なぜ、ディズニーで働く人はあんなに生き生きしているのか?
ディズニーランドへ行ったとき「どうしてキャストの人は、あんなに生き生きと働いているのだろう? 自分もあんなふうに前向きになりたい…」と考えたことはありませんか?
これまで、ディズニーの人材トレーナーとして10万人のキャストを育てたという櫻井恵里子さん著『3日で変わるディズニー流の育て方』(サンクチュアリ出版)では、どんな現場であってもコツさえ掴めれば、リーダーも含めて会社のメンバーが「ディズニーのキャスト」に生まれ変わると伝えています。
成果を上げ、チームとしてより輝くためにも、ぜひこの記事で書かれている「魔法の育て方」を取り入れてみてください。
メンバー全員に
すべての商品を使ってもらう
仕事でスペシャリストを目指すなら、自分の領域だけを徹底追及すれば問題ないでしょう。しかし、サービス業を筆頭に、お客様と接する仕事ではそうはいきません。
例えばスーツ売り場には、男性用や女性用の仕入れ担当がいて、それぞれ担当商品について精通しているはず。しかし、訪れたお客さんにとっては、誰が何の担当であるかは関係ありません。せっかく質問したのに「私では分かりかねますので別の者を呼んできます」では困ってしまいます。
ディズニーでも同じことがあります。商品施設にいても、レストランのメニューやショーの内容について聞かれることは日常茶飯事。しかし、そこで「分かりません」と答えるキャストはまずいません。ほとんどのキャストが、ディズニーのパーク内のあらゆる情報を知っているからです。
なぜ、そのような徹底した教育が行われるのか…。答えは非常にシンプル。キャストたちは、すべてのパレードやショーを鑑賞し、あらゆる商品やメニューの試食をしているからです。こうした体験を通じて、情報が知識としてしっかり身につき、お客様に魅力を語ることができるようになるのです。
商品開発部にいたとき、開発者はみな、キャストの意見を大切にして、よく取り入れていました。試食した際の感想はもちろん、販売後もゲストの感想や質問など生きた情報を得て、商品開発に活かしていました。
こうした「現場からの意見」を販売方法や商品開発に生かすことは、ある意味マーケティングの基本ですが、それを実践できていないところが意外に多くあるように感じます。それでは、まさに宝の持ち腐れです。
リーダー自らが現場に足を運び、生きた情報を聞き出すと良いでしょう。忙しくてどうしても現場に出られなくても、日報などを使って現場の意見を吸い上げる仕組みを作ってください。その際のポイントは、メンバーたちに「消費者目線で何が求められるか知りたい」と明確に伝えておくことです。
武勇伝より
「失敗談」が心に届く
ディズニーの行動基準である「SCSE」(安全・礼儀・ショー・効率)の中で、もっとも優先順位が高い項目は「SAFETY=安全」です。
しかし、キャストたちもときには失敗を犯します。あるキャストが、プライベートで自動車に乗り、物損事故を起こしたことがありました。そのキャストはちょうど昇級試験を受けている最中であり、事故を起こして会社に迷惑をかけたと試験を辞退し、キャストを辞めることも考えていました。しかし、当時の管理職と面接した際
「もし会社が、今回の事故を理由にあなたを昇級させないと言うなら、私も会社を辞めます。リーダーは、キャストを守るために存在します。絶対にそんなことはさせないから、安心して仕事も昇級試験も受け続けてください」
と言ったのです。
それを聞いたキャストはリーダーの度量の大きさに心を打たれ、今でも「いつか、あのときのリーダーのような人間になりたい」と目標を持って一生懸命仕事をしています。
メンバーが失敗を犯したときこそ、リーダーの度量が問われます。その際に、前述のエピソードのような言動を取れるリーダーは、信頼を寄せられる存在となります。
実際にあなたのメンバーが失敗をしたら、どういう行動を取るべきでしょうか。まず、リスクを冒してでもメンバーを守る姿勢を見せることが大切です。その上で「君と同じくらいの頃、僕も失敗をした。しかし、こう乗り越えた」というように、失敗談を話すと良いでしょう。
まずは、メンバーの落ち込んだ心を軽くしてあげることが重要です。
「役」に応じた
ファッションを意識する
営業職や接客業についていると、服装についての意識が高まります。しかし彼ら彼女らの多くは、自分好みでそのような服装をしているのではなく、プライベートではまったく違った格好を好む人も多いはず。つまり「営業」や「店舗スタッフ」という役割を演じるため、それに見合った服装をしていると言えます。
ディズニーのキャストたちも同じで、役割に応じたコスチュームを着ています。お店やアトラクションのイメージに合わせたデザインは、オンステージをいっそう彩ります。人の第一印象は約5秒で決まりますから、ディズニーに限らず、いかにお客様に好印象を与えられるか、企業イメージをプラスに伝えられるかという面で、ファッションが担う役目は非常に大きいのです。
特に男性の中間管理職の人は、服装に関してこだわっていないという声をよく聞きますが、それは非常にもったいないことです。リーダーとしてのファッションを、役割に応じてうまく設定できれば、ビジネスにとって非常に有益なのです。
スイスの心理学者マックス・ルッシャーは「色が人に大きな影響を与える」と説き、それが今では定説となっています。「色と印象の関係」の一例を示しておきます。
赤:積極的、情熱的
青:誠実、自立
黄:元気、好奇心旺盛
白:真面目、正義感が強い
例えばプレゼンテーションの場において、青や白などを身につければ、真面目で誠実な印象を与えることができます。そこに赤を加えれば、情熱もアピールできるでしょう。このように「色を味方にする」ことは、大変重要なこと。どんな自分に見られたいか。身につける色を効果的に使い分けてみてはいかがでしょうか?