「あいまいな言葉」をうまく使って、コミュニケーションを円滑にする方法

坂東眞理子さんの著書『すべては書くことから始まる』では、日本人が日頃から使っている「あいまいな言葉・表現」について、彼女なりの解釈が書かれています。

「あいまいな言葉」は、間違って使ってしまうと思ってもみない方向に話が進んでしまうことがありますが、うまく使うことで大切な人との対話やビジネスがスムーズに進むのです。

人を慰めるときは
あいまいに

仕事で失敗した部下や同僚を慰めるときは、あいまいなぐらいがちょうど良いものです。

私たち日本人が周りの人を慰めるときによく使う「頑張ったのに残念だったね」という言葉。これは何について頑張ったと評価しているのか、何について残念だと思っているのか、明瞭ではありません。しかし、落ち込んでいる人にはこれで十分なのです。

お互いに伝えたいのは「慰めてやりたい」「慰めてくれてありがとう」という気持ちであり、具体的なアドバイスや情報ではありません。慰める側が論理的に失敗の分析をしたり、次はどうすべきか具体的にアドバイスしたりしても、言われている側はあまり嬉しくないものです。親切心で言ってくれているものだとわかっていても、少し煩わしく感じてしまいます。

褒められるときは具体的でポジティブな言葉が嬉しいですが、弱気になっているときは、あいまいな言葉がちょうど良いことを覚えておきましょう。

日本人があいまいな言葉を
使う理由とは?

あいまいな言葉から相手の気分を感じ取るのは、日本社会に生きる上では大切な教養とも言えます。反対に、様々なバックグラウンドの人々が集まるアメリカ社会では、相手が自分の気持ちを読み取ってくれることを期待していられません。だから誤解のないようにはっきりとものを言うことがルールになっています。

このように現在の世界では、あまり言葉を使わず心を通わせる文化と、いろいろな背景を持つ人が言葉を尽くして理解しようという文化が併存しています。

日常生活においては、常に白黒と言い立てるより、あいまいにしていた方が無用な対立や摩擦を減らし、人の意見をあたたかく包むことになります。しかし、ビジネスの場面では圧倒的に言葉を尽くすことが求められます。

かつての日本では、ビジネスの場においてもあいまいな言葉でのコミュニケーションが少なくありませんでしたが、現在は企業内のコミュニケーションでもイエス・ノーをはっきりさせ、5W1Hを明確にする方向に移行しつつあります。しかし、明確な言葉だけでは仕事を円滑に進めることはできないのです。

あいまいさを
武器にした仕事術

組織の経営や運営では、クリアな言葉よりあいまいな言葉や態度の方が役に立つことがあります。

トップダウン型の強力なリーダーシップで引っ張る組織よりも、上の人が目標を示して具体的なやり方はそれぞれに工夫させ、みんなの気分を盛り立てるボトムアップ型の組織の方が、部下の仕事の質が高くなるといわれています。これは、命令されて動くより、自分から行ったほうが良い働き方ができるから。

責任逃れをするようなあいまいさはトップとして失格ですが、ポジションごとに明確に権限と責任の範囲を定め、各部署の間に明瞭な線引きをするようなやり方は、常に効率が上がるとは限りません。部下が上司に言われたことだけをやるよりも、上司の示す目標を達成するために自分で考えて行動する方が全体のレベルが高くなるのは、私も体験から感じています。

ただし、上司が明確に仕事を指示することも必要なので、はっきりさせる部分ははっきりさせ、あいまいにするところはする。そのバランスが重要なのです。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。