ディズニーで働いて知った、日本人にしかできない「気づかい」の習慣。
老舗料亭で生まれ育ち、大学卒業後は三越に就職し、のちにフロリダのディズニーで働くという長年の夢を叶えた上田比呂志さん。ディズニーで働く彼の視点から学べることは、「気づかい」はディズニーでも真似できない日本の最大の武器であるということ。
上田さんの著書『日本人にしかできない「気づかい」の習慣』にも日本の気づかいについて触れられています。知らず知らずのうちに身についているその精神。実は、日本特有の文化が関係していたのです。上田さんの言葉をなぞりながら、気づかいについて学びましょう。
余白を感じ、行間を読む
日本人は余白や行間、その裏に情緒といったものを感じ取るのが上手です。たとえば「涼」という感覚。風鈴の音、蚊取り線香のにおい、アイスキャンディーの味、子どもたちの水遊び、ひんやりと冷たい縁側、さまざまなシーンで「涼」というイメージを思い浮かべます。
これは、物事を五感で感じ取っているから。日本人のように五感すべてで感じられる民族は他にいません。日本という国のよさは、そうした言葉や目に見える現象を超えたところに風情や情緒、枠や余韻といったものを理解できるところでしょう。
相手を察し、虜ること。そこから生まれる礼儀や謙虚さ。そうしたものが日本文化には流れているのです。
古くからの日本の文化が
五感を磨く
五感を感じられる最たるものは、俳句かもしれません。松尾芭蕉の有名な句、「古池や 蛙飛びこむ 水の音」。この句は、世界の人々が驚き、感心するそうです。映像や、音や匂い、寂々とした空気感。短い言葉なのに、何となくイメージが湧いてきます。
俳句、茶道、花道、舞踊、座禅、和歌、浄瑠璃…。日本人は、そうした活動の中で余白を感じ取ったり、行間を読んだり、相手を虜る感性だったりを磨いてきたのではないでしょうか。
世界で通用する
日本人の「気づかい」の心
フロリダディズニーのジャパンパビリオンで、キャンディーアートをしている日本人女性。彼女は「世界中の子どもに幸せを配る」というコンセプトを持って飴を無料で配っています。しかし、飴をほしがる子どもの中には、内気で正直にほしいと言えない子どもがいることも。彼女はその微妙な空気を感じ取り、ほしいと言えない子にも飴を渡してあげるのです。
基本的にアメリカは自己主張する子が評価されますが、日本は違います。それは、仕草、雰囲気、その人からにじみ出てくる気持ちを感じ取る能力が備わっているから。ディズニーは日本流の気づかいを仕組みに組み入れようとしましたが、彼らでさえ吸収することはできませんでした。それほど、精神的な文化というのは仕組み化が難しく、真似できるものではないのです。