ヒマラヤの暮らしに日本人が学ぶこと

Sonam Wangchukさんは、地球温暖化に苦しんでいる、ヒマラヤ山脈に暮らす人々の生活を改善する道を切り拓いた。

逆境ともいえる状況をどうやって乗り越えたのか。彼の「思考プロセス」にフォーカスして、紹介してみたい。

人工氷河で緑を増やす

© The Rolex Awards for Enterprise

ヒマラヤ山脈といっても全体ではなく、インドのラダックと呼ばれる地域が舞台になる。

高山地帯のこの地では砂漠が広がっていて、ただでさえも農作物や家畜を育てるのが難しい。

大部分の生活用水は雪解け水でまかなわれているそう。だけど、地球温暖化によって氷雪の解けるスピードが早くなり、砂漠化が進んでいる。

こんな状況に立ち上がったのがSonamさん。結果的に「人工氷河」による安定した水の供給方法をひらめいた。

この誰もが思いつかなかったアイデアは意外なところで生まれていた。

大きな陰をつくる「橋」

ある日、Sonamさんが歩いているときに橋の下に氷を見つけたそう。「そこは一番暑いと考えられている場所」だったという。

氷が残っている理由は、橋によってできる陰が影響しているのは明らかだった。すぐに彼はどうやって大きな陰をつくるのかに的を絞った。

しかし、どうしても思いつかないアイデア。考える方向性を変えて、もう一度アプローチ。

「基本的に太陽が何かを温めるには『面』が必要だと気づきました。だから、氷の表面積をなるべく減らすようにしてみました」

そこで思いついたのが氷河だった。高低差を利用してホースから水を撒き散らし、冷たい空気に触れさせることで大きな氷の塊をつくる「Ice Stupas」の誕生だ。

人工氷河は徐々に解けていくので、5〜6月の時期まで水を無駄にせずに、農作物や家畜を育てるのに役立つ。しかも、エコ。

物事を多角的に見てみる

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Sonamさんは陰をつくれないと悟った瞬間でも、諦めずに解けない氷の理由を深掘りしていった。そして、「氷の表面積」が関わっているという本質を突きとめる。

ある1つのことを色々な視点から見れるスキルがあるからこそ、思いついたアイデアなのだろう。

Licensed material used with permission by The Rolex Awards for Enterprise
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