好かれたいのに嫌われる?気をつけたい「誤った気づかい」
仕事の現場でもプライベートでも、スムーズにことを運ぶためには、心地よい人間関係を築くことが大切です。相手に好かれるための、良かれと思った気づかいも、一歩まちがえると信用をなくしてしまう結果につながりかねません。
老舗料亭で生まれ育ち、大学卒業後は三越に就職し、のちにフロリダのディズニーで働くという長年の夢を叶えた上田比呂志さん。彼が世界中の人と仕事をして気づいたことは「日本にはディズニーにも超えられなかったものがある」ということ。それは日本人特有の「気づかい」でした。
上田さんの著書『日本人にしかできない「気づかい」の習慣』に書かれていることをなぞりながら、そのポイントを探っていきましょう。
「取り繕う気づかい」は
相手を失望させる
相手と仲良くなるためには、好かれようとしてはいけません。なぜなら、そういった気づかいは必ず相手に見破られるからです。こんな話があります。
茶人の千利休が友人の家に立ち寄った時のこと。主人は突然の訪問に驚きつつも利休を迎え入れました。主人の家は手入れが行き届き、実に利休好み。しかし、料理の一品にかまぼこが入っていたことで、利休は気づいてしまったのです。かまぼこは高級品。つまり、主人は周到な準備をしていたのです。それなのに、まるで利休が来ることを知らなかったようにふるまう主人。利休は失望し、その場を去ったと言われています。
取り繕う気づかいというのは、嘘をついているようなもの。外見が良ければ良いほど、そのメッキがはがれた時の失望感は大きいのです。
「本当の気づかい」は
大切な人をもてなす心
気づかいというのは、臨機応変なものです。自分の経験と結びつけたり、想像してあげることでアクションの幅は広がります。
例えば、私が三越の多摩センターという店舗に勤めていた時のこと。開店時間前に来店するお客様を外でお待たせするのは申し訳ないと思い、外気を遮断する扉と店内の間のスペースに椅子を用意し、ストーブを焚いてみたのです。些細なことでしたが、お客様は喜んでくださいました。
もちろん、気づかいをすることですべての人が喜ぶとは限りません。しかし、私はそれでもいいと思うのです。
媚びないことが
「気づかい」のスキルを高める
岡本太郎さんの『自分の中に毒を持て』にこんな言葉があります。
「友達に好かれようなどと思わず、友達から孤立してもいいと腹をきめて、自分をつらぬいていけば、ほんとうの意味でみんなに喜ばれる人間になれる」
今以上の自分を無理して見せようと取り繕ったり、気疲れする必要はありません。好かれようとしなくても、自分の気づかいを喜び、募ってくれる人は増えていくものです。それを知るだけでも気づかいのレベルは上がり、自然と身についていきます。