテント内でPAナシの生音ライブをするなど、こだわりかたも半端じゃなく、そのほかの出演者も豪華だった。だけど、主催者の話では、全然告知ができてなくて、ぶっちゃけ大赤字!
だがめげない。そんな濃厚なフェスを今年も開催する予定だと言う。早くもちょっと、いや、かなりピンチに陥っているらしいのだけど。
“世界最古のロック”とも言われる
ジャジューカ音楽が初来日したフェス
2017年のフェスは大赤字だった一方で、来場者の満足度はめっぽう高かった。その声の一部を抜粋して紹介。
すごすぎて、まさに夢だったんじゃないかと感じる。
音楽に詳しいわけじゃないけれど音楽の力をすごく感じた貴重な体験。来年あるなら絶対また行きたい。
趣味を超えて、未知のものへのそわそわドキドキを味わえたFRUEたのしかったな〜。
完全に、心底音楽が好きな人の受け皿となるイベントぽい。
音キチの人が最高の時を作り出すために練られた空間。
よみうりランドでのMMWのプレイに会場全員がスタンディングオベーションになったあの時を思いだした。──CAMPFIRE「夢のような野外フェス・FESTIVAL de FRUE 2018の開催に向けて」より
会場も良かった。つま恋 リゾート彩の郷というところで、旧ヤマハリゾートとして利用された施設のため、音響設備の良さは折り紙つき。音楽の聖地とも言われている。アクセスもよく、宿泊施設もあり、家族連れにも優しい。雨天にも強い。聞いた話では、フェス飯にもポリシーがあり、ぜんぶ無化調でめちゃくちゃ丁寧につくられてて超旨かった! とのこと。
そんでもって、とにかく出演者がディープというわけ。トルコから来たBABAZULAなど、これは盛り上がっちゃうでしょ……ってなライブの一部がInstagramで検索できる。
何がスゴイって、このクセの強いブッキングだ。
少し話が変わるが、FRUEはこの5月にもブラジルの音楽家・エルメート・パスコアールを日本に招聘した。2年連続だった。彼は、マイルス・デイヴィスに、この星で最も重要な音楽家のひとりと評された、なんて言われる知る人ぞ知る超大物。熊本・大阪・東京でのパフォーマンスはどれも素晴らしかったと、あちこちから評判が聞こえてきた。自分も5月13日の2ndセットで、その事実を目の当たりにした。
そこで、FRUEの山口さんに話を聞いた。彼は、愛・地球博’05、Greenroom Festival’06、 TAICOCLUB’06などでイベント制作・運営を学び、True People's CELEBRATION’06やOrganic Grooveの後期コアスタッフとして活躍した人物だ。かつて音楽フェスに、立川談志師匠を出演させたことはもはや伝説!
それに、彼らが音楽家に注ぐ愛情はどうやら尋常じゃない。エルメートを撮影しながらかわいいとFacebookでつぶやいちゃうくらい愛でまくっているわけで。
今回のツアーで、エルメートのマネージメントチームは、FRUEの対応を世界最高峰だと評価したそうだし、その証拠にエルメート自身、彼らや日本ツアーの来場者に対する感謝の気持ちとして、一曲書いて著作権ごとプレゼントまでしている(聞いてみたい)。そんなことあるんだなあ……。
そんなFRUEチームは、今年も音楽フェスを開催予定。ただし、去年と同じく、その存在はまだまだ全然知られていないらしい。困ってるって言ってました!
今年のフェス開催が、大ピンチ。
「FESTIVAL de FRUE 2018」の開催に必要な資金は700万円。クラウドファンディングで資金を募っているが、期間は5月23日中まで。あと1週間。もうちょっと細かく言えば丸6日間ほど。
All-or-Nothing方式だから、2018年5月23日の23時59分までに目標金額へ到達しなければ、フェスの実現は見送りだ。
現在集まっている金額は、300万円未満。
残り6日間で、あと400万円以上必要だ。
うーん、正直しんどい!
サイトに書かれているFRUEのコメントも、切羽詰っている。
まさに、崖っぷち。5月24日までに、700万円集まらなければ、FESTIVAL de FRUEの今年の開催は見送ります。現在、会場となる「つま恋リゾート 彩の郷」は、仮で予約しています。資金さえ集まれば、開催決定!といつでもアナウンスできる状態です。
まだ半年以上先かつ出演者さえも発表していない状況で、早割りチケットを購入してくださいというのは、恐縮極まりないですが、お力添えをいただけたらありがたいです。
余談ですが、昨年のインパクトや評判もあってか、国内外のアーティストマネージメントから出演したいという連絡を、早くもいくつかもらっています。今年も、ご期待に応えられるラインナップは揃えられそうな気がしています。何卒、よろしくお願いします。──CAMPFIRE「夢のような野外フェス・FESTIVAL de FRUE 2018の開催に向けて」より
去年の開催について、中身は100点だったけど告知が……って言われちゃったんですよね〜、なんて山口さん。
エルメートの件しかり、アーティストへの愛情に満ち溢れた人たちだから、ハッキリとは言えないながらも、すでにいくつものアーティストから出演させてほしいという連絡を受けているらしい。
というか、そんな事情を察してか、海外からは「日本がダメならアメリカやヨーロッパで働きなよ!」なんてヘッドハンティングまでされている始末。だけど、それでもやっぱり日本でフェスをやりたいというのが、FRUEの考えなのだ。
ちなみに、過去にはこんなリストを公開しているぞ。
呼んでみたいアーティスト:
※思いつくままの妄想です。
Aca Seca Trio、Abdullah Ibrahim、Amon Tobin、Antibalas、Autechre、Brad Mehldau、Bruno Pernadas、Carioca Freitas、DRKWAV、Four Tet、Kamasi Washington、Medeski Martin & Wood、Mulatu Astatke、Orquestra Imperial、Tigran Hamasyan、Zakir Hussain..... などなど.
※あくまで希望であり候補の一部です。まだ温めておきたいアーティストもたくさんいます。今後のブッキングの方向性を感じていただければ幸いです。FRUEで招聘したことのないアーティストのみを入れています。──CAMPFIRE「夢のような野外フェス・FESTIVAL de FRUE 2018の開催に向けて」より
去年ジャジューカの音楽を体験した人や、エルメートのライブに行った人なら、その感覚がわかるかもしれない。エネルギーを持った未知の体験と出会える音楽イベントって、貴重だ。
ましてや過去にOrganic Grooveに行っていた人なら、上にリストされたアーティスト名にピンと来る人も多いだろう。
いくつか注意書きをしておくと、クラウドファンディングが目標金額に達しなかった場合、お金は出資者の手元にちゃんと残る(というか、目標達成後でないと決済されない)。
それに、出資のリターンは、グッズだけでなく、チケット、出店できる権利、企画会議への参加権とかなり直接的だ。出演者の選びも期待大だから、もっと多くの人に知ってもらいたいところ。開催さえ実現すれば、もしかしたらジャジューカだってもう一度呼べるかもしれない。とはいえ、あと6日間しかない事実は変わらない。奇跡は起きるか。一体どうなる!?